スマートフォンの成熟へ向かう速度が早く大変です。サムスンだ、アップルだと2強体制に入ってきたスマートフォンが、それで淘汰が始まるどころか、逆に戦国時代にむかうのかと思わせる状況になってきているようです。
JBプレスに興味深い記事がでていました。4~6月期の出荷数量ではサムスンは前年から43.9%増、アップルが20.0%増でしたが、サムスンのシェアは1年前の32.2%から30.4%に、アップルは16.6%から13.1%にそれぞれ低下したというのです。つまり残る下位メーカーのシェアが増加し、市場の56.5%が下位メーカーが占めているということです。
アップルから、スマートフォンではサプライズが消え、秋にならないとわからないものの、話題の中心はもっぱらケースをプラスティックにした低価格機種です。
今海外を中心に人気の高いサムスンのフラッグシップ機ギャラクシーS4も、さまざまな目新しい技術を投入されていますが、実際にユーザーが使いこなせるかどうかが疑問なものが多かったように感じています。もしかすると日本の家電が犯した目新しい機能、目新しい性能を満載し、過剰品質になっていって敗北した間違いの歴史をサムスンが踏み出した象徴的な製品になるのかもしれません。
アップルやサムスンの製品を見る限り、もう特別な機能や性能、また新しさが実感できる体験を生み出す限界に来ており、技術そのものが成熟しはじめてきているのではないかと感じさせます。
そうなってくると、完成度の高い部品モジュールを組み合わせることでそれなりのモノができてしまう分野では技術のフラット化が進み、価格によるチャレンジ、デザインなどによる個性化でチャレンジが起こってくることは避けられません。
しかもアンドロイドの場合は、プラットフォームをグーグルが押さえているので、ユーザーがブランド・スイッチしやすい構造となっており、競争が加熱してくるのは避けられません。
おそらくスマートフォン市場も戦国時代にむかっていくのでしょう。もしかするとスティーブ・ジョブズはその流れを先見していたかもしれません。シェアを追求しない、iPhoneの独自性を追求するという発言は一貫していました。だからアップルはアップル、iPhoneはiPhone、さらにiPadなどiOSでつながり世界を広げることで、ユーザーを囲い込み、競合に侵食されづらい構造を築くことを目指してきたのでしょう。
(※この記事は、2013年7月30日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」から転載しました)