「お金儲け」はピアノと同じで練習が必要だ、という文章を購読しているJustinさんの最新のブログ記事で見かけて、元記事を読み、ああ、僕と同じようなことを感じている人がアメリカの起業家にもいるんだなと思い、ちょっと驚いた。
それは『Making money takes practice like playing the piano takes practice』という記事で、Jason Friedさんという方が書かれたものだ。彼はプロジェクト管理ツールBasecampの共同創業者である。
お金儲けには練習が必要だ。ちょうどピアノを弾くのに練習がいるように。長い練習なしに、誰かがピアノを弾けるようになるなんて、誰も期待しない。お金儲けも同じだ。練習すればするほど、あなたはお金儲けが上手くなる。10年ピアノを練習した人が簡単にピアノを弾くように、お金儲けも練習によって簡単になるのだ。
以前、僕は自分の今までの経験から、なるべく失敗なしに商売を始めるには、できるだけお金を借りず、小さな商売から始めるべきだと書いた。
それは「起業」とは書かず「商売」と書き、また「商売をして生きていくことが必須なひと」のために書いた。
その記事の限界を僕もわかっていた。
それは僕のような「並の」人間には正しいが、一流の起業家の方、アイディアに優れ、人間的な魅力に溢れ、失敗を恐れず、何度失敗しても立ち上がることのできる並外れた起業家の方には、まったく向かない方法だ。
そういう人は打って出て、外部資金も取り入れて大きくスタートすれば良いと思う。
だから、僕は、それを「起業」とは言わず「商売」と言ったのだ。
しかし、Josonさんは、外部資金に頼らず自分の持っているものの範囲でビジネスを始めることを、「ブートストラッピング」と呼び(一般的なワードになっているようだ)、あえて、「ブートストラッピング」起業をすることを、その記事で薦めている。
彼が「ブートストラッピング」起業を薦めている理由は明快で、それが「お金儲け」の練習になるからだという。彼が知っている「お金儲け」の上手い人たちは、とても早くから、たとえば、レモネードを売ったり、洗車したり芝を刈ってお金をもらったり、ベースボールカードのやりとりをしてお金を儲けていた。そういえば、イケアの創業者も5才のとき、近所の人にマッチを売ることから始めている。
「ブートストラッピング」起業をすることは、なるべく早く「お金儲け」の練習をすることにつながるのだと言う。
起業家が身につけるべき正しい習慣、レッスン、脳に刷り込むべき正しい考え方は、実際にお金を使ってみてそれ以上に収入を得るというサイクルで「練習」をすることによって身につくという。
上に書いたような起業家として優れた資質をもつひとが、あえて、「ブートストラッピング」起業をするべきかどうか、僕にはわからない。でも、たしかにそういう若い人たちもいて、「今はとにかくふたりで◯◯を売りながら、◯◯のアイディアを練って資金もプールしています」というような心強い二人組にお会いしたこともある。
しかし、ともかく、「事業でお金を儲けること」を「ピアノ」にたとえるのは、僕の実感にぴったりとはまることだけは間違いない。
こんな風にである。
いくらピアノを聞いても、ピアノを弾けるようにはならない
いくら本を読んでも、商売ができるようにならない
何年もピアノを練習すれば、必ずある程度弾けるようになる。
何年も商売を続ければ、必ずある程度儲かるようになる。
こつこつと飽きずにピアノの練習を、何年も続けるのは難しい。
こつこつと飽きずに小さな商いを、何年も続けるのは難しい。
数年の練習で、驚くほど簡単に、ピアノを弾いているように見えるようになる
数年の商売の積み重ねで、ごくごく楽に、商いをしているように見えるようになる
ピアノは練習によって誰にでも弾けるようになるが、プロになったり、さらにアーティストのレベルにいくのは至難の技だ。
商売は積み重ねることによって誰でもある程度は儲かるようになるが、何百億の規模になったり、ジョブスのようになったりするのは至難の技だ。
また・・こんな風にも。
ピアノは誰かに聴いてもらえる機会があると頑張って練習できる。
商売は誰かの役に立つと思えば頑張れる。
photo by Death to The Stock Photo
(2014年10月3日「ICHIROYAのブログ」より転載)