photo by David Clow
なんとなく、農業とか畑仕事をやっていると、健康で長生きというイメージがある。
というより、最近僕の身の回りでは、そのイメージがますます固まっている。
僕と嫁の両親はともに80代だが、ひとりは亡くなり、ふたりはほぼ常時介護が必要で、ひとりはたまに助けてもらってなんとか暮らしている状態だ。
ふたりは認知症がかなり進んでいる。
いっぽう、長女が嫁いだ山梨県のおじいちゃんおばあちゃんは、2,3才若いが、4人とも元気で畑仕事などもされている。
やっぱり、田舎で畑仕事をするのが、健康な80代の秘訣なんじゃないだろうか。
今朝、おふたりがマチャミさんとテレビに出ておられ、ますますそのイメージが強固となった。
でも、それは本当なのだろうか?
もし、田舎で畑仕事をやっている人ほど、長生きで介護されている率が少ないとしたら、きっとはっきりした研究成果が出ているはずだ。
たとえば、
「農作業をしている人の多い県ほど、介護されている人の割合は少ない」
このように言えるのだろうか?
なんだか、 朝からそれが凄く気になって調べてみた。
まず、介護されている人の率だが、かなり確かなデーターがあった。厚生労働省の平成24年度 介護保険事業状況報告(年報)から、2012年の都道府県別「要介護(要支援)認定者数(年度末現在)」を「第1号被保険者(65才以上)数」で割って介護率を算出した。
畑仕事をしている人の割合は、確実なデーターはないと思われたので、農業の従事者のデーターを使うことにした(こちらの統計の農業従事者数(自営農業に従事した世帯員数)を使った)。また、農業従事者の割合を県別に出すために、都道府県別の人口をこちらからひっぱった。
その表を相関を調べるために、まず散布図にした。
Excelの「挿入」→「散布図」で簡単に作れる。
横軸が県人口のうち農業従事者の割合、縦軸が要介護率(要支援含む)だ。
残念ながら、農業従事者の割合が多い県ほど介護率が低くなるというような傾向は見られない。
いや、傾向としてはグラフは右上がりで、農業従事者の割合が多い県ほど介護率が高くなっている傾向があるようにも見える。
そこで、学生のころに習った相関係数を算出してみる。( 忘れてしまっていたので、ネットで調べた。 相関係数は-1から1の間であらわされ、1で強い相関があり、-1で強い負の相関(逆の相関)があり、ゼロに近い数値では相関がないとみなせる)
Excelの関数からもそれは簡単に計算できる。
Correl関数がそれで、「統計」という分類の中にそれが入っている。
相関を調べるフィールドを聞いてくるので、それぞれの数値を指定すれば、簡単に相関係数が算出される。
この場合、「農業従事者の割合」と「要介護率の高さ」の相関係数は、「0.35」 と算出された。
つまり、「農業従事者の割合が多いほど、要介護率はあがるという、ゆるい相関にある」と。
あれ・・・どこで間違えたのだろうか。
想像とは逆の結果だぞ?
それではということで、都道府県別の平均寿命と農業従事者の割合も比べてみた。
都道府県別の平均余命は平成22年のデーターがあったが、男女別になっていたので単純に平均した。
イメージでは、農業従事者の割合が多いほど、平均寿命も長いとなるはずなのだが、相関係数は「-0.28」でそこに予想した相関はみられなかった。
僕は大学でそういった統計的な考え方も学んだはずだが、上に書いた結果についてはあまり自信がない。
どこかで数値の使い方を間違えているのかもしれないし、そもそも、仮説を確かめるために集められたデーターではないので、誤差が大きすぎて意味のない比較になっているのかもしれない。
結局、僕は午前中の時間をこの記事を書くために使ったものの、明確な答えはでなかった。
また、この記事を読んでくださったかたにも、最初の問に明確な答えを用意することができなかった。(すみません!)
ただし、僕はこれからは、安易に「農作業や畑仕事を続ければ、介護のお世話になる可能性は低くなる」とは言わないだろう。
なにか確かな研究成果や統計がみつかるまでは。
適度な運動が必要なことは間違いのないことだろうが、それ以外の部分では、たぶん、生きがいとか、食生活とか、ほかの要因の影響のほうが大きいのだろう。
そろそろ身近に迫ってきた最後の10年をなるべく健康に過ごすため、
僕は、そろそろこの仕事をやめて田舎に移り住み、畑でもやるべきなのか。
都会か郊外に住んで、やりたいことをやり、適当な運動でごまかしていてはダメなのか。
答えは出ない。
(2014年7月6日「ICHIROYAのブログ」より転載)