米 Amazon.com が昨年12月、客が実際に注文する前から商品を発送する「投機的出荷」Anticipatory shipping 手法の米国特許を取得していたことが分かりました。
買うか決める前にもう発送されている、と聞くと、アマゾンの「おすすめ」のとなりに「どうせ買うから発送済み」や「保存、布教コミで3個ポチっといてやったぜ」が並んでいるところを想像してしまいますが、実際に買うかどうかの判断はまだ(かろうじて)客の側にあります。
アマゾンが特許を取得したのは、注文される確率の高い商品を「おすすめ」のようなアルゴリズムで特定し、あらかじめ梱包して中間地点まで動かしておく際の手法。ユーザーが実店舗が買うかアマゾンで買うか検討する際、価格と並んで大きな要素である「届くまでの期間」をできるだけ短縮することが目的です。
買い物をするとき、アマゾンで買えば楽だけれど、今すぐ欲しいから交通費と時間をかけてでも買いにゆく!や、ネットのほうが安いけれど一週間も待つのはなあ、といった状況はよくありますが、アマゾンはある意味バクチで梱包と中間ハブまでの移動を済ませて、「買うならもうすぐそこまで来てるけどどうするよ?」とユーザーに迫る構えです。
とはいえ、予測に基づいてあらかじめ用意しておく投機的手法といえば、コンピュータのプロセッサやネットワークアルゴリズムの例を持ち出すまでもなく、「売れ筋は多めに仕入れる」レベルでどんな商売でも常識的に取り入れています。
アマゾンも当たり前の思いつきだけで特許を取得したというわけでもなく、この「売れそうな場所に動かしておく」を実際に導入する際に発生するさまざまな課題について、注文履歴や検索履歴を使ったアルゴリズムの応用や、中間地点まで発送して途中で最終的な送り先を追加する方法など、ロジスティクス的な項目を並べたことが意義のようです。
Amazon.com といえば、商用インターネットの曙から着々と手を打ち、単なるネット通販ではない巨大な流通帝国かつクラウドサービス企業に成長しただけでなく、「いつかは実現する未来」だった電子書籍を当たり前の日常にしてしまうなど、まるで未来を予測したようなビジョンに基づく経営で成功してきました。
最近の未来的な取り組みといえば、小型の無人飛行体(いわゆるドローン)を使った運送 Amazon Prime Air なども記憶に新しいところ。ネットで欲しい物を見つけたときにはすでにアマゾンのドローンが商品をぶら下げて浮かんでいたり、まだ知らない商品についてまだ成立していない法律に基づく単純所持の虞犯者として追われるようなときめきの未来もすぐ実現してくれそうです。
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(2014年1月20日Engadget日本版「アマゾン、客が買う前から商品を発送する「投機的出荷」の特許を取得」より転載)