サラリーマンは家を買うべきではない

「転ばぬ先の杖」という諺がある。住宅購入を考えているサラリーマンは、この記事を読み、是非思い留まって貰いたいものである。
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日経新聞が伝えるところでは、「フラット35」金利優遇延長へ 住宅市場下支え狙う との話である。些か感情的になって恐縮だが、この日経記事に接し随分と後味の悪い思いをしたのは事実である。無理な住宅購入により、多くの一般的サラリーマン家庭が「破産」、「一家離散」といった悲惨な家族の末路を迎えるのがはっきりしているからである。「転ばぬ先の杖」という諺がある。住宅購入を考えているサラリーマンは、この記事を読み、是非思い留まって貰いたいものである。

国土交通省は長期固定金利型の住宅ローン「フラット35」で、今年度末に期限が切れる金利優遇制度を来年度も継続する方針だ。省エネ性や耐震性に優れた住宅の購入者を対象に、当初5~10年間に適用される金利を通常より引き下げる。消費増税が響いて今年上期(1~6月)の新設住宅着工戸数が4年ぶりに前年同期を下回るなか、住宅市場の下支えをねらう。

Aさんは家を買っても問題だろうか?

「Aさんは30才で夫婦と子供二人の4人家族で生活している。都内の中堅私立大学を卒業後、百貨店に就職し一貫して経理畑を歩んでいる。二人の子供を伸び伸びと育てたいと思い、回りに公園が多い恵まれた住環境に加え、ゆったり広めの3LDKで最寄駅まで徒歩5分なのでタクシーを使う必要がない新築マンションを探し当てた。私鉄に一時間程乗る必要があるが、価格は4千万と何とか手が届きそうなレベルなので、貯蓄した5百万円に長期固定金利型の住宅ローン「フラット35」で残りの3千5百万円を調達し購入する予定だ」

上記は飽く迄喩である。読まれた読者はどう思われ、感じられただろうか?大多数の方は特に何の違和感も感じなかったに違いない。大学卒業後百貨店という固い職場に正社員という身分をを得、経理マンという地味な仕事を手堅く熟し、20代で結婚し二人の子供を儲け、その子供達を伸び伸び育てるために自分の通勤時間は犠牲にしても、ゆったり広めのマンション購入を予定している。理想の既婚男性のイメージではないだろうか?

しかも、資金調達のため採用を予定している「フラット35」は国土交通省(国)が制度設計したものだ。しかしながら、人生の陥穽とはこういう一件何でもなさそうなところにぽっかり口を開けているものである。

Aさんが背負う事になるリスクとは?

住宅金融支援機構が公開する「フラット35」を参照する。確かに調達条件により金利は上下するが35年という長期に渡り固定ベースで2%前後というのは、借り手に取って随分と有利な条件といえるだろう。とはいえ、借りたものは返済せねばならない。飽く迄私の試算であるが、初年度であれば、元本として、3千5百万円÷35年=100万円 金利として、3千5百万円×2%=60万円 総額で160万円の返済が必要となる。

勤め先の百貨店がECとの競合に敗北し、その結果経営が破綻するかも知れない。勤め先は何とか持ち応えたとしても、人件費削減のため経理業務をアウトソーシングし、その結果Aさんは金銭解雇を勧告されるかもしれない。勤め先の経営は順調で、経理部門のアウトソーシングもなかったが、Aさんが重い病気に罹り、その結果子会社に転籍となり、年収が半分になってしまうかも知れない。仮に、どの一つもなかったとしたら、今の時代Aさんはまぐれ当たり的に幸運な人である。

そして、Aさんが背負う事になる今一つのリスクは購入マンション価値の下落である。仮に不幸にして上記展開となり、Aさんが失業に至っても4千万で購入したマンションが6千万円に値上がりしておれば深刻な問題にはならない。賃貸に転居し、購入マンションを売却すれば借入金を返済しても2千5百万円が手元に残る。これだけまとまった資金があれば当座の生活には困らない。余裕を持って転職活動が出来るし、これを機会に税理士の資格を取得し独立するのも良いだろう。

問題は4千万で購入したマンションが2千万円に値下がりしてしまった場合である。失業者となり収入がない上に1千5百万円の借金を背負ってしまう。こうなれば、破産宣告し、離婚、一家離散、というありがちなパターンを踏襲するしかAさんに残された道はないのでは?

住宅価格の将来は厳しい

それでは、住宅価格の将来はどうなるのであろうか?平成26年7月29日に総務省が公表した平成25年住宅・土地統計調査「速報集計結果」の公表の 結果の要約を参照する。

総住宅数は6063万戸と,5年前に比べ,305万戸(5.3%)増加

空き家数は820万戸と,5年前に比べ,63万戸(8.3%)増加

空き家率(総住宅数に占める割合)は,13.5%と0.4ポイント上昇し,過去最高

この調査結果から見て取れるのは、「フラット35」の如き国策で総住宅数は5年間で305万戸(5.3%)増加する一方、人口減に伴い空き家数が5年前に比べ,63万戸(8.3%)増加している事実である。勿論、地域格差があるので一律に論じる事は誤解を招く事になるのは事実である。

しかしながら、住宅需要が減少しているにも拘わらず、国土交通省は供給サイド(住宅メーカー)に立ち、国民に対し「フラット35」を活用し住宅の嵌め込みをやっている懸念は払拭出来ない。仮にそうであれば、何処かの時点で「フラット35」ありきの住宅バブルは破裂し、住宅購入者は路頭に迷う事になってしまう。

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