2017年にはぶっ壊したい、こどもの貧困を生みだす日本の5つの仕組みとは

大昔のバカげた制度を直してくれ、と声を大にして言いたいです。

今日から仕事始めの人もいるでしょう。今日は、新年始まったことですし、もうそろそろいい加減に今年こそはぶっ壊したい、この日本の不条理を紹介します。ムカつきますが、ご注意くださいね。どうぞっ!

生活保護家庭の子どもは大学に行っちゃダメ

憲法でうたう「健康で文化的な最低限度の生活」を過ごすため、我々には生活保護というセーフティネットを頼る権利があります。例えば病気や怪我などで働けなくなってしまって、実家も頼れない時。働いても賃金が低すぎて、とても家族を養えない時。役所に言って相談すれば、我々は支援を受けることができます。

こうした「最後のセーフティネット」と言われる生活保護ですが、重大なバグがあります。それは、生活保護家庭の子どもたちは、大学進学できない、というものです。

昔は大学に行くことがある種の特殊な、ともすれば贅沢なことだったので、税金を使ってそこまでは、ということだったのでしょう。しかし現在では、安定した仕事につき、貧困の連鎖から抜け出すためには、大学進学という道は非常に有効です。

にも関わらず、国が貧困の再生産を強化するような政策を、いまだにとり続けているのは、バカバカしいにもほどがあります。

少し正確に述べますと、生活保護を受けていても、「世帯分離」と言って、進学する子どもだけ世帯から外してしまうことで、その子は大学に進学することはできます。確かに抜け穴はあります。

けれど、世帯分離した分だけ、生活保護費は数万円減ります。すると、進学した子どもはその分をアルバイト等で稼がなくてはなりません。削減された保護費と、そして学費や生活費のために勉強する時間を削らざるを得ない、生活保護家庭の子どもたち。こんな不公平はあるでしょうか。

「子どもの貧困をなんとかしたい」って政府が言ってるんだったら、寄付金とか集めてないで、こういう大昔のバカげた制度を直してくれ、と声を大にして言いたいです。

妊娠したら高校退学させられる

全国の高校において、妊娠した場合、退学させるというルールになっています。例えば、岩手県教育委員会の制定する『岩手県立高等学校の管理運営に関する規則』の中には、懲戒規定があり、具体的事例表を定めています。 その中には性的暴行(レイプ)と並んで、妊娠を退学処分としています。(出典:「第189回国会 予算委員会 においての泉健太議員による妊娠退学についての質問」 http://bit.ly/2hPdHDP

え、ちょっと待って待って。レイプと妊娠って、なんで同列? しかも、妊娠「させた」方じゃなくて、「妊娠」「した」方を、ですよ。

ありえんでしょう。

また、京都の高校では、妊娠した生徒にハードな体育実技を要求して、できないなら休学しろ、と「勧めた」事例もありました。(「妊娠中の高3女子生徒に体育の授業を要求 京都の高校、休学勧める」 産経新聞 http://bit.ly/2hPj5Xm )

これ、高校生で妊娠した女の子が、退学させられて、その後どういう人生歩まないといけなくなるか、想像つきますか?

ほぼ99%、妊娠させた方の男はバックれます。女の子はシングルマザーとして、働きながら子どもを育てていきますが、高校中退で安定した仕事につける確率は相当低くなります

当然貧困化するリスクが上がり、子どもに教育投資できず、子どももまた貧困化していく可能性が高まります

学校が貧困を生み出しているじゃないか!

あまりにもおかしいので、知り合いの文科省の官僚に聞いたんです。そしたら、

「駒崎さん、実は、『妊娠退学』の統計もないんですよ。各都道府県の教育委員会、そして各学校の校長に任せているのですが、彼らは『自主退学』として処理しているようなんです。ですから、妊娠退学が存在している、という公的な証拠はないんです」ということでした。

おいおいおい。本来だったら、妊娠した生徒にこそ、スクールソーシャルワーカーが寄り添って、なんなら保育もしっかりつけて、むしろなんとか高校は卒業してもらわないとダメなんじゃないんですか。学校は教育機関で、福祉は関係ないです、って、それで良いんですか。

全国の教育関係者の皆さん、この状況を放置していて、良いんですか?

低所得のひとり親に出される給付金支給が4カ月に1回

低所得のひとり親には、児童扶養手当という給付金が支給されます。

月最大で4万2000円、子ども2人目は1万円というわずかなものですが、これがひとり親家庭のライフラインになっています。

さて、この児童扶養手当、役所から振り込まれるのが、4カ月に1回なんです。

4カ月に1回! それで途中、カツカツにならずにやっていけるかって?

