またまたスマホ市場の勢力図が変化しそうで面白い

今のスマートフォン市場は、前年同期比51.3%増という驚異的な成長しつづけていて、その伸びしろをいずれが取り込むのかの競争になっています。サムスンはそれを制してきました。iPhoneも出荷台数は伸びているのですが、20%程度の伸びでは市場の成長率にはるかに届かず、シェアが落ちていくのも当然です。アップルは、このスマートフォン市場の成長を取り込む競争で負けてきたのです。

日本市場では、ドコモがiPhoneを取り扱ったことで、それでなくとも世界では突出してiPhoneのシェアが高い日本市場はさらにiPhoneシェアが高まっていくことは間違いないことでしょう。IDCの調査では、この4~6月期でiPhoneが国内スマートフォン出荷台数の36.1%とトップシェアでしたが、おそらく人気の高いiPhone5sの供給が整えば、年内にはiPhoneが50%近いシェアとなる可能性もでてきています。

スマートフォン市場を眺める際にOSのシェアで見るのか、メーカー別に見るのかで見え方も違ってきます。複数の視点で見るとさまざまな解釈ができ、実に興味深い市場です。

iPhoneの強い日本でもOSのシェアで見ればアンドロイドのスマートフォンのほうが売れています。OSのシェアだけで眺めればもうiPhone終わったと感じられるかもしれません。

なにせ、出荷台数の世界シェアでは、アンドロイドが2012年の69.1%から、この4~6月期で79.3%占めるにいたっており、逆にiOSつまりiPhoneは2012年のシェア16.6%からさらに13.2%へとシェアを落としているのですから。

ところがメーカー別に見てみるとまた違った風景が見られます。実際の市場ではOS競争というよりは、あくまでメーカー対メーカー、ブランド対ブランドで競い合っているのですから。

メーカー別に見ると、4~6月期のトップはサムスンでシェアが30.4%、第二位がiPhoneのアップルで13.1%、第三位はLG電子の5.1%ですから、ほぼサムスン一人勝ちです。では、このままサムスンは市場の王者として地位を維持していくのでしょうか。

しかしそうは単純にいかないところが面白いところです。

今のスマートフォン市場は、前年同期比51.3%増という驚異的な成長しつづけていて、その伸びしろをいずれが取り込むのかの競争になっています。サムスンはそれを制してきました。iPhoneも出荷台数は伸びているのですが、20%程度の伸びでは市場の成長率にはるかに届かず、シェアが落ちていくのも当然です。アップルは、このスマートフォン市場の成長を取り込む競争で負けてきたのです。

技術力や圧倒的な供給力、またブランド戦略で、いったんスマートフォン市場での成長を取り込むことに成功してきたサムスンですが、最大のライバルのアップルに追いつけ追い越せで成功したものの、同時に、同じアンドロイドOSの他のメーカーのチャレンジ対象にもなってきているのです。市場の成長を取り込む競争は、言ってみれば、かつてのアメリカの西部開拓史のようなもので、成長を取り込んだほうが勝ちということになります。しかもその勢いの違いは、価格競争力の差で効くようになってきます。

まだシェアとしては低い他のメーカーとの伸び率での違いを見ればサムスン王国も盤石だとはいえません。もっといえば陰りすら感じさせる兆候が見られるようになってきているように感じます。

スマートフォンの出荷台数の伸び率では、サムスンは52.7%ですが、これはアンドロイド勢の主要メーカーではもっとも低く、たとえばアンドロイドのスマートフォン第二位のLGは108.6%、第三位のLenovoが132.7%と激しく追い上げてきているのです。

ハードがビジネスのアンドロイドのメーカーは、工業化時代の競争原理に従うしかありません。販売台数とシェアを追求して勝ち残ったところが利益を得るのです。そして、販売台数やシェアを追求するとなると、もっとも成長が期待できる途上国をどこが制するかの勝負になってきます。

その成長市場の典型としての中国やインドで異変が起こってきているようです。4~6月期の中国におけるスマートフォンのシェアはサムスンが18.3%で首位とはいえ、2位のLenovoが12.6%、3位はChina Wireless TechnologiesのCoolpadで11%と中国メーカーが激しく競り合ってきています。またおおよその予想を裏切るように中国ではありえないほど高額なiPhoneがシェアを伸ばしそうなのです。

インドも巨大な潜在市場をかかえる成長市場ですが、そのインドでも異変が起こってきていることが報じられています。サンケイビズの記事によると、インドでの今年1~3月期のスマホ市場でのサムスンのシェアは32.7%だったのが、4~6月期では26%にまでシェアを落としてしまったのです。

そして地場の携帯メーカー、マイクロマックスが18.8%から、22%へとシェアを拡大したばかりか、インドのメーカー各社がスマホでシェアの半数以上を占めるまでになったというのです。

ついでに地域で見ると、米国もiPhoneが強い市場で、その米国でふたたびiPhoneのシェアが高まってきているようです。調査会社Kantarの最新の調査結果によると、今年の7月までの3ヶ月間でiPhoneのシェアが43.4%に達しており、1年前の同時期に比べて7.8%もシェアが増加しているということです。

欧州はサムスンが独走してきた市場ですが、こちらも異変が起こってきています。まだシェアは小さいとはいえ、マイクロソフトに買収されたNOKIAのシェアがじわじわと伸び始めているようです。

さらに成長を取り込む競争だけではありません。スマートフォンは買い替え需要もあります。ここでもうひとつの競争が起こってきます。アンドロイドを使っていると、他のアンドロイド・スマートフォンへの買い替え、つまり機種を変更する心理的な抵抗は高くありません。宿命的に、アンドロイドスマートフォンは、同じアンドロイドを搭載するメーカーとの激しい競争を余儀なくされてきます。

しかし、iPhoneからアンドロイドのスマートフォンへの買い替えは、これまで購入したアプリなども使えなくなるばかりか、使い勝手が異なるので起こりにくいのです。仕事柄どちらのスマートフォンも使っていますが、やはりアンドロイドのスマートフォンは慣れないので使いづらさを感じます。

つまりサムスンは、成長著しい途上国市場で、他のアンドロイドのスマートフォンメーカーとガチで勝負しなければならないばかりか、ユーザーの流出を防衛する戦略の双方が必要になってきます。

しかも、売れば売るほど漁夫の利を得るのはグーグルです。まるで鵜飼のように、アンドロイドのスマートフォンが伸びれば伸びるほど、広告収入が伸びるばかりか、GooglePlayでの収益が伸び、アンドロイドのメーカーはハードでの利益しか得られません。しかも途上国を攻めれば攻めるほど価格競争が激しくなってきます。

こうやって眺めると、サムスンがこのまま君臨することは構造的に相当難しくなってくることが見えてきます。競争にできるだけ巻き込まれないように、シェアよりはユーザーを囲い込むことを重視したアップルの戦略、というかジョブズの先見性が再び注目されるようになてくるのではないでしょうか。

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