太陽系最大の惑星、木星にはわりと頻繁に小天体の衝突が発生します。ただ、木星に小天体が飛び込む様子をリアルタイムにとらえた映像には、なかなかお目にかかれるものではありません。
ところが、3月17日に発生した木星への小惑星の衝突は、地上から2人のアマチュア天文家がビデオ映像でとらえていました。
3月17日の木星へのインパクト映像を公開したのはオーストリアとアイルランドのアマチュア天文家。両者とも木星表面に小惑星が衝突し、光を発したところを映し出しています。
映像を最初に公開したのはオーストリアの天文家でした。YouTubeにアップロードしたこの映像は20cmクラスの望遠鏡で撮影されていたもののやや見難く、衝突の瞬間もちらっと光が見える程度。このため見ようによっては加工した映像のようにも見えてしまいます。
遅れること2日、こんどはアイルランドのアマチュア天文家がおなじ時に撮影した衝突の映像をYouTubeに公開しました。この映像は28cmクラスの望遠鏡を使用して木星を撮影している時に写ったもので、木星のまわりにある衛星エウロパ、ガニメデ、イオやそれらが木星に落とす影もはっきりと見えます。そして、木星の向かって右側の稜線の部分に小惑星衝突の際の光が映ります。
衝突の前にタイムラプス加工した映像が追加されています
木星の見た目の表面はガスで覆われているため、そこに地表はありません。ではなぜ木星の表面に小惑星が飛び込んだ瞬間、発光したように見えるのでしょうか。
3月17日に木星に飛び込んだ小惑星のサイズは、大きくて数百フィート(200~300m)程度と推測されます。slate.com の解説によれば、地球に比べ重力の大きな木星に小惑星が飛び込むとき、その速度は小天体が地球に落下する場合の約5倍に達するとされます。
そしてそのような高速で木星の大気(ガス)に飛び込んだ際の衝撃は、まるで壁に激突するようなものになると考えられ、小天体は大気によって激しく加熱されます。このような現象により、小惑星は木星の表面に飛び込んで約1~2秒で爆発し、燃え尽きてしてしまうとのこと。
ちなみに、2013年にロシア・チェリャビンスクに落下した隕石の大きさは約19mで、爆発のエネルギーはTNT爆弾50万トン分とも言われました。3月17日に木星に飛び込んだ小惑星のの爆発は、大雑把にみてチェリャビンスクの25倍ぐらいのエネルギーと予測されます。地球からはちらっと見えただけの光でも、実際はとてつもない規模の爆発だったと考えられます。
(2016年3月30日 Engadget日本版「木星に小惑星が衝突、瞬間映像の撮影にアマチュア天文家2人が成功。爆発エネルギーは露チェリャビンスク隕石比25倍」より転載)
【関連記事】