行政事業レビューで予算執行を点検した

政府全体としても、各府省単位でも、全体を俯瞰して重点的に予算を配分するという視点が求められる。
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平成27年度春の行政事業レビュー(行政事業総点検)公開プロセスが実施されている。僕は、財務省と警察庁の公開プロセスに外部有識者として参加した。財務省での対象事業は官庁会計システムと普通財産管理処分経費で、警察庁では災害に備えた道路交通環境の整備と警察用船舶の整備についてレビューした。四つの事業は無関係のように見えるが、議論する中から、政府における予算執行にかかわる問題点が見えてきた。

水上パトロール・水難者の捜索・水上犯罪の取り締まりなどのために、警察用船舶159隻が全国に配備されている。警察用船舶は都道府県警の要求を基準に配備されており、警察庁が主導的に優先付けしているというわけではなかった。都道府県警からの要求に基づく配分という方法は、災害に備えた道路交通環境の整備、すなわち、信号機への非常用電源の配備についても同様であった。

また、予算規模の妥当性を知りたかったので、海上保安庁・国土交通省などと比較しての、船舶調達価格の妥当性について、僕は事前に質問した。警察庁は他府省に電話で問い合わせたのち、低額であると回答してきた。財務省の官庁会計システムは、すべての府省で、会計処理のために利用されているシステムである。これを利用すれば、船舶の調達価格を他府省と比較するなど容易にできるはずだと考えたのだが、実は官庁会計システムにはそのような機能はなく、単に支払い事務を府省にまたがって処理しているだけだそうだ。だから、警察庁は電話をしたのである。

同じような物品の調達価格を府省横断で比較したり、各府省からの発注総額を業者ごとに集計して分析したりといった機能は備わっていない。それでは、予算を効率的に使用する責任は誰にあるのか質問したところ、配分された予算それぞれについて各府省が責任を持っているという回答が戻ってきた。裏返せば、政府全体として予算を効率的に使用するということが、まだできていないのだ。

府省横断での比較分析機能などは、官庁会計システムという事業の範囲外であるという姿勢を、財務省は崩さなかった。しかし、このように機能が限定されている官庁会計システムは見直しが必要と僕は考える。同様に、予算執行を任された警察庁が、都道府県警の要求をベースに警察用船舶や信号機への非常用電源の配備を進めているというのもおかしなことだ。政府全体としても、各府省単位でも、全体を俯瞰して重点的に予算を配分するという視点が求められる。これは政治の責任に他ならない。

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