米国疾病予防医療センター(CDC)からリベリアへ派遣され、政府のエボラ対策をサポートした日本人女性医師の「エボラ体験記」。
現在西アフリカの国々を中心に生じている史上最大規模のエボラウイルス病。中でもリベリア、シエラレオネ、ギニアの3カ国が最大の症例数を報告している。
私は2014年7月から米国疾病予防医療センター(CDC)での勤務を開始し、9月から1カ月間リベリアへ赴任した。その時の経験をふまえ、赴任時の現地の様子と米国国内の動きなどを共有したい。
本病は「エボラ出血熱」と記載されることが多いが、必ずしも出血症状を伴うわけではないことから「エボラウイルス病」とも呼ばれる。本文中では「エボラ」と表記する。
現在私は、Epidemic Intelligence Service(EIS)というCDCの実地疫学専門家養成プログラムに所属している。プログラム開始後1カ月間は同級生とともにトレーニングを受け、その後それぞれの所属先に移動するのだが、私が派遣の通知を受けたのは所属先に移動して1カ月も経たない時だった。
今回のように感染の広がりが大きく、対応が長期に渡ることが予想される場合は、CDC内に対策本部が設けられ、さまざまな部署から交代で人が駆り出される。私たちも例外ではなく、通知を受けて慌ただしく準備が進められ、派遣が決まった。
CDCは疫学のエキスパート集団を名乗っていることもあり、現地では患者ケアではなく、医療施設や地域での感染管理、データ管理、ヘルスコミュニケーションの他、リベリア政府のエボラ対策サポートを主な業務としていた(9月当時)。
首都モンロビアにCDC を含め多くの団体が拠点を置いていたが、赴任当時の9月初頭はそれ以外の郡に関してはまだ状況が把握しきれていなかった。そこで私たちはリベリアにある15郡にそれぞれ単独で赴任し、現状把握と郡のエボラ対策の支援を行うことが業務として課せられた。
私が拠点としたのは、首都から車で2時間程のマージビ郡だった。主要な道路が通っており、首都から他の郡に移動する人々の経由地点になっている地域である。そのような背景もあってか、エボラ患者の報告数は多く、人口あたりではリベリアで一番であった。
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プロフィール
小林 美和子(感染症内科)
世界何処でも通じる感染症科医という夢を掲げて、日本での研修終了後、アメリカでの留学生活を開始。ニューヨークでの内科研修、チーフレジデントを経て、米国疾病予防センター(CDC)の近接するアメリカ南部の都市で感染症科フェローシップを行う。その後WHOカンボジアオフィス勤務を経て再度アトランタに舞い戻り、2014年7月より米国CDCにてEISオフィサーとしての勤務を開始。