フォルクスワーゲン(VW)のディーゼル排ガス不正問題は、米国だけの話ではない。ディーゼル・エンジンがはるかに普及している欧州では、この問題によって現行の新欧州ドライビングサイクル(NEDC)による排出ガス検査に対する批判が厳しくなっている。既知のとおり、現在の検査法では実際に路上を走行する際に排出される窒素酸化物(NOx)量を正確に測定できているわけではないからだ。この問題は、多くの自動車メーカーに影響を及ぼしているようだ。
英国の大手一般紙『Guardian』は、自動車の燃費や排出ガスの解析を専門とする英Emissions Analytics社が、実路走行から得た実際の測定値について報じている。今回行った最新のテストで、メルセデス・ベンツ、ホンダ、マツダ、三菱の車両から、基準値を大きく上回るNOxが排出されていたことが判明。同紙はまた、ルノー、日産、ヒュンダイ、フィアット、ボルボ、ジープ、シトロエン、VW、アウディも同様の結果だったと書いている。平均すると、排出ガスに含まれるNOxの量は基準値の4倍以上に達していたという(テストは最新のEURO6をクリアしているモデルと、旧型のEURO5に適応したモデルの双方を使って行われた)。
しかし、これらの自動車メーカーは、「ディフィート・デバイス(無効化装置)」を搭載していたVWとは異なり、不正を働いていたわけでない。他メーカー製の車両は、NEDCの施設内で行う試験では基準をクリアしており、その結果と実際に路上を走行した際の数値が掛け離れていたということだ(日本版編集者補足:JC08モード燃費といわゆる実燃費に少なからず差があるのと同様とも言えます)。Emissions Analytics社は、「米国で明らかになったVWの不正事件は、EU内の類似問題、つまり"合法"車両による過剰な排ガス問題に光を当てるきっかけとなったに過ぎない」とGuardian紙に語っている。
近い将来、この問題の今後を決める大きな戦いが待ち受けていると予測される。欧州の自動車メーカーは、新たに導入予定のより厳しい汚染物質排出基準をクリアできないと主張し、規制緩和を求めている。一方で、メルセデスとホンダは、Guardian紙の取材に対し、より厳しい規制の導入に賛成の意を表明したという。
一部の欧州政府は、このスキャンダルが明るみに出る以前から、ディーゼル車の優遇政策は誤りだったと発言していた。今回の検査結果によって、ディーゼルの未来にはさらなる黒煙、ではなく黒雲が垂れ込めそうだ。
By Chris Bruce (News Source: The Guardian)
翻訳:日本映像翻訳アカデミー
(2015年10月14日「英国の調査会社が、ホンダ、マツダ、三菱、メルセデスのディーゼル車の排出ガスを測定」より転載)