オバマ大統領の東アジア4ヶ国歴訪が終了し、日本は何処に進むのか?

日本に取っての喫緊課題とは今回のオバマ大統領の東アジア4ヶ国歴訪の結果から、少なくとも日本を取り囲むアジア・太平洋地域の状況、更には世界情勢を読み取り、その未来を予測し、少なくとも日本が破綻する事のない様に手立てを講じる事に他ならない。

日本を皮切りとしたオバマ大統領の東アジア4ヶ国歴訪の旅が終了した。日本ではオバマ大統領が日本到着時に安倍首相と会食した銀座の高級寿司屋が随分とマスコミに取り上げられた。しかしながら、こんなものは末子末葉に過ぎない。

いうまでもない事であるが、日本に取っての喫緊課題とは今回のオバマ大統領の東アジア4ヶ国歴訪の結果から、少なくとも日本を取り囲むアジア・太平洋地域の状況、更には世界情勢を読み取り、その未来を予測し、少なくとも日本が破綻する事のない様に手立てを講じる事に他ならない。ついては、今回は特記事項を列記した上で若干の考察を加えてみたい。

■ Gゼロ時代のアメリカ外交

今回のオバマ大統領の東アジア歴訪で強く感じたのは行く先々で随分と気を使っている事である。最初の訪問地である日本ではアメリカ大統領として初めて尖閣諸島が米国の防衛義務を定める日米安全保障条約の適用の対象になると明言した

We stand together in calling for disputes in the region, including maritime issues, to be resolved peacefully through dialogue. We share a commitment to fundamental principles such as freedom of navigation and respect for international law. And let me reiterate that our treaty commitment to Japan's security is absolute, and Article 5 covers all territories under Japan's administration, including the Senkaku Islands.

その一方で中国に対しても随分と配慮している。まるでテレビカメラを通して習近平に説明を試みるかの様に、下記の通りアメリカとして中国との武力衝突を望むものではない事を丁寧に説明している。

In our discussions, I emphasized with Prime Minister Abe the importance of resolving this issue peacefully -- not escalating the situation, keeping the rhetoric low, not taking provocative actions, and trying to determine how both Japan and China can work cooperatively together. And I want to make that larger point. We have strong relations with China. They are a critical country not just to the region, but to the world.

Obviously, with a huge population, a growing economy, we want to continue to encourage the peaceful rise of China. I think there's enormous opportunities for trade, development, working on common issues like climate change with China. But what we've also emphasized -- and I will continue to emphasize throughout this trip -- is that all of us have responsibilities to help maintain basic rules of the road and an international order so that large countries, small countries, all have to abide by what is considered just and fair, and that we are resolving disputes in peaceful fashion.

And this is a message that I've delivered directly to the Chinese and it's one that I think is entirely consistent with China being successful. I think the alternative is a situation in which large countries, like the United States or China or Russia or other countries, feel as if whenever they think it's expedient they can take actions that disadvantage smaller countries, and that's not the kind of world that is going to be stable and prosperous and secure over the long term.

So we are invested in an international order, and that applies to a whole range of issues, including maritime issues. My hope is, is that China will continue to engage with us and other countries in the region where we do not take a position on the particular sovereignty of this piece of land or this rock but we do take a position in making sure that all countries are following basic international procedures in resolving these disputes. And if that happens, then I think not only will China be successful, but I think there's a great potential for Chinese and Japanese cooperation, Chinese and Vietnamese cooperation, cooperation with the Philippines and China -- all of which will benefit the peoples of the region.

米韓首脳会議で出すべきテーマとは思えないが、朴大統領が切り出した韓国慰安婦問題に配慮する一方、日本にも気を使い過去よりも未来志向で日韓関係を構築すべきとやんわりと諭している。その後訪問したマレーシア、フィリッピンも同じ様なものだ。訪問する国々に対し最大限の配慮を行うと共に中国にも細やかに気を使っている。

これに対し、オバマ大統領を八方美人と批判するのは妥当ではない。Gゼロ時代に日本はどうやって生き残れば良いのか?で説明した様に日本も含め世界はGゼロ時代の入り口に立っている。従って、オバマ大統領はアメリカ一国覇権時代からGゼロ時代への同盟国、友好国のソフトランディングを出来る範囲で懸命に実行、支援している訳である。各国はアメリカの支援によりGゼロ時代へのソフトランディングを果たすと共に、その後の自立を目指すべきなのである。