やっていけないんですよ。3カ月目の最後の方はもうほとんど手持ちのお金がなくて、でもガス代は払わないといけなくて、しょうがないから消費者金融や闇金に借りてしのいで、そうすると利子がすごいことになって、雪だるま式に借金が増えて、破綻して行く、と。

そうやってにっちもさっちも行かずに、県営団地を立ち退きさせられるその日に、中1の娘を運動会のハチマキで母親が首を絞めて殺した事件が銚子市でありました。

「4カ月分計画的に使えば、なんの問題もないじゃないですか」

役所の人は言います。そういう役人の人には、「あなたの給与の支払いを4カ月に1度にしてもなんの問題もないんですよね?」と問いたい。

厚労省さん、年金が2カ月に1回、生活保護は毎月支給なんだから、児童扶養手当も毎月支給にしてください。

そんなこともしないで、マイナンバーとか言ってんな、と。

義務教育でも金がかかりすぎ

娘がもうすぐ小学校1年生なんですが、びっくりしましたよ。ランドセル、高いんですよね。7万とか、高いやつは10万とかするんですよ。最低ラインでも、3万円代。

それ以外でも、絵の具とか、習字道具とか、体操着とか色々あるんですよ。ちなみに、中学行ったら制服とか買うんですが、これも3万〜7万円くらいするんですね。

おいおい、義務教育って、無料じゃなかったんですかね? 貧富の差なく、誰しも平等に学べることで、身分の固定化を防ぎ、誰しも生まれに関係なく活躍できる社会をつくろう、ってのが義務教育の理念じゃなかったんですかね?

しかもなんですか。習字道具って、この「すずり」って何で新品じゃないとダメなんですかね。別に石だし。6年生が使い終わったやつ、学校で回収して洗って、1年生にあげれば良いんじゃないですか?

あと、何ですか、この「学校指定」って。何で学校指定の文房具屋で買わないとダメなんですか? これって、地元の文房具屋への、制服だったら洋品店への公共事業ですよね? その公共事業を、なんで子育て世帯の財布から出さないといけないんですかね?

まず、ランドセルは選択制にしましょうよ。別に6年間ずっと使わなくて良いし。体の成長に合わせて、安いリュックとかナップザックを買い換えれば良いんだし。僕の留学していたアメリカはそういう仕組みで、誰も困ってなかったです。多分世界中でランドセル使ってるの、日本くらいじゃないですかね。

あと、制服も高すぎでしょ。イギリスだと民間アパレルメーカーが価格競争してくれて500円台のものもあるそうです。(出典:朝日新聞「学校の制服、価格競争進む英国 セットで500円台も」 http://bit.ly/2iG3IjD」)

でも、そうあるべきでしょ。何で何万もするんですか。しかも地元の洋品店を延命させるために。

義務教育なんだから、教育関連費も無償にしましょう

参考:「制服の価格、安くするには 東京都、業者の独占にメス」 http://www.asahi.com/articles/ASJBP1CTPJBNUPQJ00W.html

医療的ケア児は普通に学校に行けない

鼻からチューブを入れたり、気管切開をしている「医療的ケア児」。こうした障害のある子達が特別支援学校に行こうとすると、「親が同伴で付いてきてくれたら、通学できますよ」と言われます。

親は学校で教育を受けさせたいと思うので、仕方なく一緒に通学します。そして教室の端っこで、6時間座って待っています。待機児童ならぬ、「待機親」です。

当然仕事は辞めざるを得ません。だいたいの場合、母親が辞めます。共働き家庭は、片働きになり、収入は激減します。医療的ケア児家庭は、公共交通機関での移動がしづらいため、車を持たなくてはなりません。そうした費用も家計を圧迫します。

ひとり親だったら、生活保護しか道はありません。医療的ケア児の介護に心身ともに負担がかかるのに、我々の社会は更に経済的にも追い打ちをかけているのです。

これって、学校に訪問看護師が行けるようにして、親の代わりに医療的ケアをしてあげれば、ある程度解決する話なんです。でも、訪問看護は健康保険法っていう法律で「居宅(家)だけ」って決められてるんで、それができない、っていう話なんです。

バカげてます。法律ができた時に、医ケア児を想定されてなかったわけで。そこは変えていきましょうよ。障害児家庭をわざわざ貧困化させて、誰が得するんでしょうか

参考)

「安倍総理に「医療的ケア児が普通に学校に行ける」ようにお願いしました」 

「「医ケア児も親同伴なしで学校に!」記者会見がNHKニュースで取り上げられました! 」 http://bit.ly/2i836zQ

以上、2017年にはぶっ壊したい、貧困を生み出す日本の5つの仕組みでした。人がつくった仕組みは、人が変えられる。「いいかげん、変えようぜ!」っていう声が高まれば。みんなで声をあげていきましょう。

(2017年1月4日「駒崎弘樹公式サイト」より転載)

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