風疹(ふうしん)は子供がかかる病気でしょうか? ー YES
ところで、麻疹(はしか)、おたふく、水痘(水ぼうそう)などの感染症は、なぜ子供がかかるのでしょう?
感染症は、病原体なしに自然発生的には罹りませんから、誰かからウイルスをもらう必要があります。
赤ちゃんの頃は、おもに親や祖父母など家族と過ごしますから、感染する機会は「通常」まれです。
家族以外の人と濃厚な接触が始まる保育園や幼稚園、小学校低学年の時期に感染することが多いです。
これらのウイルス感染症は、基本的には終生免疫が得られるので、二度罹りしません。
免疫がなければ誰でも罹りうるのだけど、はじめて感染した時だけ発病するので、結果的に「子供時代に済んでしまう」病気となります。
これらのウイルスは感染力が強いだけでなく毒性も強く、麻疹は脳炎や肺炎を合併し、数年経ってから SSPE という不治の脳炎を起こすこともあります。水痘も脳炎と肺炎を起こしますし、皮膚の水疱から細菌感染することもあります。おたふくは無菌性髄膜炎や難聴などの深刻な合併症を起こします。風疹は、感染しても本人の症状は強くありませんが、妊婦が感染すると胎児に先天性風疹症候群(CRS)と呼ばれる脳や心臓、耳や目の永続的な障害を起こします。
幸いワクチンが開発されており、1歳になったら定期接種のMR(麻疹・風疹混合)、水痘と、任意接種だけどおたふくかぜワクチンを接種し、小学校に上がる前に2回目の接種を受け、感染症から身を守ることが推奨されています。
さて、話を風疹に戻します。ワクチンが効果的なので、いま子供の風疹は多くありません。
実は、風疹の多くは成人が、とくに昔にワクチンを受けていなかった人が罹っているのです。
下図は、今年(2016年)に風疹と診断された人の年齢分布です。
、、です。
賢明な読者はお気づきと思います。いま風疹患者の多くは、妊娠する年齢の女性、またはパートナーが妊娠する年齢の男性が占めているのです。ですから、風疹の患者自体は多くなくとも、風疹の毒性が存分に発揮されやすい人が重点的に風疹に罹っている状況なのです。
過去に風疹ワクチンを2回受けていることが確実、ないし血液検査で免疫があることが確認できている人以外は、ワクチン接種を受けましょう。
(2016年6月13日 「ナビタスクリニックへようこそ」より転載)