スリランカの孤児施設で暮らす子どもたちを絵を通じたコミュニケーションで応援したい

絵の具は、あえて4色という限られた色しか用意していない。自分の手の中にある絵の具でどんな色でも自ら作り出せることを知ってほしいからだ。

クラウドファンディングサイトA-portに挑戦中の森田さやかさん

■自分の可能性に限界はないことに気づいてほしい

一枚の大きな紙の上に、大勢の子どもたちが一斉に絵を描いていく。画材は4色の絵の具とクレヨン。

楽しく作品を完成させていくなかで、人の気持ちを大事にすること、お互いがつながり尊重し合える関係を築くことの大切さを学んでいく。そして何よりも、自分の可能性に限界はないことに気づいていく。森田さやかさんは、そんな体験を世界の貧困地域の子ども達に提供する活動をしている。

昨年7月、スリランカで初めて「世界あおぞらお絵かき」を開いた。「SHINAGAWA BEACH」というリゾートホテルの従業員の子どもたちに向けたイベントだった。

「最初は自分の決めた範囲の中でしか絵を描こうとしない子どもたちがいました。最初は見守り、次にちょっとした仕草などで「範囲を越えてもいいんだよ」と伝え続けると、少しずつ自分の決めた範囲を越えて絵を描いてくれるようになり、次第に隣の子の絵とくっついていく。そんな風に"自分の枠を出る"様子を見ているうちに、子どもたちの心の中の変化を感じることができました」

A-portより

絵の具は、あえて4色という限られた色しか用意していない。自分の手の中にある絵の具でどんな色でも自ら作り出せることを知ってほしいからだ。

「私たちは、自分はどうせこの程度のことしかできないなどと、無意識に自分で自分の限界を作ってしまうもの。でも、未来を生きる子どもたちには限界は自分で超えられるものだと感じてほしい。このプロジェクトにはそんな意味があることに気づかされました」

A-portより

森田さんが「自分が楽しいからやりたい」と思って始めたプロジェクトだったが、実際に子どもたちの変化を見ることで、「世界あおぞらお絵かき」の持つ大きな可能性を感じることができたという。

子どもたちに今の自分の可能性に気づいてほしい。夢を持ってもいいんだと気づいてほしい。そんな方向性が明確となり、スリランカのビアガマ、フィリピンと、「世界あおぞらお絵かき」は回を重ねた。

■原点は絵を通じた母とのコミュニケーション

森田さんは、小学校二年生から高校三年生までお絵かき教室に通っていた。近所の女性が開いている自由な教室で、空間、人、環境すべてを含めて大好きだったという。

「教室があった日は、母は仕事から帰宅すると荷物も置かずコートも着たままの姿で、一番に『今日は何を描いたの?』と熱心に話を聞いてくれました。そんな母との絵を通じたコミュニケーションを通じて、自分に関心を持ってくれていることを感じることができました」

この母娘のコミュニケーションが森田さんの原点なのだという。

将来は教育関係の仕事に就きたいと、大学では教育を学んだ。だが、教育実習でいろいろなレベルの子がいる教室で画一的な内容を教えざるをえない現実を前に、「私のやりたいことはここじゃない」と思った。

卒業後は、大学で教授補佐として学校の授業内容の企画や提案、大学生向けの講義など教育関連の仕事や法律事務所の仕事に従事。その後、友人の教員が心の病をわずらったことをきっかけに、先生達を元気にしていく必要性を感じ、文部科学省に入ろうと一念発起。働きながら公務員受験の学校にも通った。

「でも、試験の時に面接官に『ここで40年働くことになりますが、何をしたいですか?』と聞かれた瞬間、『自分はここにはいたくない』と気づいてしまったんです」

自分が知らず知らずのうちに、社会的立場や親からの期待に縛られていたことを痛感し、心の中が真っ白になった。茫然自失の状態で過ごした後、ゼロから自分の本当にやりたい仕事を探そうとしたという。

3年前の夏、代々木公園に出かけ、「一緒に絵を描かない?」と、そこにいた子どもたちを誘ってみた。土地柄もあって外国人の子どもたちが集まって来てくれた。言葉が通じない分、一緒に絵と同じポーズをとったりしながらコミュニケーションを楽しんだ。

そして、確信した。

「これが私のやりたかったことだ!」と。

その話を友人にしたところ、「世界中でやったらどう?」と言われた。

「そのとき、私も夢を持っていいのかなと思ったんです。そして、周囲に夢を話してみたところ、縁あってスリランカで『世界あおぞらお絵かき』を開催することができたんです」

■多くの人の支援が子どもたちの力になる

4回目となる「世界あおぞらお絵かき」は、スリランカのビアガマの孤児施設で開く予定だ。

この施設には、親の暴力や家庭の経済状況で独りになってしまった子どもたちが20人ほど生活している。親がいないことで、自分の未来が思い描けにくくなっている子どもたちに、絵を通じて将来を考える体験をさせてあげたいのだという。

開催する資金をクラウドファウンディングサイト「A-port」で募集している。(2016.5.9 目標金額100%に到達)

クラウドファウンディングという手段を選んだ理由は、応援する人は多ければ多いほど良いと信じているからだ。3回目の「世界あおぞらお絵かき」をフィリピンで行う際、子ども達へのクリスマスプレゼント用に文房具や画材の寄附をインターネット経由で募集したところ、想像を超える数が集まった。御礼のメールをすると、「私の方こそありがとう」「応援できることがうれしい」というメールが多数寄せられたという。

「支援はみんなでやることに大きな意味がある。物や活動には人の気持ちや思いが乗る。支援を受けた子どもたちにとっても、これだけ多くの日本人が自分たちのことを応援してくれていると感じることは大きな力になると思うんです」

A-portより

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