ドイツというと、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギー大国。そのドイツのバイエルン州にあるIrsching火力発電所が、近い将来閉鎖される方向になっている。
理由は、ドイツ政府が進めている"エネルギー政策転換"により、自然エネルギー(再生可能エネルギー)で発電した電気が大量に電力市場に取引されるようになったことで、電力市況が悪化しているからだ。
この話は、今月6日の PANTERS News でも、次のように報じられている。
・・・The Irsching power plant is an example of the consequences of the energy revolution. Since wind and solar power are promoted, the operation of many gas and coal power plants no longer worthwhile.
要するに、Irsching発電所の件はエネルギー政策転換による典型例で、風力や太陽光が導入されてきたことで、天然ガスや石炭の価値はなくなってきるとの由。
再エネの普及増による石炭や天然ガスなどの火力発電の採算が悪化することは、以前からわかっていた。しかし、ドイツ政府は、エネルギー政策転換に向けて邁進している。この決意と熱意にはすごいものがある。
ドイツでは、再エネ普及増で火力発電の撤退が相次ぐ見通しであり、既に決まっている2022年の"脱原子力"だけでなく、それと相前後して"脱火力"も進むだろう。
だがそうなると、不安定な再エネ発電をバックアップする電源としての火力がなくなるという皮肉な結果になる。火力は原子力と並んで、24時間フル稼働が可能な安定電源だが、その役割も果たせなくなる。
ドイツは再エネ普及増によって、再エネ普及増とは元々関係ないが別の理由で意図されている脱原子力だけでなく、元々望んでもいないし意図もしていない脱火力にまで突入することが濃厚だ。
日本では、ドイツを大いに参考として再エネ普及策である"再エネ電気の固定価格買取制度"を2012年夏に導入した。日本は今、再エネ普及増に向けて進んでいるが、それによって近い将来、どのような事態になるだろうか?
日本では昨秋、太陽光発電設備を過剰に導入した結果、送電容量が不足する事態に陥っている。いわば、『太陽光バブル』が発生してしまった。
今月中旬、私はドイツに訪問し、連邦政府関係者らとも対談した。その際に一致したのは、「再エネ政策面でのドイツの失敗と日本の失敗は、太陽光発電の過剰な導入を許した点で共通している」ということだった。
日本がドイツを今まで通り"模倣"していくとなると、太陽光バブルの発生と崩壊だけでなく、意図せざる脱火力という悪果まで共通するだろう。日本が教訓にすべきは、ドイツが日本より先んじている失敗の轍を踏まないよう、再エネ政策を転換することに他ならない。
バブルを生み出すような制度は、廃止すべきだ。それが今最もやるべき日本の『自然エネルギー政策転換』である。