『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』―スター・ウォーズは"戦略的なお祭り"である/宿輪純一のシネマ経済学(90)

いよいよ『スター・ウォーズ』(エピソード7)が10年ぶりに帰ってくる。
US actor Mark Hamill and his wife Marilou York attend the opening of the European Premiere of 'Star Wars: The Force Awakens' in central London on December 16, 2015. Ever since 1977, when 'Star Wars' introduced the world to The Force, Jedi knights, Darth Vader, Wookiees and clever droids R2-D2 and C3PO, the sci-fi saga has built a devoted global fan base that spans the generations. AFP PHOTO / LEON NEAL / AFP / LEON NEAL (Photo credit should read LEON NEAL/AFP/Getty Images)
US actor Mark Hamill and his wife Marilou York attend the opening of the European Premiere of 'Star Wars: The Force Awakens' in central London on December 16, 2015. Ever since 1977, when 'Star Wars' introduced the world to The Force, Jedi knights, Darth Vader, Wookiees and clever droids R2-D2 and C3PO, the sci-fi saga has built a devoted global fan base that spans the generations. AFP PHOTO / LEON NEAL / AFP / LEON NEAL (Photo credit should read LEON NEAL/AFP/Getty Images)
LEON NEAL via Getty Images

( STAR WARS:THE FORCE AWAKENS / 2015)

いよいよ『スター・ウォーズ』(エピソード7)が10年ぶりに帰ってくる。12月18日に一斉公開される。1作目が77年(日本公開は78年)であって、なんと37年前である。筆者が中学2年生の時であった。「これがアメリカ映画だよなー」と思い、(マニアほどではないが)それ以来のファンである。ちなみに当初の邦題案は、まさに直訳の「宇宙大戦争」であった。

今回、また新たな3部作がスタートした。これまでは公開が3年おきだったのが、2年おきとなった。今後の予定を聞いてみると、2017年に『エピソード8』(米国5月26日/日本7月公開)、そして2019年に『エピソード9』が公開される。その間を縫って、2016年に派生作品『ローグ・ワン(原題)』(米国12月16日/日本12月公開)、2018年にもまた派生作品を公開するなど、ガッチリ予定が組まれている。

スペースオペラ(宇宙の冒険物語)にはマニアが多く、『スター・トレック』のマニアは「トレッキー」と呼ばれる。(ちなみに最近の『スター・トレック』のJ・J・エイブラムス監督が本作の監督も務める)スター・ウォーズにはマニアが特に多く熱狂的で知られる。

それは単に「宇宙」ということだけではなく、そのベースとなるぶれない考え方にある。具体的には、基本的に誰もが好きな「騎士道・冒険」、最近、失われつつある「家族・愛情・成長」、悪と正がはっきり分かれている「スッキリした分かり易さ」、最近のCG技術で引き立つ宇宙船の「斬新なデザインや動き」。

キャラクターになり易い「象徴的な登場人物」、子供も大人も誰が見ても大丈夫な「健全性」、アメリカ映画の特徴である(途中では大変なことになる)が「正義は必ず勝つ結末(主人公は大丈夫)」、そして、これが特に大事なのであるが「ファンを大切にするという姿勢」などではないかと考えている。皆が楽しめる現代の「おとぎ話」なのである。

そして、ファンを裏切らず、信用していて良いので、皆で盛り上がれる「お祭り」となるのである。筆者は企業戦略も教えてきたが、まさに良くできた「経営戦略」なのである。

『スター・ウォーズ』には"日本"が多数取り入れてられている。それもそのはず、創設したジョージ・ルーカスは、黒澤明の大ファンというか、マニアだった。「ジェダイ」という言葉も「時代劇」の時代から来たといわれている。本来は黒澤明の作品の宇宙におけるリメイクをしようとしたが、例えば『隠し砦の3悪人』などの版権が高すぎて買えなかった。

そのため、『隠し砦の三悪人』の登場人物と似たキャラクターを取り入れている。ストーリーも仕方なく自分で書いた。スペースオペラで原作を自ら作っているのは『スター・ウォーズ』ぐらいである。戦闘シーンも黒澤映画と極めて似ているのはもちろんだが、刀を両手で持つのは日本だけ。ヘルメットは伊達政宗の兜をベースとしている。

ルークが来ているのは柔道着。オビワンのオビとは、黒帯のオビ・・・上げだすとキリがない。そして、当初の作品ではダーズベーダー役に、三船敏郎に強烈なオファーを出していた。

さて、本作品は一般向けの試写会もなく、ネタバレは厳禁であり、あまり書けないが、オリジナル3部作の最終章『エピソード6/ジェダイの帰還』から約30年後が舞台となっている。「フォースの覚醒(THE FORCE AWAKENS)」という題名からも分かるように、"またも"フォースに目覚めていくのである。覚醒とは「覚醒剤」のイメージが強すぎるのが少し残念であるが、意味は、目が覚める、不活動の神経などが活動を開始する、迷いから覚め、過ちに気付く、といったものである。

いつか再び逢える家族を待ち続けながら、砂漠の惑星ジャクーで暮らす孤独な女性レイ(主人公)の運命は、ある出会いによって一変する。またエピソード7では帝国軍は「ザ・ファースト・オーダー(The First Order)」、反乱軍は「レジスタンス(Resistance)」と呼称される。結局、ダースベーダーを軸とした血縁の問題なのである。

しかも時代を表し主人公も女性で、他にも重要なキャラクターは女性である。「フォースを巡る新しい" 家族の愛と喪失の物語 "」なのである。ストーリーの軸となるのは新しい本体が転がるロボットBB8である。C3POやR2D2や、Xウィングファイターやミレミアム・ファルコン号などももちろん登場する。

 この『スター・ウォーズ』を生み出し、製作・監督してきたジョージ・ルーカスも71歳(1944年生)となった。最近、ウォルト・ディズニーが彼のプロダクションであるルーカスフィルム『スター・ウォーズ』を40.5億ドルで買収した。(ガッチリした公開予定もディズニーらしい)

ウォルト・ディズニーはCG製作スタジオのピクサー、アメリカンコミックス(ヒーロー)のマーベル、そしてルーカスを買収することになり、映画業界における集中(独占)状態を訝(いぶか)しがる向きもあった。

『スター・ウォーズ』は出演する俳優はトップクラスではないが、特にCG等に莫大なおカネが掛る。おカネの問題だけではないが、その『スター・ウォーズ』を継続して製作することは大変なことである。そういう意味で、継続的にディズニーが製作してくれることは、映画ファンにとっては、実は有難いことなのである。お陰で、また今後も『スター・ウォーズ』を見ることができる。

出演はジョン・ボイエガやデイジー・リドリー、オスカー・アイザック、アダム・ドライバー、それに加え、旧シリーズのマーク・ハミルやキャリー・フィッシャー、そしてハリソン・フォードなどのいわゆるレジェンドの出演にも涙である。

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