地方や中小企業を支える新たな採用サービスが誕生~ビズリーチの試み~

30~50代のプロフェッショナル人材に特化した会員制の転職サイトなどを運営する株式会社ビズリーチ(代表取締役社長:南壮一郎氏)が5月26日、完全無料のクラウド型採用サービスを正式にリリースし、都内で記者発表を行った。

30~50代のプロフェッショナル人材に特化した会員制の転職サイトなどを運営する株式会社ビズリーチ(代表取締役社長:南壮一郎氏)が5月26日、完全無料のクラウド型採用サービスを正式にリリースし、都内で記者発表を行った。

「地方創生」に湧く地方の中小企業にとって、人材を確保する一助となるのかどうか注目されるところだ。

新サービス名は「スタンバイ」

今回、ビズリーチが発表した新サービスは「スタンバイ」。完全無料のクラウド型採用サービスだ。採用コストをできる限り抑えたい中小企業にとって、無料で登録できるというのが最大のメリットと言える。

企業が採用を行う際、求人の作成、求人の公開、応募管理、採用成約という採用行程が必要になるが、そのときにかかる費用がすべて無料とのこと。

また、採用業務の効率化を図るため、求人公開を5分程度で処理することを可能とし、応募状況のリアルタイム共有もできるようにしている。PC向け、スマホ向けの両方に対応できるのも特徴だ。

一方で、求職者側としては、職種、業種、会社名、働き方のこだわりなどの「キーワード」と「勤務地」を入力するだけで、「スタンバイ」で作成された求人情報以外にも国内のインターネット上にある様々な求人情報を集約することができるため、より多くの求人情報にたどり着くことができるとしている。

こうしたサービスについては、世界最大の求人サイトと言われる「indeed」との類似性を指摘する記者からの質問もあったが、その点について南氏は、「確かに『indeed』と似ている部分もあるが、当社が目指しているのは、企業に簡単な採用サービスを提供することにある。自分たちが描いている大きな採用サービスの一部分に過ぎない。これまでインターネット上になかった情報をどうすればインターネット上に持っていけるのか。地方の中小企業が中心になると思うが、これこそがインターネットが持っている力でしかできないことだ。これを無料で簡単なサービスに込めることで、求人の可視化に特化していきたい」と説明。企業が抱える採用に関する課題をいかに打破するかが「スタンバイ」に課された最大の目的であり、「企業とともに『採用革命』を起こすことで日本経済を元気にしたい」とその思いを語った。

「スタンバイ」は、2016年5月末までに求人掲載社数を5万社、登録求人掲載数を20万件にすることを目標としている。

ビズリーチとアソビューが業務提携

今回の記者発表では、「スタンバイ」のリリースのほかに、ビズリーチと日本最大級の遊び・体験の予約サイト「asoview!(アソビュー)」を展開するアソビュー株式会社(代表取締役:山野智久氏)の業務提携も併せて発表された。両社は、「asoview!」を利用する全国のレジャー事業者に対して「スタンバイ」を活用してもらい、求職者には地方のレジャー事業への就職という可能性を見出してもらおうとしている。

これにより、これまでアソビューがレジャー事業者に対してサポートしてきた、現地での「ガイド」を除く、「集客」「予約対応」「アフターフォロー」の部分に加えて、「採用」についてのサポートも開始されることになり、レジャー事業者にとっては本業である「ガイド」に一層注力することができるとしている。

山野氏は、「質の高いサービスを維持するには人材の確保が必須。しかし各地のレジャー事業者は採用課題を抱えている」と指摘し、今回の業務提携をきっかけにレジャー人材の質の確保を図るとともに、政府が掲げる「地方における若者雇用創出30万人」(2020年)という目標にも寄与するものになるとの見方を示した。

この日は、具体的な取り組み事例として、日本のラフティングやキャニオニングの第一人者である有限会社ネイチャー・ナビゲーター代表取締の竪村浩一氏も登壇。竪村氏は、人材のミスマッチにより毎年50万~100万円の採用経費が掛かっていたと明らかにした上で、「『自然の中で働きたい』『地域活性化に貢献したい』など、前向きな人材にこそ来てほしい」と語り、スタンバイを活用することで採用コストを抑えることができるだけではなく、人材のミスマッチ解消への期待感を表した。

(竪村氏へのインタビューを後日掲載する予定)

地方を支えるのは「人」

日本においては、長時間労働などの働き方の見直しが進められているところだが、一企業において社会人生活を終えようという終身雇用のスタイルが大きく崩壊しようとする中で、無料のクラウド型採用サービスが展開され、地方において新たな雇用が積極的に創出されるということは、地方の企業にとって質の高い人材が確保できるというチャンスが増えるだけではなく、新しい人生の一歩を踏み出そうとしている人や地方への移住を希望する人にとっても非常に大きなチャレンジになるのではないだろうか。地方を支えていくのはやはり「人」の存在であり、「人」を確実に確保するためにも雇用の創出は不可避なものである。

今回のビズリーチとアソビューの業務提携のように、「転職支援」と「地方のレジャー事業者」がうまく連携をすることにより、地方へのエントランスがより多く、より明確になることは非常に喜ばしいことだ。

ただ、求人の選択肢が増えることだけで人材のミスマッチが解消されるものではない。転職をする人自身が新しい仕事を選び抜く力を養っていくことも今後の課題になる。「仕事を選び抜く力」ということは、転職に失敗しないための力ということではない。失敗のリスクを受け入れつつ、一歩前に進もうとする力が必要だということだ。

「転職は地方」という選択肢がもっと開かれれば、大都市部にある大企業も人材の流出をおそれ、働き方の見直しを加速化させる可能性もある。地方と大都市部の人材の争奪戦において地方が負けないためにも、インターネット上になかった地方の求人情報を表に出していくという作業が必要になる。

「スタンバイ」が今後どのように展開していくのか、注目していきたい。

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