あかちゃんの持ち出し袋作ってみた 防災のプロもチェック

色々なシチュエーションを想定して、必要なものを持ち歩く。日頃からやっていることだと思うと、防災が急に身近なものに感じられてきました。

あかちゃんの防災を考える (上)

あかちゃんの持ち出し袋って何入れるの?とにかく一回作ってみた

取材協力:神戸市消防局 市民防災総合センター

     研究担当 澤田邦彦さん

(中) あかちゃんの家庭備蓄品、何をどれだけ?プロに聞いてみた

(下) あかちゃんの液体ミルク、アメリカから個人輸入してみた

は、後日配信予定です。

こんにちは。乳児用液体ミルクプロジェクト末永です。

東日本大震災から5年が経ちます。

この時期になると当時の記憶や感情も鮮明になり、店に防災品のコーナーができたりテレビで特集があったりもして、にわかに高まる防災への意識。

でも、あかちゃんの持ち出し品や備蓄品に関しては、いくらあっても足りない気もするし、突き詰めて考える前に日々の生活に追われ、モヤモヤしたままではないでしょうか。

そこで、実際にあかちゃんとママ用の持ち出し袋を詰めてみて、感覚をつかんでみよう!という企画です。

ダウンロードできるリストもありますので、ぜひ参考にしてみてください。

あかちゃんのものを多めに!

悩んでいても始まらないので、防災のプロに教えてもらいましょう。

神戸市消防局 市民防災総合センターの研究担当、澤田邦彦さんにお話を伺います。

末永: あかちゃんと家にいたら災害が起きたのでとるものもとりあえず避難する、という想定で持ち出し袋を作ってみます。いちから準備する場合、なにをどう準備すれば良いでしょうか?

澤田さん: はい。持ち出し袋の基本的な考え方として、「避難するのに必要なもの」と、「避難先での待機に必要になるもの」を入れます。

避難先で使うものに関しては、避難所に最低限の備えはある場合も多いのですが、あかちゃん用品に関しては準備されている可能性が大人のものに比べて低いため、あかちゃんのものを多めに準備するのが良いと思います(ミルク、オムツなど)。

また、持ち出し袋の重量としては、女性は10kgまでが目安です(男性は15kg)。ただ、あかちゃんを連れて避難する場合はあかちゃん分の重量もあるため、詰めてみたらいったんあかちゃんを抱っこした状態で背負ってみて、重すぎて機敏に動けなさそうだと思ったら荷物を減らして軽く調整しましょう。両手が空くよう、リュックでまとめてください。

末永: ありがとうございます。では、いろいろなサイトやリストを参考に、詰めてみます。

― 1週間後 ―

末永: 準備出来ました! どどーん。

ママ用:

あかちゃん用:

マザーズバッグ:

リュックに詰めた図と、マザーズバッグも合わせた図:

末永: 意外に軽く、持ち出し袋で6kg弱、普通のリュックに収まりました。

ただ、普段マザーズバッグに入れっぱなしにしているものは、リュックの中には入らず、追加で持つ感じになりました。リュックにベビーカー用の荷物フックを付けて下げてみました。歩いてみると揺れが気になるので、むしろ普通に肩から下げるほうがいいかもしれませんが...。

ちなみにマザーズバッグは水を入れなければ1kgくらい、魔法瓶とペットボトルも入れると2kg強です。

詰めていて気づいたのですが、マザーズバッグってこれ自体がちょっとした持ち出し袋ですね。

色々なシチュエーションを想定して、必要なものを持ち歩く。日頃からやっていることだと思うと、防災が急に身近なものに感じられてきました。

「お前はすでに備えている」という某神拳伝承者の声が聞こえた気がします。「備えあれば一片の悔い無し」という某世紀末覇者の声も...。

澤田さん: え、は、はい...(世代ギャップで伝わらなかった様子)。

マザーズバッグにひとまとめになっているあかちゃんグッズをパッと持ち出せるのは良い案だと思います。ただ、迅速に避難できるよう、すぐに持てるものだけを持って出発するのが良いと思います。

理想を言えば、もう少し大きめのリュックにマザーズバッグもまるごと入れば、さらに良いですね。

では、1つずつ見ていきましょう。

ママ用:

【避難に必要なもの】 

軍手1組

マスク4枚

ケミカルライト2本 

   ※折ると発光する棒。 購入例:ルミカライト 200円前後

    ボタン電池の誤飲防止で、電池入替えが必要なヘッドライトは避ける

ホイッスル1個

これらはすぐに取り出せるように、リュックの外ポケットに。

ケミカルライトは手で持たず、フック部分をホイッスルの紐などにかけて手を空けよう

澤田さん: ケミカルライトは使ったことが無くコメントできませんが、明るくないようだと意味がないので、暗がりで足元が見える明るさのものを準備してください。

【避難中の備え】 

水  500ml x 2本

非常食3食分 

    食べやすく、味も好きなもの。 購入例:カロリーメイト 200円前後

大判ハンカチ 2~3枚

消毒ジェル 1個(携帯用)

携帯トイレ 2回分

あかちゃん用品のスペース確保のため、最小限にとどめています。

余裕があるなら、水と非常食を増やし、救急セットなどを追加しよう

【避難所で使うものなど】 

常備薬 3日分 

    処方してもらったら新しいものに差し替える習慣をつけよう

下着/ライナー/生理用品 3日分 

    避難所に無い事が多いため、必要最低限だけ入れておこう

ケータイ充電コード 1個 

    機種変更で増えたら一つを持ち出し袋へ。量販店でも買えます

発電ライト&ラジオ 1個 

    スマートフォン対応の充電機能付きのものを。

    購入例:アイリスオーヤマ約3000円

ビニール袋 大2 小6

エマージェンシーブランケット 2枚(ママ用、あかちゃん用) 

