もっか全世界でブームを巻き起こして任天堂株も大きく上昇させているスマホ向けARゲーム『Pokemon GO』ですが、精神医学の専門家がうつ病などメンタルヘルスの不調の改善に効果があると指摘しています。ゲームプレイのために外に出て歩き、人々とやり取りすることが心身ともにいい影響を与えているとのこと。
John Grohol博士はテクノロジーが人の行動やメンタルヘルスに及ばす影響についての専門家であり、過去20年にわたってネット上での人々の行動を研究してきた人物です。博士はメンタルヘルスSNS「Psych Central」の創設者でもあり、不安神経症やうつ病などの最新の治療法も熟知しているそうです。
Grohol博士によれば、『Pokemon GO』がメンタルヘルスの改善に及ぼす効果はかつて前例がないとのこと。Twitterには『Pokemon GO』のおかげで外出でき、友達や見知らぬ人とのやり取りが楽になったと喜びの声が溢れていますが、これがメンタル不調と取り組む第一歩になるとか。うつ病のときはモチベーションがないも同然で、新鮮な空気を吸ったりシャワーを浴びたり考えることさえ難しい。そこでゲームが強い動機づけになるわけです。
Grohol博士いわく、運動が精神状態にいい影響を与える事実は20年前から確認されているとのこと。運動すればするほど症状が軽くなり、精神療法や薬物治療できないときは、特に効果が高いと述べられています。しかも『Pokemon GO』のために歩き回れば体重も減り、健康な体作りができます。カラダにいいことは心にもいいということ。
アメリカでは年間、約4,380万人が精神の不調を抱えており、これは成人5人のうち一人に当たる高い割合です。自殺予防団体のTake Thisによれば、ゲームはそうした人々を引き寄せてコミュニティに結びつける(同団体は孤独でいることが自殺の危険を高めると主張)のに役立っているとか。
Take Thisの創設者Russ Pitts氏は、高学歴でテクノロジーに詳しい人ほど精神の不調につき助けを求めず、一人で抱え込んでしまうと語っています。彼らは精神分野にも知識があるため、自力で解決しようとする。しかしうまく行かないとのこと。
とはいえ、過信は禁物だとGrohol博士は釘を刺しています。確かに家を出て軽い運動をしたり他人と会ったりする動機づけにはなるが、決してメンタルヘルスの専門家の代わりにはならないと。ゲームは深刻な精神不調をそれだけで治療できるとは考えないほうがいい、あくまで精神療法や服薬の助けに留まると博士は語っています。
任天堂の健康分野への進出は、故・岩田聡元社長の掲げた新戦略の一つでしたが、眠りや疲労を測る端末は今年2月に「任天堂の製品として出すレベルにはない」として延期が発表されました。あくまで副次的な効果とはいえ、やはり岩田氏の悲願の一つだった『Pokemon GO』が心身両面での健康につながれば、故人の「すべての人が笑顔になるためにはどうすれば良いか」に一つ近づけるのかもしれません。