「政府の介入許した」 韓国公共放送KBS職員が社長の解任求めストライキ拡大へ

8bitNewsでは、26日午後、混乱が続くソウル市内のKBS本社でストライキを率いる全国言論労働組合KBS本部のクォン・オフン委員長に単独インタビュー。全内容を公開する。

韓国の公共放送KBSで「報道への政府の介入を許した」として、報道局幹部や記者らがキル・ファニョン社長の解任を求めストライキを実施。抗議の声はさらに広がり、制作部門のプロデューサーやディレクター達がストライキの準備に入った。

KBSの職員でつくる二つの労働組合は「政権批判を自制するようにという大統領府からの要請をキル社長が受け入れ現場に指示したことは公共放送の役割に反する」として、社長の解任と朴大統領の謝罪を求め抗議を続けている。

こうした中、今月26日に開かれたKBS理事会では11人の理事のうち10人が出席して、社長の解任提請案の上程を全会一致で採択。28日の定期理事会で正式に議決される見通しだ。

一方、キル社長は政府からの介入はなかったと労働組合側の主張を真っ向から否定しており、ストライキを続ける職員に対する処分もあり得ると警告している。

今回のストライキにより既にニュース番組の放送時間が短縮されるなど現場の実務に影響が出ているが制作部門へのストライキ拡大によりさらに混乱が広がりそうだ。

8bitNewsでは、26日午後、混乱が続くソウル市内のKBS本社でストライキを率いる全国言論労働組合KBS本部のクォン・オフン委員長に単独インタビュー。全内容を公開する。※8bitNews 

■ 全国言論労働組合KBS本部のクォン・オフン委員長インタビュー

 ストライキの理由を教えてください。

委員長 KBSは本来、受信料で運営されている公営放送局で、NHKと似ている放送局です。KBSのニュースに責任を持っている報道局長が会見で社長の行為を告発しました。大統領府からニュースに関する圧力がかかっていたというものです。その過程で、KBSの社長が報道に干渉したという情報がありました。公共放送の本来の役割を取り戻すために、まず社長職から退いて、さらに朴大統領が謝罪しなくてはいけないと思っています。

 どんな圧力があったのでしょうか。

委員長 報道局長の証言によりますと、この1年の5ヶ月のあいだ、大統領を批判する報道は一件も出なかったのです。最近の事故沈没船の報道に関しても、大統領府から会場警察隊への批判を自制するよう要請をうけて、社長が直接報道局に指示を出したといいます。

 なぜ報道局は屈したのでしょうか。

委員長 KBSの社長は人事権を持っています。任命もできますし、剥奪できる権利を持っています。社長は自分で意見の提示だといっていますが、報道局長が受け取った証言では「指示」であったと。実際、船の報道に関しては社長から批判の報道を自制するようにという指示が5月5日にありました。批判報道を社長自身が事前に知った場合に抹消したりしたといいます。

 日本でも公共放送への政府の意向の有無が問題になっています。

委員長 従軍慰安婦に関するドキュメンタリー番組についてかつてNHKに圧力がかかったのは知っています。

 なぜ社長は政府の意向を尊重しなくてはいけないのでしょうか。

委員長 KBSの社長を大統領が任命するという今の構造が根本の問題です。KBSの社長は大統領の顔色を常にうかがっており、実際の人事を決める過程でも影響を与えています。社長の任命にとどまらず、政府の意向は社長が任命した報道局長や部長などに連鎖していくので、そうした連鎖を断ち切らなくてはいけないのです。構造を変える必要があります。公共放送の基本的な使命である真実の報道、国民の知る権利の保障が重要です。これらをどうやって守っていくのかというがメディア人の役割だと思っています。人々が信じられる放送メディアをつくるという目標をもってこのストを進めています。

 実際の参加者と影響はいかがでしょう。

委員長 KBSには700人あまりの記者がいますが、事実上のストライキに突入して7日間が経過しました。1時間のニュースを20分に短縮しています。通常の放送体制ではありません。制作プロデューサー達も制作拒否を準備していますので、制作部門も参加したら多くの放送で支障が生じると思います。

 権力に対して抗議をするのは勇気がいりますよね。

委員長 KBSでは1990年4月にもこうした、政権に対立して公共放送の独立性を求めるストがありました。放送民主化闘争です。2000年にも長期にわたってストもありました。不利益、解雇や転職もありましたが、KBSの構成員たちは使命を守るために恐れもなく闘ってきました。

 国民に伝えたいことは何でしょう。

委員長 KBSという公共放送は国民の財産です。権力者の所有物ではなく国民の財産です。国民の財産を守るために闘っています。闘いの正当性が保証されていますので恐れはないです。今の時期は朴政権の初期にあたります。韓国の政治状況は大統領の配下で絶対的な権力をもっていると見えます。大統領の意向は絶対的な権力です。ですから今までも大統領に対する批判を自制する風潮はありましたし、一方で数多くの言論人達がそれを克服しようと努力しております。

朴大統領が一番批判を受けているのは国民との意思疎通ができていないことです。言論を統制することで国民の知る権利を縮小させ、政府の代弁をさせることで結果として国民との対話ができていないのです。国民との意思疎通を緊密にしなくてはいけません。私たちの闘争ではなく、朴大統領の残りの在任期間で国民との意思疎通ができるようになるための闘争だと思っています。

インタビュー/撮影 堀 潤 8bitNews

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