ユニセックスで使えそうなネックレスにブレスレット。ピアスにカフスもある。横浜市の町工場とデザイナーがタッグを組んで生み出したアクセサリーだ。
その名も「スプリング・ジュエリー」。スプリングとは、「バネ」のこと。そう、これらのアクセサリーは小さなバネを組み合わせてできているのだ。バネだから、もちろんフィット感抜群。無意識に、つい触れてしまう気持ちよさがある。アクセサリーといえば繊細で壊れやすいものも多いが、バネだから、衝撃を受けても壊れない。
ブランドの立ち上げを目指してクラウドファンディングサイト「A-port」で資金を募っている。支援者には、支援金額に応じたアクセサリーがリターン(特典)として贈られるのが魅力だ。
横浜市瀬谷区のバネ製造会社、五光発條の村井秀敏社長は「町工場発のバネのアクセサリーが有名になり、いつか、レディー・ガガさんやきゃりーぱみゅぱみゅさんに身に着けてもらいたい」と話している。
「熱いです!」応援コメント続々
A-portでは150万円の目標調達額に対し、4月10日現在、56万円が集まっている。支援者からはこんなメッセージも。
町工場から、ファッション革命。熱いです!応援しています。がんばってください!
村井社長に惚れています。応援させていただきます!
父は生前町工場を経営していました。(中略)応援しない理由がありません。何よりアクセサリーが気に入りました。特にピアス素敵です
バネという工業製品の魅力
子供のころ、ノック式のボールペンを解体したことがある人は多いはずだ。内部の軸に巻かれているバネを見て、「へぇ、ボールペンの芯はバネの力で出たり引っ込んだりするんだ」と思った人もいるのではないだろうか。バネは実は、生活のあちこちに入り込んでいる。ベッドのマットレスに入っているスプリング、自転車のサスペンションはバネの力がわかりやすい例だが、テレビや冷蔵庫、カメラなどの電化製品や自動車など、私たちの気づかないところで、バネはあらゆる工業製品に使われている。バネ自体の精密さが製品の性能を左右する。
1971(昭和46)年に村井社長の父が創業した五光発條。工場で育った村井社長は幼いころからバネに触れ、その伸縮性やさわり心地に魅了された。バネ好きが高じて、バネをつなげる「コネクター」という部品を開発し、バネを大量に組み合わせてフィギュアや帽子、ネクタイをつくってみたこともある。
「工業製品の内側で活躍してきたバネを、いつか表舞台に立たせたいと思ってきたんです」
逆境をバネに
2ミリ以下の精密なバネの製造を得意とする五光発條。ゴマの粒より小さいバネも作っている。工場にはバネ製造の機械が並ぶ。1本の細い針金をぐるぐると巻いてカットし、続々とバネが作られていく。作業服姿の社員が精度を厳しくチェックする。
町工場は苦境に立たされている。安い労働力を生かした安価な製品が海外からどんどん入ってきているうえ、2008年のリーマンショック以降、景気は低迷。2010年に社長になった村井さんには、2011年の東日本大震災に続き、タイに立ち上げた工場が同年の大洪水で浸水するといった災難が降りかかった。国内売り上げはピーク時の半分に落ち込んだという。「いま、ものづくりは何重もの苦しみに遭っています。今こそ、僕たちの存在を知ってもらい、価値ある商品を作らないと」と村井さん。
デザインとの出会い
バネの活用法を模索していたところ、昨年、プロダクトデザインなどを手がけるデザイナー西村拓紀さんと、造形アーティストの志喜屋徹さんに出会い、アクセサリーの提案を受けた。2人は日本の町工場をデザインやアートの力で支援する取り組み「JUMP UP JAPAN」プロジェクトのメンバーで、プロジェクトの第1弾としてスプリングジュエリーを考案した。
バネの素材はステンレス。さびにくく丈夫で、独特の光沢があるステンレスは金属アレルギーの方でも身に着けられる金属として、近年アクセサリーの新素材として注目を集めており、ステンレス製の結婚指輪なども登場している。それに加え、バネの伸縮性、軽さ、しなやかさ......。確かにバネはアクセサリーに向いているかもしれない。村井さんはそう感じ、工場の未来を賭けてアクセサリー制作に挑むことにした。
村井さん開発のコネクターを用いて試行錯誤を繰り返し、これまでにないクールなデザインのアクセサリーを制作。多くの人が日常的にバネを身に着け、日本のバネが世界で脚光を浴びる日を夢見ている。
支援額に応じてアクセサリーをプレゼント
ブランド設立や制作のため、朝日新聞社のクラウドファンディングサイトA-portで資金を募っている。支援金額2500円以上で、金額に応じたアクセサリーが特典として支援者に贈られる。
(以下は支援額と特典例)
いずれも、ブランド立ち上げ時にはウェブページに支援者の名前が掲載される特典もついている。詳しくはA-portへ。