■ ひたすら拡大する中国の国防予算

東アジアの不安定要因は何といってもひたすら拡大する中国の国防予算の現実である。本来PM2.5に象徴される重篤な大気汚染や水質汚染対策にもっと金を回すべきと思うが、一向に本腰を入れて取り組む気配が見えない。近い将来夥しい数の中国人が呼吸疾患で命を落とす事になると思う。実に痛ましい限りである。一方、歯止めが掛らず膨張を続けているのが中国の軍事費である。 コノミスト誌3月15-21日号が指摘する様に尖閣を含む東シナ海、ベトナム・フィリッピンとの領土問題が重篤化する南シナ海での領土的野心を達成するためのものである事は容易に推察出来る。  

すなわち、全人代の初日に中国は、今年度の国防予算を昨年の12.2%増の1320億ドルと発表したが、これは公式の数字で、実際はこれをはるかに上回るかもしれない。周辺諸国は、中国の国防予算のあくなき拡大は、「近海」での領有権争いで自らの意志を押し通す決意と不可分であると見ている。

■ 中国の強大な軍事力と対峙せざるを得ない日本

地図を見れば一目瞭然だが、海軍力を急速に増強し太平洋への進出を目論む中国に取って、九州から台湾へと続く日本の島々は目障りな存在であり、これに対し領土的野心を持つ事は容易に理解出来る。これに対し、日本には自衛隊を増強し防衛力を高め対抗するしか手段がない。今回は最新版の防衛白書を参照する。

中国の兵力(兵士数)160万人に対し日本は14万人と、何と十分の一以下である。中国や韓国が安倍首相や安倍政権の右傾化を批判し、この尻馬に乗り国内メディアも同様の無責任な批判を繰り返しているが、先ずは北東アジアでの各国の兵力の実態を理解すべきであろう。

■ 日本は何処に向かうべきなのか?

多様な解釈はあるかも知れないが、今回オバマ大統領の口から尖閣は日米安全保障の対象地域と表明された事は大きかった。更に、訪問の最終地フィリッピンへのアメリカ軍の再配備が明言された。これにより中国海軍に対する有効な抑止力になる事は確実である。何より、従来の言葉だけのアジア・太平洋地域への「リバランス」がフィリッピンへのアメリカ軍の再配置で一挙に現実のものとなった。「アジア回帰」を空疎なスローガンにせずに済み本当に良かったと思う。

こういった好材料があるにせよ、日本が肝に銘じなければならないのは所詮本格的なGゼロ時代到来までの時間稼ぎに過ぎないという事である。尖閣を含め日本は自国の防衛をアメリカに丸投げすべきではない。自衛隊の増強により防衛力を強化する一方、集団的自衛権行使認可をさっさと決定し、日米防衛ガイドライン見直しにより自衛隊の有効活用の最大化を図るべきである。日中の決定的な兵力差を見れば当然であろう。

今一つ大事な事は、従来から何度も指摘しているが日本さえ平和で豊かであれば良いという「一国平和主義」をから、世界の平和と安定に貢献する真の平和国家に転換する事である。仮にそういった好ましい評価を日本が受けるに至り、その日本の固有領土を侵略する国があるならば全世界からの非難に晒され孤立する事になる。

最後は上に述べた防衛力の増強と世界貢献を可能とする財源の確保である。具体的には法人税、所得税、消費税などで増税を図るしかない。成長戦略の立案と確かな実行が必要という結論となる。国内原発を停止させ、本来不要な化石燃料代金として国富が年間何兆円も海外に流出している事態も原発を再稼働する事で改善すべきである。更には、日本は従来の貿易立国から投資立国に変貌せざるを得ない。従って、雇用の流動化を加速させ人材の再配分を急ぐべきであろう。社会保障の見直しも必至となるだろう。これらについては過去に詳細を説明しており下記を参照願いたい。

安全保障と外交に関し青写真が出来たのであれば、それに併せ国内改革の断行に着手せねばならないという事である。雇用の流動化は正社員を中心に現役世代に、社会保障の見直しは主として高齢者に痛みを強いる事になるだろう。何れにしても安倍政権に取ってはこれからが真贋が問われる正念場という事である。

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