ついに日本で最も医療的ケア児の多い町、世田谷区に障害児保育園ヘレン経堂を開園します!
【世田谷区とのなれそめ】
ことの起こりは、世田谷区役所のホームページ経由で、保坂区長のところに届いた2通のメール。
「子どもが医療的ケア児だったら、認可保育園から預かりを断られてしまうなんて、おかしい」
そうした趣旨の切実な内容に、保坂区長は胸を痛めます。何とかならないものか。
そして杉並区荻窪では、医療的ケア児を保育する施設があるらしいぞ、と気づきます。
そして「障害児保育園ヘレンおぎくぼ」に、障害福祉課、保育担当部署の方々と視察に来られました。
「世田谷区には日本一のこども病院もあって、医療的ケア児家庭がたくさん住んでいる。世田谷にもこういう施設が必要だ」
そう思い、職員の方々も奮起して、障害児通所施設の制度と居宅訪問型保育という子ども子育て新制度をアクロバティックに組み合わせたヘレンモデルの導入を進めてくれました。
その間、普段は区行政に対して厳しい指摘も多々行う立場の区議会議員の方々も、党を超えて賛成し、予算化していったそうです。
そして保育園が転園した跡地である、子ども子育て総合支援センターの2階部分で障害児保育園をやることが正式に決まり、フローレンスは公募プロセスを経て選定され、パートナーシップが始まったのでした。
【足りない開設資金】
場所は無償で提供いただけるのは嬉しかったのですが、いかんせん、改装費の補助はありません。認可保育所だったら、8割近く初期費用を補助してくれるのに、障害児保育園の初期費用を補助してくれる仕組みは、世の中にないんです!なんて不条理!!
そこで金策に駆け回ります。数千万円単位の大きなお金。なかなか出してくれる人もいません。しかし待っている子どもたちはいっぱい・・・。どうしよう。
そんな時に手を差し伸べてくれたのが、村上綾さんが立ち上げた「村上財団」( https://murakamizaidan.jp/ )です。
村上綾さんご自身が働く母親であることから、女性と子どもたちを支援するミッションを持っていらっしゃり、ヘレンの障害児とその親たちを助ける、という志に共鳴してくださいました。
さらに、NPOはお金を借りづらいのが常ですが、地元飯田橋の信用金庫、西武信金さんが資金を貸してくださいました。
改装は何とかなりそうだ、と。でも車はどうしよう、と。
【送迎用の福祉車両】
障害児保育園ヘレンでは、送迎を行います。医療的ケアがあったり、重度の障害があると、移動も一苦労です。送迎車による送迎があると移動の負担が減りますし、何より遠くからも通えます。
しかし福祉車両というのは、車椅子が入れる仕様だったりして、一般車よりも値段が張ります。自家用車だったら絶対買えないくらいの値段です。
車どうしよう!そんな時に、被災地支援事業「ふくしまインドアパーク」からご一緒していた合同会社西友さんからの、助けの手が。西友さんがヘレンのラッピングをした福祉車両をご寄付くださったのです。
もう、西友さん以外で生鮮食品は買わないぞ。そう誓った瞬間でした。
【充実した設備】
がっつりリフォームできたお陰で、非常に良い施設にすることができました。なんといっても広く、定員15名に150平米という、一人当たり面積でいうと大変贅沢なつくり。
音や光、香り等の感覚を総合的に体験できる療育グッズ、スヌーズレンも完備しています。
【一時保育施設併設でインクルーシブな保育】
今回特徴的なのが、「一時保育室カムパネルラ」がヘレンの隣にあること。
健常児の子どもたちが毎日やってきますが、その子たちがヘレンの子どもたちと、共に遊び、アクティビティを行なっていくことで、インクルーシブな保育環境も実現できることを期待しています。
【喜びの声】
世田谷区に住んでいて、保育園入園を断られてしまったルイくん(世田谷区からヘレン荻窪園に通っていた)のママが、今回のヘレン経堂の開園について語ってくれました。
(埋め込みができず、こちらのリンクから動画をご覧ください)
【障害児保育園の広がりと課題】
保坂区長が本気出してくれたように、各区の首長や担当職員の方が「うちの区にも障害児保育園をつくろう!」と空き施設や空き物件を提供いただければ、ヘレンを広げていくことはできます。
そして、保坂区長が2通のメールで動いたように、当事者の方々の切なる声は、変化を生み出すことが十分にできるのです。
しかし課題もあります。認可保育園では初期補助がでるのに、障害児保育園では出ません。
こうした状況が、障害児保育園が広がっていく時に、大きなハードルとして立ちはだかります。
国会議員の方々、あるいは都議会議員の方々、こういう状況を知ってください。
そして、健常児がいく保育所と差をつけず、障害児保育園の初期整備補助の仕組みも整えて頂けたら、と思います。
これからもフローレンスは進んでいきます。いつか「え、医ケア児が保育園入れなかった時代なんて、あったんだ!?」と驚かれる時代を創っていくために。
*障害児保育園ヘレンを応援したい人はこちら
(2016年12月21日「駒崎弘樹公式サイト」より転載)