武久洋三・日本慢性期医療協会長
日本慢性期医療協会(武久洋三会長)はこのほど、医師を配置しない病院内施設の創設案をまとめ、記者会見で発表した。施設長は所定の研修を受けた看護師とし、看護職員の配置も介護療養型医療施設より少なくすることで"割安感"を打ち出した。2018年度の介護報酬、診療報酬同時改定での実現を視野に入れ、厚生労働省の療養病床の検討会で提案する予定だ。
今後、都道府県が病床を計画的に減らしていくことを踏まえ、入院患者のいない空き部屋を施設として活用する。精神科病棟を居住施設に転換する考えと似通う。特別養護老人ホームとの違いを見せるため、看取りの安心感をアピールする。
特養ホーム、老人保健施設、認知症グループホームなどにとっては、介護報酬を奪いあう居住系サービスの"ライバル"となる可能性がある。
介護保険の適用される介護療養型医療施設(今年3月現在6万3000床)は、17年度末に廃止になる予定。しかし、医師の配置が必要な老健施設への転換は進んでいない。
会見で武久会長は「空き部屋を廃虚にする手はない。新施設は医師の配置はないが、院内にのみ設けるものなので、何かあれば別病棟から医師が駆け付けられる。家族は安心だ」と話した。
新施設は入所者100人当たり看護職員の配置基準が13人、介護職員が17人。看護職員は介護療養型医療施設(同18人)より少ないが、特別養護老人ホーム(同3人)よりは多い。人件費は介護療養型医療施設の半分で済み、特養ホームとほぼ同じという。
新施設を介護保険施設とするか、住宅扱いとして看護や介護を外付けサービスとするかは未定。基準上の居室面積は特養ホームよりも狭いため、入所者が負担する居住費も特養ホームより低く抑える意向だ。
厚労省は10日、「療養病床の在り方等に関する検討会」(座長=遠藤久夫・学習院大教授)を発足。従来の病床や施設の類型にとらわれない検討が必要だとし、年内に報告書をまとめる予定だ。
日本慢性期医療協会は、9月に開催予定の同検討会で新施設の創設を提案する。
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