地雷を踏んでしまったトランプ候補

やはりボロがでたという感じでしょうか。
Republican U.S. Presidential nominee Donald Trump attends a campaign event at the Ocean Center in Daytona Beach, Florida August 3, 2016. REUTERS/Eric Thayer
Republican U.S. Presidential nominee Donald Trump attends a campaign event at the Ocean Center in Daytona Beach, Florida August 3, 2016. REUTERS/Eric Thayer
ERIC THAYER / Reuters

7月28日の民主党大会でイラク戦争で戦死したイスラム教徒米兵の両親のカーン夫妻がトランプ候補を批判したことを受け、トランプ候補がそれに反論し、さらに母親を侮辱する発言を行ったことは致命的な失敗だと感じます。共和党大会が開催され、クリントン候補の支持率があがって、それまで勢いに乗っていたトランプ候補がクリントン候補に逆転されたようですが、この流れをさらに加速しそうです。

やはりボロがでたという感じでしょうか。家族が生命を犠牲にしたカーン夫妻が行った批判は、トランプ候補は何一つ犠牲を払ってこなかったというものでしたが、米ABCのインタビューで反応を求められたトランプ候補が、「雇用創出」という犠牲を払った、「(雇用した人の)教育などの面倒も見た」と説明してしまったのです。いくら米国でも、それを犠牲だと感じる人はいったいどれだけいるのでしょうか。

さらに、母親が発言せず黙って立っていたこともイスラム教徒の女性だからと匂わす余計な一言まで加えてしまいました。

トランプ候補は、戦死した米兵は英雄で、問題は米兵を殺害した過激なイスラム系テロリストだと言い訳をしたとはいえ、遺族への批判を止めなかったことは、保守系市民の支持を失います。しかも余計なことに、ツイッターでカーン夫妻を標的にする反論をツイートし拡散してしまったのですから、問題の深さや本質をわかっていなかったということでしょう。

ジョン・マケイン米上院議員も、トランプ候補支持は撤回しなかったもののこの問題へは辛辣に非難を行い、共和党も「大統領候補の党指名を与えたが、最も模範的な国民を際限なく誹謗中傷する権限まで与えたわけではない」とトランプ候補を批判しているようです。

やはり戦地で犠牲になった兵士の方々へは最大の敬意を払うというのはどの国でも同じですが、戦争政策や失敗した政権を批判するのならいざしらず、遺族の家族を批判することは常識はずれで、どの国でもありえないことです。米国の保守層ではなおさらでしょう。

先週までは、トランプ大統領実現が現実味を帯びる勢いでしたが、この一件で躓き、トランプ陣営が一発大逆転の秘策を打たない限り、もう支持率回復は難しくなったのではないでしょうか。

(2016年8月4日「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載)

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