photo by markus spiske
小さな会社を経営しているとする。
経営者は、どんな意識でいるべきだろうか。
1.年商100億円という具体的な数値を目標としてがんばる
2.前日より、前年より、良いサービスを、ひとりでも多くのひとに提供しようとしてがんばる
いま、(1)を「ゴール志向」と、(2)を「システム志向」と名づけることにする。
(2)で言うシステムとは、「なんらかの状態、行動の指針」を決めて(システム)、その状態を継続することを言う。*1
(1)の強味はなんだろうか。大きな目標を掲げることで、画期的なアイディアが生まれるかもしれない。また、ゴールが具体的なので、そのゴールに向けて用意すべきことが明確になる。
高校生のころ、跳び箱の上に手をついて一回転するという技を体育の授業で練習したことがある。僕にはそれができたのだけど、体操部の友だちとは、その回転の大きさが全然違う。アドバイスを求めたら彼はこう教えてくれた。
「跳び箱の上から着地までの回転の大きさは、それまでの動作の大きさが決めるんだよ。だから、大きく回ろうと思ったら、跳び箱までなるべく早く走って、思いっきり踏切板を踏み、跳び箱に手を着くまでの動作を大きくしなくちゃ。そうしたら、大きく回れるよ」
そのアドバイスはいまだに鮮烈に残っていて、大きなことを達成するためには、その準備段階をこそ大きくしなければならないんだなと思った。
この話は、「ゴール志向」の強味をよく表現している。
しかし、「ゴール志向」には弱味もある。ゴールに強烈に執着すればするほど、不幸せになるのである。
「年商100億円企業」にすることを目標にした起業家のうち、いったい何人がそれを達成するだろうか。マスコミで目にするそういう人たちの陰に、いったい、何千人何万人の目標を達成することができなかった人たちがいるだろうか。
その人たちが、もし、まさに人生をその目標に賭けていたのだとすれば、一握りの成功者と、大多数の失敗者を生むことになる。一握りの「超幸福」な人と、大多数の幸せを感じることができない人を生むのだ。
毎日、目標の売上に遠く届かないことに、イライラし、絶望しそうになる。それが長い年月にわたる。そして、ありもしない理想的なジャンプの方法を探して、放浪の旅を続けるような精神状態になるかもしれない。そうなれば、目の前の小さなこと、ひとりひとりのお客様の満足感を大切にすることに、あまり大きな意味がないかもしれないと思い始めるかもしれない。
さて、(2)の「システム志向」の場合はどうだろうか。
そいう経営者には、具体的な規模の目標はない。ただただ、毎日の仕事を、前日より、前年より、良いものにして、それをひとりでも多くのひとに届けたいと思って過ごしている。
この経営者は、それを達成できたと実感できた日には、仲間と祝杯をあげる。小さな祝杯だけれども、幸福感、達成感がある。
そして、その小さな祝杯をあげる日は、月に何日も訪れる。経営者には、長期間にわたる幸福感がもたらされる。
ビジネスも徐々に大きくなっていく。2年で何百倍になることはないが、15年のうちには、複利的な効果もあって、当初からは考えられなかったような大きさの事業になっている。
「ゴール志向」は、短期間に少数の成功者と多くの不幸な人を生み出すが、「システム志向」は、長期間にわたる幸せを、多くの人に成功を約束する。
もし、それに弱味があるとすれば、短期間で、革新的で、世間の注目を浴びるような爆発的な成功を望めないかもしれない、ということだが・・・
以上の、「ゴール志向」と「システム志向」は、何度も紹介したスコット・アダムスさんというアメリカの漫画家の方の本:How to Fail at Almost Everything and Still Win Big: Kind of the Story of My Life に紹介されていた考え方である。
僕の立場に置き換えて、彼のいう「システム志向」を説明してみた。
彼は、この「システム志向」こそが成功の秘訣であると言っている。それは、ビジネスだけでなく、さまざまなこと、ブログとか、ダイェットとか、クリエィティブな仕事とかにも有効であると。
彼の周囲にいる成功している人たちの多くは、システム志向であって、それはウォーレン・バフェットでも、ザッカーバーグでもそうなのだ、と。
さて、あなたは、「ゴール志向」と「システム志向」、どちらの考え方が、成功に近いと思いますか?
*1:たとえば、ダイエットだと「20kg痩せる」はゴール、「健康的な食事法を決めてそれを継続実行する」がシステムになる
(2014年12月4日「ICHIROYAのブログ」より転載)