全3回の連続コラム、最終回の第3回は、「初めての方に伝えたい、寄付をする際に気を付けたい3つのこと」をまとめたい。
◆寄付先の特性を理解し、共感できる先への寄付を
1つめは、「お金がどう使われるのか、考えて寄付すること」である。
第1回のコラムで述べたように、義援金・支援金にはそれぞれ特徴やメリット・デメリットがある。義援金には公平・公正さという良さがある半面、スピード感に欠ける。支援金には柔軟性やスピード感がある半面、どちらかというと特定のニーズに対して資金を提供することになる。こうした違いを理解した上で、自分が共感できる先に寄付を行うことが重要だ。
◆息の長い関心を
2つめは、「息長く、関心を持ち続けること」ことである。
一般論で恐縮だが、義援金は最初の1週間に多数の寄付者が現れ、1カ月を過ぎると急激に注目度が減少すると言われている。やはり報道量に左右されるのだろう。しかし大規模災害から1カ月で日常生活に戻ることは考えにくい。復旧・復興に向けた息の長い取組みが求められる中で、寄付をきっかけに、寄付先の団体や地域について関心を持ち続ける。それは単に「お金をあげる‐貰う」という関係を越えて、被災地に住むひとりひとりと、そうでない地域に住む我々とが繋がるきっかけにもなるだろう。
◆支援の現状や結果報告は十分か?
3つめは、「支援の結果や現状報告に注目すること」である。
もしあなたの寄付しようと考えている団体が、東日本大震災や中越地震、和歌山で発生した水害などでも支援活動を行っているならば、その活動結果はウェブサイトやブログ、SNSに掲載されているだろうか。あるいは震災という緊急時ではなく、ごく日常的な活動状況の発信は、目に見える形で行われているだろうか。
確認するためには、まず団体のウェブサイトを検索するだけでも助けになるだろう。SNSのアカウントをチェックするのも良い。Facebookの団体あるいは投稿の「いいね!」の数はどの程度あるか?更新頻度は十分か?といった点もひとつのバロメーターにはなり得る。
もう一歩踏み込んで確認したければ、所轄庁に提出した資料を確認しよう。NPO法人であれば内閣府のポータルサイトから無料で検索することが出来る。所轄庁に提出した資料は全て確認することが可能だ。決算関連の書類は読み慣れないと難しく感じるかもしれない。事業報告も紋切り型に見えるだろう。しかしこうしたサービスを使い、まずはきちんと書類が提出されているかだけでも確認できる、ということは知恵の一つとして覚えておきたい。
◆緊急時だから産まれる新しい団体も。
もちろん、災害直後に産まれた新しい団体も世の中には存在する。複数の団体が非常時に結集して新しい名前を冠し活動するケースもあるだろう。そしてそうした団体ほど報告が後手に回りがちなのも事実だ。こうしたケースを一律に怪しいと決めつける必要もない。寄付とは本来自由なものだ。寄付者が信念をもって寄付をすればよい。
しかし多様な人々に支えられる団体であればこそ、活動報告を大切にしているということは、筆者が日々実感していることでもある。「寄付を預かることの重さ」を理解している団体は、活動報告もきちんと行っている。
またもしこの記事をお読み頂いている方の中で、震災を機に新たな団体を立ち上げた、という方がいたならば、まずはFacebookでのアカウント登録を、あるいは日本財団が提供している公益ポータルサイトCANPANや、一般に存在する民間のブログサービスを使った活動情報の発信を強くお勧めしたい。スマートフォンで写真を取り、ひと言コメントを添えて日々UPするだけでも良い。お金をかけずに出来ることはたくさんある。
◆利他はめぐって己を助ける。だからこそより良い利他を。
最後に、そうした団体に寄付をすることは、誠実に活動している団体を応援し、伸ばすことに繋がる。そしてそれは結果的には、私たち自身が大規模災害に見舞われた時(いや、災害に限らず、病気や怪我、失業といった、今の日本にはありふれていて、しかし直面すればシビアなセーフティネットの穴に落ち込んだ時に)、私たち自身を助けることになる。
"利他"はめぐりめぐって自分に戻ってくる。であればより良い"利他"を追求しながら、被災地の明日へ向けてのチャレンジを応援しようではないか。
(2016年6月14日「サーチ・ナウ | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング」より転載)