世界の音楽業界を代表する団体、IFPI(国際レコード産業連盟)が2013年のデジタル音楽の動向をまとめたレポート「DIGITAL MUSIC REPORT」を発表しました。18日にロンドンで発表された「DIGITAL MUSIC REPORT」では、各国の音楽業界の売上、サービス別でのデジタル音楽の売上、音楽ストリーミングなど新興サービスのトレンドをまとめています。
レポートによれば、2013年の世界の音楽産業の売上は前年156億ドルから3.9%減少し、150億ドル(約1兆5240億円)でした。
減少の大きな原因は、日本市場の売上が16.7%減少したことが大きく響いたとレポートは指摘しています。世界2位の音楽市場である日本は、世界の音楽売上の約1/5以上の市場規模を占めています。IFPIによれば、日本の2013年の売上は30億1000万ドル(約3057億円)で、前年の36億1000万ドル(約3667億円)からダウン。減少の要因は、CDなどフィジカル音楽の売上が低迷、そしてモバイル向けダウンロードや着うたなどレガシー系モバイル音楽サービスの低迷が挙げられます。また、レポートでは音楽ストリーミングおよびサブスクリプション型音楽サービスなどが日本市場では未だに確立されていないことも指摘しています。
日本以外の主要な音楽大国ではプラス売上を記録しています。日本を除いた場合、世界の音楽売上は0.1%の微減であることがレポートでは示しています。
アメリカでの音楽売上は前年比48億7000万ドル(約4946億円)から0.5%増加し、48億9000万ドル(約4969億円)。ヨーロッパの音楽産業では売上が前年比0.6%増加となる53億8000万ドル(約5464億円)で12年ぶりのプラス成長を記録、主要6ヵ国である英国、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、スウェーデンすべての国が売上増加を達成しました。
ブラジルやアルゼンチンなど新興デジタル音楽市場を含む中南米の音楽産業では、売上が前年の5億1400万ドル(約522億円)から1.4%増加し、5億2100万ドル(約529億円)でした。
サブスクリプション型音楽サービスの継続的な成長
SpotifyやDeezerなど全世界での定額制(サブスクリプション型)を含む音楽ストリーミングサービスの売上は、前年比51.3%増加し、初めて10億ドルを突破しました。
音楽ストリーミングサービスの売上はデジタル音楽売上で27%を占めるまで急成長しています(2011年時は14%)。
定額制音楽サービスおよびYouTubeなどの広告型音楽サービスの売上は前年56億3000万ドル(約5717億円)から4.3%増加し、58億7000万ドル(約5960億円)へ増加しました。
IFPIでは定額制音楽サービスの有料会員数は世界中で2800万人以上と推測、これは2010年の800万人や2012年の2000万人と比較しても著しい速度で成長しています。
現在世界中にはメジャーレーベルを含むレコード会社とライセンス契約を締結している音楽サービスが450ほど存在し、その中には、2013年に新たに38ヶ国で運営を開始したSpotifyやDeezer、Google Play、さらにアメリカのMuveやアジア圏で指示を集めているKKBOXなど地域ごとにユーザーを獲得しているサービスが含まれます。
(上のチャートは最近6カ月における主要音楽市場での定額制音楽サービスとデジタルダウンロードの利用の割合)
デジタルダウンロードとフィジカルの売上
2013年もデジタルダウンロードはデジタル音楽売上で重要な収入源であり、売上総額の約2/3となる67%を占めました。IFPIの調べによれば、デジタルダウンロードは香港、フィリピン、スロバキア、南アフリカなど新興市場や中規模市場でのデジタル音楽の成長を推進する役割を担っています。
しかし世界的にデジタルダウンロードの売上額は2.1%減少しています。
CDなどフィジカルフォーマットの音楽売上は2012年の87億5000万ドル(約8887億円)から2013年は11.7%の二桁減少し77億3000万ドル(約7850億円)となりましたが、以前多くの市場において最大の収益源となっています。2013年はフィジカルからの売上が世界の音楽売上の51.4%を占めました(2012年は56%を占める)。
フランスではフィジカルの売上が0.8%と微増しました。
またドイツ、イタリア、英国、米国ではフィジカルの売上減少の割合が減速しました。
世界的に人気が復活しているアナログレコード売上は、全体的には小規模ですが、重要な音楽市場ではここ数年に渡り継続的な成長を示しています。2013年、米国では32%、英国では101%の成長をみせました。
IFPIのロンドンオフィスでの発表会イベントに登壇した、ユニバーサルミュージック・グループ・インターナショナルの会長兼CEO、マックス・ホール(Max Hole)は、ポジティブなこととしては、音楽ストリーミングと定額制音楽サービスの世界的な成長、フィジカル売上の復元力、そしてBeats MusicやiTunes Radio、グーグルの音楽ストリーミングサービスなど音楽産業に新たなビジネスをもたらしてくれる新しいパートナー企業の登場を挙げています。
一方でネガティブなこととして、
悪いニュースの大部分は日本の音楽産業だ。
と述べ、フィジカルが中心のビジネスによる音楽保護主義とデジタル音楽に対する足並みを揃えられない点を、日本市場の急激な低迷の要因に挙げています。
さらにコールは「(日本にとって)最悪な年で良かったことと言えるのは、これから変化が始まるということだ。大手企業は業界がより思い切ったアプローチに挑戦できるように先導していく役割を担っていくだろう」とコメントし、今後18カ月の間に日本市場が音楽ストリーミングサービスと定額制サービスを受け入れ、再び成長し始めることに期待していると付け加えました。
アルバム売上トップ3
最後に。IFPIは2013年に世界で最も売れたアーティストをシングル、アルバム別に発表しました。
ワン・ダイレクションの「Midnight Memories」が売上総数400万ユニットでアルバム売上のトップに輝きました。2位はエミネムの「The Marshall Mathers LP2」が380万ユニット、ジャスティン・ティンバーレイクの「The 20/20 Experience」が360万ユニットで第3位でした。
シングル売上トップ3
ロビン・シックの「Blurred Lines」(ブラード・ラインズ~今夜はヘイ・ヘイ・ヘイ♪)が、2013年世界最高の売上を記録したシングルとなりました。売上総数は1480万ユニット(フィジカル、ダウンロードを含む)。
マックルモア&ライアン・ルイスの「Thrift Shop」が2位で1340万ユニット。アヴィーチーの「Wake Me Up」が3位で1110万ユニットでした。
ソース
(2014年3月20日「All Digital Music」より転載)