最初に、これまで、みんなの党を支持して頂いた方に対してお詫びを申し上げたい。末席にて活動する所属議員として、政策を第一に考えて職責を果たしてきたが、自信を持って提示している政策を掲げながら、別のところで騒動が起きる現実に目をむけず、有権者の皆様に申し訳ない気持ちでいるのが正直なところだ。
議員としてこれまで私は、議会の出席は皆様の声を県政に届ける最も重要な役目と思い、何があっても出席し、言うべきことは正々堂々と──を心掛けてきた。それを破ることは有権者への一番の裏切りと思っている。今はそれだけを強調したい。
他にも、諸々語りたいことはあるが、私が語るよりも、まずは、水野賢一幹事長の意見を読んで欲しい。ブログから抜粋して紹介する。
参議院議員 水野 賢一
◆みんなの党の路線問題
みんなの党が進むべき路線について議論が激しくなっている。路線については大きく分ければ以下の三つの考え方にまとめられるだろう。
①現政権と協力・連携していく。最終的には与党入りして政策の実現を図っていく
②他の野党と協力・連携して自公政権に対抗しうるだけの勢力を作っていく
③与党とも他の野党とも一線を画し独立独歩で進む
別の言葉を使うならば、
①の路線・・・「与党再編路線」
②の路線・・・「野党再編路線」
③の路線・・・「自力更生路線」または「独立独歩路線」
と言い換えても良いかもしれない。
私自身も現在、みんなの党の幹事長という立場におり、こうした路線問題とは無関係ではいられない。これまでの経緯や人間関係、政策理念なども複雑に絡み合う問題なので、去来する思いはいろいろとあるが、結論を言えば私は②の路線しかないと思っている。
◆与党再編は筋が通っているか
まず①の「与党再編」について考えてみたい。この路線については、私は筋としても間違っており、実現性もないと考えているが、その理由を述べておきたい。
そもそも「与党再編」とは何を意味するのだろうか。その主張を要約すればだいたいこんなところだろう。
"政党の使命は政策実現にある。政策を実現するためには現政権と対話をして政策提言をしていくべきだ。現在、自民党は参議院で単独過半数に7議席足りない。幸いみんなの党は参議院に12議席を有している。つまりみんなの党はキャスティングボートを握っているとも言える。だからこの立場を生かして自民党に働きかけを強めれば政策も実現できる。そして最終的には閣外協力・閣内協力に進んでいけばよい。自民党が現在の連立パートナーである公明党を切り捨てるかどうかは分からないが、みんなの党も連立パートナーに加わればよい"
この考えの冒頭の「政党の使命は政策実現にある」ということには私も何の異論もない。しかし野党が政策を実現する方法というのは、選挙で与党を打ち破り、自らが政権を獲った上で実現するというのが議会制民主主義の大原則のはずだ。選挙の洗礼を経ないままいつのまにか与党化して政策実現に努めるというのは、有権者に説明がつかないものであり根本的なところで間違っている。
みんなの党がかねて掲げていたのは「クロス連合」のはずである。政策ごとに組む相手を選ぶというものだった。これならば分かる。しかし組む相手を最初から安倍政権と決めてしまうのではクロス連合でさえなくなってしまう。
◆与党再編に現実味はあるか
与党再編は果たして実現可能な方針なのかという疑問もある。つまり現実味があるのかという話である。現状は自民党・公明党の与党が衆参両院の過半数を完全に制している。衆議院は自民党単独で過半数を大きく超えている。確かに参議院は自民党単独では過半数に達していないが、20議席の公明党と連立を組むことで与党としては過半数を確保している。
参議院の定数 242
参議院の過半数 121
自民党 114
公明党 20
注)参議院議員に現在欠員はおらず、議長は投票しないため121が過半数となる。
ねじれ国会ならばいざ知らず、こうした安定した状況の下、与党側がすき好んで再編する理由はどこにもない。時には自民党と公明党の関係がぎくしゃくすることはあるかもしれないが、だからといって連立解消という可能性は現実味に乏しい。
そうした中でみんなの党が参議院の議席数を背景に政策実現を自民党安倍政権に迫ったとしても、たいした果実を得られるとは思えない。現に今年に入ってからの安倍政権の動きを見ても、私たちが提案した公務員制度改革法案や議員歳費カット法案などを一顧だにしていない。公務員制度改革法案に関して言えば野党時代の自民党は我が党案を全面的に受け入れ、法案を共同提出までしていた。にもかかわらず政権復帰後は、同じ我が党案(つまり野党時代の自民党が共同提出した案)を否決する側に回っているのである。
要は与党再編論というのは、原則論からしても筋が通らないし、現実味もない。もっとも私も与党に対して政策を提言すること自体には異論はない。「みんなの党は何でも反対の野党ではなく、対案を示すことができる野党だ」という姿を示すことは必要なことだとも思う。その点で、政策提言は政権側に対しても他の野党に対しても積極的にすべきだと思っている。しかし根本の方針をゆるがせにしてはならない。根本の方針とは次の選挙で現与党を打ち倒して政権を奪取することであり、それによって政策実現を図るということである。政策提言は大いにしていくべきだが、それは政権へのすり寄りを意味するものであってはならない。
◆単独で小選挙区で勝てるか
さて選挙で与党を打ち破ると言っても、みんなの党単独で勝てるならばそれに越したことはないが、事はそれほど簡単ではない。この点は、精神論だけでなく客観状況もわきまえないといけないだろう。小選挙区制というのは明らかに二大勢力に有利な仕組みである。小選挙区制度の是非については様々な議論があろうが、現実にその制度が衆議院で採用されているのは事実である。もちろん衆議院選は単純小選挙区制ではなく比例代表制との並立制であり、中小政党に一定の配慮もなされてはいるが、あくまでも一定の配慮にすぎない。
