行政改革推進会議が秋の行政事業レビューを実施しているが、外部有識者として参加した初日の状況についてはすでに記事を書いた。2日目にあたる11月14日の総務省・文部科学省案件も担当したので、何が議論され、どんな結論となったか報告しよう。
対象は、両省が推進するICTを活用した教育学習の振興に関する事業で、具体的には、フューチャースクール推進事業と学びのイノベーション事業を指す。世界のトレンドを見れば、教育学習にICTを利活用するのはもはや当たり前であり、フューチャースクールというような形での実証実験は省略して前に進めと考えているくらい、ぼくは積極派である。デジタル教育などとんでもない、という論調には真っ向から対抗してきた。
それゆえ、今年度で終了するフューチャースクール・学びのイノベーションで、きちんと効果が示されるはずと信じていたのだが、ぼくの期待は裏切られた。11月12日には稲田朋美規制改革担当大臣と都内の小学校を事前視察したが、せっかく配備された電子黒板・タブレットなどを活用できていない状況を見学しただけに終わった。ましてや、導入効果など評価されてさえいない。文部科学省の提出したレビューシートには成果目標の欄に「本事業では、ICTを活用した教育により、基礎的・基本的な知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力等や主体的に学習に取り組む態度等の育成を目指しており、具体的かつ定量的な指標・目標の設定は困難である」と堂々と書かれていた。
基礎的・基本的な知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力などが、具体的・定量的に評価できないなど、聞いたことがない。自動車運転免許試験では基礎的・基本的な知識・技能の習得度を試験している。算数・数学の思考力検定をうたう民間団体が存在し、検定結果で入学試験が優遇されるようになっている。
行政事業レビューでは、外部有識者からの厳しい発言が続いた。「今の事業の成果・効果と課題を明らかにしないで、規模を拡大して次期計画をたてるべきではない。」「初等中等教育局が、学習指導要領の改訂までを展望して、事業を主体的に進めるべきである。」「そもそもICTを用いた教育とは、今までの教育にちょっとICTを入れるというのではなく、ボーダレス・グローバルな環境での全く新たな教育である。」......
行政事業レビューの結論は、ICT環境の整備についてはコスト抑制に関する成果指標などを取り入れたうえで、国民にわかりやすい工程表を作るべきというものであった。教育での利活用については、教える側がICTを活用できない・教育委員会が理解していない状況での規模拡大はすべきではない、というものであった。
推進派である僕としては残念至極な結論だが、足を止めるのもやむを得ない。ちなみに、訪問調査でわかったのだが、韓国ではデジタル教科書のモデル校が2010年の132校から、11年には63校に一気に半減したことがある。この機会に、文部科学省は教育の情報化についてきちんと将来目標を設定し、それに向かって段階を踏んで進むように、事業を根本から見直すべきだ。