世界幸福度報告書2016-日本は本当に幸せな国? 国際幸福デー(3月20日)に寄せて

毎年3月20日は、国連によって定められた「国際幸福デー」として、「幸福の追求」を目指した様々な働きかけが世界各地で行われる。

毎年3月20日は、国連によって定められた「国際幸福デー」(International Day of Happiness)として、「幸福の追求」を目指した様々な働きかけが世界各地で行われる。

国連は今月16日、2016年度版の「世界幸福度報告書」(2016 World Happiness Report)を発表、世界で「最も幸せな国」にはデンマークが輝き、続いて2位には僅差でスイスがランクイン、以下アイスランド、ノルウェー、フィンランドと、上位の多くを北欧諸国が占めた。今年で6年目を迎える内戦が続くシリアは157ヵ国中156位、最下位にはアフリカのブルンジが入った。私たちが暮らす日本は53位にランクイン、昨年の46位から順位を7つ下げた。

幸せな国ランキング1位から53位(日本)までを表したグラフ。世界幸福報告書2016より。

本報告書によれば、一人当たりの国内総生産(GDP)・健康寿命・社会的支援(困ったときに頼れる人の存在)・信用性(政治やビジネスにおける汚職のなさ)・人生における選択の自由・寛容性の6要素で、各国間・各地域間の違いの約4分の3を説明できるというが、貨幣経済が主流を占める現代世界においては、経済的な指標はこの「各国別幸福度」にいくらか影響を及ぼしているだろう。事実、幸福度ランキングの最下位グループは中東やアフリカ諸国によって占められた。

以下、本報告書で特筆すべき二点を書く。

不平等とwell-being

4刊目を迎えた同報告書(2012年に初刊発行)では、不平等(inequality)に大きく焦点が当てられ、とりわけ不平等がwell-being*にもたらす影響が考察された。

報告書は、「より不平等が少ない国に暮らす人々の方が、より幸せであると感じる」ということを明らかにしている。また、ほとんどの国と地域内、そして世界全体における幸福度の不平等は更なる広がりを見せていることを明らかにしており、幸福度の不平等が減少したのは、わずか10%の国々にとどまった。

*well-being...健康的に良い状態、幸福な状態、安楽な状態などを意味する言葉。

世界金融危機前後の比較

報告書では、2007年から始まったとされる金融危機前の2005年~2007年と、その後の2013年~2015年を比較し、45の国が幸福度において大きく減少を見せたことが明らかになっている。0~10の数値で表される幸福度の減少値は、オーストリアの-0.003ポイントから、財政危機や欧州移民危機で苦しんだギリシャの-1.294ポイントまで幅広く見られる。最も大きく上昇したのは中央アメリカ中部に位置するニカラグアの1.285ポイント、続いて西アフリカに位置するシエラレオネの1.028ポイント。日本は-0.446ポイントと、126か国中107位となった。

2005年~2007年と、2013年~2015年を比較した幸福度の変遷値。世界幸福報告書2016より。

来月4月に初来日する「世界で最も貧しい大統領」と言われるウルグアイ前大統領ホセ・ムヒカ氏が日本人に向けたメッセージでも「日本国民は幸せなのか?」と問うている。

「わたしは日本人に問いたい。日本国民は幸せなのか? 人びとは人として達成感を得ているのだろうか? 人生は短いし、スーパーで多くのものを購入することはできるけど、人生における時間は買えないのだ。今回の日本への旅は観光旅行ではないし、すべての疑問に対する手がかりや答えを得ようとしているわけでもない。そうではなくて、技術的に非常に発展した日本との相互理解を深めるものにしたい。日本社会に、ウルグアイを待ち受けている事柄の、何らかのサインがあるように思うから。日本の人びとがどんなことを感じているかを、知りたいと思うんだ。」(引用元:世界でいちばん貧しい大統領が問う。「日本国民は幸せなのか? 」

3月20日の国際幸福デーをきっかけに、一度「幸せとは何なのか?」「自分は幸せなのか?」「どうすれば幸せになれるのか?」と自問してみてもいいかもしれない。

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