このところネットメディアに関して、編集でも、広告でも、相次いで問題が指摘されています。ネットの社会的な影響力が大きくなり、これまでのやり方が通用しなくなってきているのでしょう。時代が変化していく流れを感じます。
このところの動きをまとめます。
サイゾーが運営するニュースサイトの「ビジネスジャーナル」が貧困問題について、NHKの回答を捏造し、謝罪と処分を発表。
まとめサイトのBLOGOSが、不適切な表現が含まれたブログを転載。削除とお詫び。
電通でデジタル広告において不正。未掲載や掲載期間のズレなどがあった。
記者会見の一問一答を報じた日経ビジネスオンラインによると、「掲載されるはずの期間に掲載されてないのでは」という指摘があったとのこと。掲載に関して期待した効果が上がってないので露出が行われているのかと疑義がでたようです。
ユニリーバがインターネット動画サイト「AbemaTV」で放送された番組内でユニリーバの広告が流れたことに批判が起き、当該番組への広告出稿を止めるように広告代理店や動画広告ネットワークに要請。
この編集と広告の動きは無関係に思えるかもしれません。しかし、実は共通項があるのです。
ひとつは、影響力が高まったことにより、これまで見過ごされたり、不問に付されてきたことが「問題」とされるようになったこと。もうひとつは、「事後対応」というネットの常識が問われているということです。
影響力が大きくなったからこそ、トヨタは効果を確認し、ユニリーバはリリースを出すことになったわけです。たぶん、これまでも電通で起きたようなことはあったでしょうが、発覚しなかったのは広告主が注視するほどの重要度がネット広告にはなかったからでしょう。正直、今回の不正の金額を見ても、大したことがないわけですが、それでも電通が調査するというのは今後の市場の成長を考えてのことでしょう。
「事後対応」です。ビジネスジャーナルは、自ら取材して記事を書くマスメディアと同じタイプですが、BLOGOSは(独自取材もまれに行いますが)などはまとめサイトやプラットフォームと呼ばれ、「ネットにあるコンテンツを紹介しているだけ」という立ち位置で社会的な責任を回避してきました。
プラットフォームは、問題があれば後から修正、削除する、という「事後対応」をしてきました。そのビジネスを支えるのが広告ネットワークです。ページビューを稼いでお金を得るので、釣りタイトル、極論を展開する、といったコンテンツに走りがちになります。
デジタル広告は、特定の媒体や番組、時間に広告を掲載することが出来るマスメディアと異なり、ネットのさまざまなサイトに、さまざまな条件で広告を配信することが出来ますし、効果も測定できますが、配信先を確認するのは難しいのです。そこで問題が起きれば、こちらも「事後対応」してきたわけです。
「事前考査なんて出来ません。マスメディアとは違う」「事後に対応すればいいじゃないですか」そんなことを言うデジタル広告会社やネットメディアの関係者にも多く会ってきましたが、ユニリーバが直面したように、広告主のブランドイメージとは程遠いサイトや番組に広告が出てしまうと後の祭り。広告会社やネットワーク運営企業に「社会的な常識」があれば出さなくてもよかったリリースを出すことになってしまうのです。
マスメディアの広告考査や編集のチェック体制がなぜできたか、少し考えればわかると思います。影響力が高まり、ビジネスとしても注目されているからこそ、相次いで問題が指摘されているわけです。「プラットフォームだから」「ネットだから」という言い訳を捨て、「メディア」として信頼を高めて行く必要があります。一方、これまでのネットの常識を続ける企業や個人は、より大きな問題に直面することになっていくでしょう。
(2016年9月24日「ガ島通信」より転載)