サイボウズ式:定時後の「何かお手伝いすることありますか?」は必要ない

「残業=有害」という認識は、健全な会社をつくる上でも必要です。社員がみんな残業ばかりしているという会社は、危機感をもたなければなりません。

【サイボウズ式編集部より】

この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズ外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回は、日野瑛太郎さんによる「定時終了後の仕事の進め方」について。

言うまでもないことですが、残業は嫌なものです。

残業をするとそれだけ疲れますし、プライベートの予定も圧迫されます。あまりにもひどくなると、睡眠時間まで削られます。残業が常態化してしまうとチーム内の雰囲気も悪化し、仕事の能率にも影響するようになります。残業は、百害あって一利なしです。

できることなら、残業などしないに越したことはありません。では、残業をしないためにはどうすればいいのでしょうか?今日はその方法について考えてみたいと思います。

「チーム全員の仕事が終わるまで帰らない」をまずやめろ

実は残業の原因は「自分の仕事が終わらない」だけではありません。

「自分の仕事は終わったけど、他の人がまだ仕事をしているから帰りづらい」という理由で発生する残業もかなりあります。いわゆる「つきあい残業」です。

つきあい残業が発生する背景には「自分の仕事が終わったからといって、先に帰るやつは自分勝手で協調性がない」という思想があります。よく言えば「助け合い」、悪く言えば「道連れ」です。

本コラムのテーマである「チームワーク」という観点から考えると、「自分の仕事が終わったら他の人の仕事を手伝う」のは一見正しい姿勢のように見えますが、実際には誤りです。ここでチームワークを強調しすぎると、「チーム全員の仕事が終わるまで誰も帰ってはいけない」という結論に結びつき、つきあい残業を大量に産んでしまいます。

むしろ、大事なのは「他の人が残業していても、自分の仕事が終わったらさっさと帰ってよい」というルールをチーム内に敷くことです。そもそも、他人に一緒に残ってもらったところで、手伝ってもらえる仕事ばかりではありません。効率の悪い「つきあい」を要求するよりも、「自分より先に帰る人がいても、笑顔で送り出す」ことのほうが、チームを円滑に運営するためには重要です。

社会人マナー本などには、帰る前には「何かお手伝いすることありますか?」と声をかけてから帰れという話が載ってますが、そんな気づかいは不要です。自分の仕事が終わったら、さっさと家に帰りましょう。

ヘルプは朝に出せ

帰る前の気づかいは不要だと書きましたが、チームで一切助け合いをするなと言いたいわけではありません。それではチームで仕事をする意味がなくなってしまいます。仕事の量が見積もりに反して多いであるとか、何らかのトラブルに巻き込まれたというのであれば、積極的にチームメンバーにヘルプを求めるべきです。

その際には、「業務時間後」ではなく「朝」にお願いするとよいでしょう。夜になってから急にヘルプを頼まれると残業になりますが、朝の段階であれば業務時間内に手を打てます。

そのためのきっかけとして、短時間でよいので(むしろ、長くなるならやめるべきです)「朝会」を行うことをおすすめします。

朝会では昨日やったこと、今日やること、問題点を各自毎日共有し、ヘルプが必要ならこの場で求めることとします。問題について深い議論を朝会で交わしてはいけません。

「◯◯さん、??で悩んでいるので、あとで相談にのってください」

といったような「ヘルプのきっかけ」にとどめておくべきです。「ヘルプそのもの」は別の時間で、人数を限定してやらないと時間の無駄になります。

また、朝会で「私の今日の仕事は◯◯です」と表明することは、「今日は◯◯という仕事をします」というコミット(宣言)でもあります。コミットした仕事はチームのために責任をもってやり遂げる必要がありますが、コミットした仕事さえしっかりと終えればその日はもう帰ってもいいということにもなります。こうやって仕事にコミットすることも、無駄な「つきあい残業」をなくすために有効です。

適材適所に仕事を分配する

つきあい残業をチームのルールレベルで禁止し、ヘルプも業務時間中に出せる体制を敷いたのに、それでも毎日残業がなくならないというのであれば、ここでようやく「仕事の効率」を見直すことになります。

仕事の効率を高める細かな仕事術は巷で色んなものが紹介されていますが、大前提としてやらなければならないのは適材適所に仕事を分配することです。

人は誰でも、得意な仕事や不得意な仕事があります。同じ仕事であっても、AさんがやるのとBさんがやるのとでは全然かかる時間が違うというのは普通です。新人育成やスケジュールに余裕があるなどの特殊事情がない限り、仕事は各自が一番パフォーマンスを発揮しやすいものを割り当てるように心がける必要があります。これを徹底するだけでも、チームとしてのアウトプットの効率は高まります。

もっとも、「得意な人に振る」ことばかり考えていると、能力が高い特定の人にばかり仕事が集中し、その人がいつも残業になるという悲惨な事態を招くのでそこは適宜調整する必要があります。ここでうまいアサインができるかどうかが、リーダーや上司の腕の見せどころです。

アサインは最初に決めたものがすべてというわけではありません。仕事を進めていく中でさらに効率がよい仕事の割り当てが見つかるならば、最初のものに固執せずに柔軟に組み替えていくべきです。

残業は会社のためにもならない

冒頭にも書きましたが、残業は、百害あって一利なしです。

残業は個人やチームのためにもならないばかりか、会社のためにもなりません。残業代の分だけ人件費は高騰しますし(サービス残業をさせればいいという意見は、もちろん論外です)、長時間労働が常態化している会社に優秀な人は入社しません。人材の質も、製品の質も下がっていきます。

「残業=有害」という認識は、健全な会社をつくる上でも必要です。社員がみんな残業ばかりしているという会社は、危機感をもたなければなりません。

日野瑛太郎さんより

普段は「脱社畜ブログ」というブログで、日本人の働き方の記事を書いています。このブロガーズ・コラムでは、チームワークという観点から働き方について新たな視点を提供できればと思っています。

(サイボウズ式 2014年7月22日の掲載記事「定時後の「何かお手伝いすることありますか?」は必要ない」より転載しました)

イラスト:マツナガエイコ

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