総務省に組織された研究会「クラウド等を活用した地域ICT投資の促進に関する検討会」が、2015年7月末に報告書を発表した。地域の小規模事業者等が生産性・収益性を向上させるために、情報通信、特にクラウドの活用を勧める内容で、もっともな提案であった。
地域活性化に情報通信を利用する方法には、報告書の範囲の内外に多くの方法がある。いくつかを紹介しよう。
地域で後押しする:ふるさと納税に対する「お礼の品」の多くは、その地域の特産品である。それまで知らなかった製品であっても、自治体に対する信用で、お礼の品リストにあれば食指が動く。東京には数多くのアンテナショップがあるが、自治体を信用して、来訪者の多くが品物を購入する。それでは、アンテナショップのオンライン販売ではどうだろうか。たとえば、熊本県のアンテナショップにはオンライン販売サイトがあるが、福岡県にはないというように、まちまちである。自治体による地元企業への信用付与の役割を、オンライン販売では果たしていないとすれば、もったいない。
企業同士で連携する:企業が連合して新製品を開発したり、製造関連装置を共同使用したりすれば、生産性と収益性が向上する可能性がある。酒蔵などが互いに協力しているジャパン・フード&リカー・アライアンス(JFLA)は、特定地域に閉じた活動ではないが、よい実例である。文部科学省・経済産業省・農林水産省が共同で推進する全国イノベーション推進機関ネットワークは、産業クラスターの創生を目標としており、地域内で企業同士の連携を促進しようというものだ。この活動はハイテクに重心が置かれているが、JFLAのように、特にハイテクでなくても企業連携には可能性がある。
企業内で利用する:総務省研究会が取り上げたクラウド利用が、企業内での情報通信の利用の典型例である。研究会に参加したセールスフォースドットコムは、クラウドの活用で業績を向上させた企業の実例をビデオで公開している。飼育している牛の管理に利用した例、旅館が接客管理に利用した例などは興味深い。報告書によれば、クラウドサービスの利用率は小規模事業者で7.1%、中規模事業者で11.0%にとどまっているそうで、拡大の余地が大きい。
個人で働く:ウェブデザイナー、翻訳家などの個人事業主はネットを利用すれば、地方に住んだままで東京の仕事を受注できる可能性がある。このサービスを提供している企業の代表例がクラウドワークスである。同社に登録している個人事業主とクライアントは、2014年9月期で22万を超えたという。営業収益も、毎期10倍弱と、著しく増加している。各地域で定住促進事業が展開されているが、多くは農林水産業への従事が想定されている。これに加えて、地域独特のよさを個人事業主に訴え、呼び込むのがよい。
情報通信を利用すれば、自治体が地元企業を後押しすることも、個人で働くこともできる。まだまだ拡大の余地があり、自治体も施策として取り上げてほしい。最後に宣伝。情報通信政策フォーラム(ICPF)では、クラウドワークスの吉田浩一郎代表取締役をお招きして、12月18日にセミナーを開催する。ぜひ、参加していただきたい。