身分証コピー/連絡先/預貯金メモ 

    やればすぐに終わるので日を決めて一気にやろう

女性の生活用品に関しては、避難所に置いていない場合が多いそうです。産後は骨盤がまだゆるいため、吸水ライナーが安心。下着は干す可能性も考えて、下着に見えにくいTシャツ地の地味なものを(無印で買おう)

澤田さん: 服用している薬など、各個人で絶対に必要な物は、避難所では入手が困難であるため、優先的に入れるようにしてください。

発電ラジオは避難所に1つあればどうにかなるため、お母さんがあかちゃんを抱っこして避難する場合、重かったり大きかったりするので割愛しても良いと思います。

また、袋の中身とは別に、避難の際には頭を守るヘルメットが必要です。自転車に乗るようなら自転車用、なければ避難用ヘルメットを持ち出し袋と一緒に準備しておいてくださいね。

末永: そうなんですね!世紀末覇者ヘルメット、どっかで売ってないかな~。

澤田さん: ......。

あかちゃん用:

【持ち出し袋】 

ミルク(携帯用)16回分

    3日分弱。購入例:ほほえみキューブ16本入 約1600円

使い捨て哺乳びん6回分 

    1日分。購入例:ステリボトル5本 約1500円、Chu-bo1本 約300円

水 500ml x 3本 1日分。200ml x 6回

カイロ 6個  

    水を温めたり、あかちゃんが寒いときの保温に

オムツ 20枚 3日分

おしりふき1パック

澤田: 災害発生直後の避難所内では、火災予防の観点から、火気の使用を制限している場合が多いため、燃料があったとしても、避難所での哺乳びんの消毒・洗浄はかなり困難になります。従って、月齢の小さなあかちゃんがおられる家庭は、哺乳びんの衛生面に対する工夫が必要になります。

末永: なるほど。使い捨て哺乳びん必須ですね。さらに洗浄できる環境がある場合に備えて普通の哺乳びんと、「ミルトン」などの煮沸の要らない消毒薬剤も入れるのが良さそうですね。

追加:哺乳びん、消毒薬剤(月齢の低いあかちゃん用)

【マザーズバッグ】

ミルク1回分

哺乳びん1本 普段家で使うもの

離乳食1回分

ガーゼ2~3枚

授乳ケープ1枚

ウエットティッシュ1パック(携帯用)

着替え1~2組

オムツ4枚

おしりふき1パック

母子手帳

おもちゃ1~2個

おくるみ

澤田さん: マザーズバッグについては、パッと持ってすぐに避難できるなら良いのですが、これを探したり中身をそろえるのに時間がかかって避難が遅れるようでは本末転倒です。

心配であれば、持ち出し袋に哺乳びん、母子手帳の主要ページのコピー、おくるみ・ケープ代わりに薄手のストールを入れておくなどして、持ち出し袋だけを持っていくように決めておくのもいいかもしれません。

末永: 確かに、出がけにあれも持ってこれも持って...と探すのは、寝起きだとバグって思考停止を招くかもしれませんね。念のため、哺乳びんとストールだけ、持ち出しリストに追加しようと思います。マザーズバッグは、持って出られたらラッキー、と考えておきます。

持ち出し袋だけで6kg、マザーズバッグも持つと7kgと、これだけだとすこし軽めに思いますが、我が家の12kgの子をだっこしてリュックとバッグを持ったところ、だいぶ重いなと感じました。長時間は走れません。

さらに、あかちゃんのほかにも上の子がいる場合は、その分の水と非常食も持ち出し袋に入れますよね。そうすると持ち出し袋だけで9kgくらいになると思います。

基本はこれくらい身軽にしておくほうが、家庭の状況に合わせてアレンジしやすく、避難時も動きやすい気がしました。

家にあるものからつめ始めることが大事

澤田さん: 災害への備えは、各ご家庭の住環境や家族構成などによってもさまざまです。

まずは、ご自身の住んでおられる地域に、どのような災害が想定されるのかを調べ、その場合はどこに避難するのかを具体的に話し合ってみることで、より良い災害への「備え」ができるのではないでしょうか

末永: 澤田さん、ありがとうございました。

いろいろ専門的なものをそろえなければ...と思っていましたが、ホームセンターでラジオ・ブランケット・携帯トイレを買ったほかは、ほとんどが家にあるかスーパーやドラッグストアで買えるものでした。使い捨て哺乳びんはあかちゃんホンポで買いましたが、無ければ普通の哺乳びんを1本と、あとは紙コップでも良いのかなとも思いました。

私自身、つめ始めてみたら、買い物に行ったときにそういえばアレを...と、意識が防災品に向くようになったのが、自分でも意外なポイントでした。

とにかく先回しにしないで、家にあるものからつめ始めてしまい、モノと一緒にアタマも意識も、整理するのがよいと思いました。

これを読んだかたも、ぜひ、初めから全部そろえずに、気軽に家にあるものを点検するところから始めてみてください。

(この記事は、乳児用液体ミルクプロジェクトのFacebookページから加筆し、転載しました)

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