前回の総選挙でみんなの党は解散時の7議席から18議席へと勢力を伸ばした。とはいえ300小選挙区のうちみんなの党が制したのは4選挙区のみである(比例区で14議席獲得したので合計で18議席)。第三極以下の政党が、小選挙区で勝ち抜いていくというのは至難の業なのである。
小選挙区制度が衆議院に導入されてからすでに6回の総選挙が実施されてきた。その中で、300小選挙区のうち二大政党以外が獲得した最高記録はいくつだろうか。答えは小選挙区制が導入されて最初の総選挙(1996年)の民主党の17選挙区である。この時点での二大勢力は自民党と新進党だったが、第三極とも言うべき民主党(旧民主党)が17小選挙区を制し、比例区と合わせて52議席を確保した。
以下に過去6回の衆議院選挙で、小選挙区で勝利した政党の上位三傑までを示した。いずれの選挙も小選挙区の数は300だったが、第三位以下の政党が小選挙区で勝利することの難しさが分かるだろう。なお()の内は比例区と合計した獲得議席数である。
1996年総選挙
①自民党 169(239)
②新進党 96(156)
③民主党 17( 52)
2000年総選挙
①自民党 177(233)
②民主党 80(127)
③公明党 7( 31)
保守党 7( 7)
2003年総選挙
①自民党 168(237)
②民主党 105(177)
③公明党 9( 34)
2005年総選挙
①自民党 219(296)
②民主党 52(113)
③公明党 8( 31)
2009年総選挙
①民主党 221(308)
②自民党 64(119)
③社民党 3( 7)
国民新党 3( 3)
2012年総選挙
①自民党 237(294)
②民主党 27( 57)
③維新の会 14( 54)
注)以上の順位は小選挙区での獲得議席の順位のため比例を合計した順位は変わってくる。例えば2009年総選挙で公明党は小選挙区ゼロだったが比例で21議席を獲得しているため合計数では社民党や国民新党よりも多かった。
こうした前例を見てみると、第三極の政党が二桁の小選挙区を制するのは極めて困難だということが分かる。一方で、衆議院で50議席台に乗せるには小選挙区で15前後の議席を得ないと難しいことも分かる。細々とした小政党として存在するならばともかく政策実現に資するだけの影響力を持つ政党に成長しようとすれば二桁以上の小選挙区で勝利したいところである。
残念ながらみんなの党の現状を見れば、単独でそれだけの小選挙区で勝利を得ることは、どう見ても無理である。それどころか候補者擁立さえ困難になってくる。与党にも組さず、野党連携とも一線を画したまま単独で国政選挙を迎えるという選択肢は私にはないように思われる。
◆野党再編について
以上のように書いてくると「与党再編も駄目。独立独歩も駄目。だから野党再編しかない」という具合に消去法で野党再編論を言っているように聞こえるかもしれないが、必ずしもそうではない。
健全な民主主義を発展させるためにも「一強多弱」と呼ばれる政治状況を打破することには積極的な意味があると思う。第二次安倍政権発足後の2013年、2014年のみんなの党の運動方針にも「数をたのんだ暴走にはしっかりと歯止めをかけ」と明記してある。
もちろん「自民党の暴走を抑える」という軸だけで結集するのでは、野合と言われても仕方ないだろう。共通項は非自民というだけで、政策や理念がバラバラというのでは困る。一般論で言えば、幅広い政治勢力を結集していけば政策や理念の幅も広くならざるをえない。一方、政策や理念をとことん一致させようとすれば、幅広い結集もできなくなる。こうした二律背反の関係にあるので、難しい問題に見えるが、現に野党に身を置いて、様々な協議の渦中にいる立場からすると、着地点を見いだすことは十分可能だろうというのが実感である。
もちろん非自民であれば何でも良いというわけではなく、提携しようもない勢力もあるだろう。共産党、社民党のように社会主義的な施策を打ち出す政党とは理念が違うと言わざるを得ない。次世代の党も国家社会主義的な色彩が強すぎる上に、彼らは自民党と連携を模索するのかもしれない。すべての政党について論評することは差し控えるし、ここで具体的に「どの党とどの時期に提携するのか」「提携の度合いはどの程度なのか」を断言することも難しい。しかし野党第一党の民主党やまもなく結成される維新の党の動向には注意を払っていくべきだろう。とりわけ衆参両院で野党第一党である民主党の動きこそ鍵になってくるので、そこをよく見極めながら進んでいく必要があると思う。
◆政治における「妥協」とは
僭越な言い方であることを承知の上で言えば、みんなの党が結党以来掲げてきた政策や理念は野党結集の軸になりうるものだと思っている。そうは言っても私たちが掲げてきた政策(アジェンダ)を細部に至るまでそのまま固執するというのでは話が進まないこともあるだろう。実際に自民党に対抗する勢力を結集していくには妥協も必要になってくる。
妥協というと"足して2で割る"のような印象を持ち、旧来型の政治手法だと考える人もいるかもしれない。しかし必ずしも妥協を否定的に捉えるべきではないと思う。「妥協」にあたる英語はcompromiseだが、その語源はcom(共同の)とpromise(約束)である。お互いに歩み寄って共に約束するということである。
政治の世界において自説をただ振りまわすだけならば誰にでもできる。優れた政治家というのは自らの信念や理念は堅持しつつも相手と信頼関係を築いて約束事をまとめられる人物のことだと思う。自分自身への自戒を込めながら言えば、現在野党に身を置く者としては、新しい政治状況を切り拓くためにそうした歴史的妥協をするだけの決断力と胆力が必要だと思っている。