国連安全保障理事会で16日、激しさを増しているパレスチナとイスラエルの衝突について話し合う緊急会合が開かれ、双方が非難の応酬を繰り広げた。 ©UN Photo/Amanda Voisard
10月に入り、パレスチナ人がイスラエル入植者を襲撃する事件をきっかけにパレスチナとイスラエルの衝突が急速に激化している。10月13日までで少なくともパレスチナ人27人、イスラエル人7人が殺された。その後も事態が収まる気配はない。
パレスチナ人はイスラエル民間人を狙った襲撃を繰り返し、一方でイスラエル軍は大規模で過剰な武力でパレスチナ民間人を殺害し、人びとの移動を著しく制限し、報復的にパレスチナ人の家屋を破壊している。さらに11日にはイスラエル軍がガザを空爆、母子が死亡した。
ヨルダン川西岸地区で状況をつぶさにウォッチしているアムネスティ調査員は、10月1日から8日までにどのような国際法違反があったかを公表した。以下にその一部を紹介する。
■ パレスチナ人によるイスラエル民間人への襲撃
10月1日の夜にヨルダン川西岸ナブルス地区で、パレスチナ人が、車に乗っていたイスラエル入植者一家を銃撃し、夫妻が死亡した。車に乗っていた4人の子どもたちは無事だったが、両親が目の前で殺されたことにショックを受け、病院で治療を受けた。この銃撃事件に対し、ファタハ系の武装グループが犯行声明を出し、ハマスなどはその行為を支持した。
10月3日、エルサレムの旧市街において、19歳のパレスチナの少年ムハンナド・ハラビは、非番中のイスラエル兵士の男性アーロン・ベネットを刃物で刺した。一緒に歩いていた妻と2人の子どもも襲われた。ベネットは死亡し、妻は重傷、子ども一人が軽傷を負った。その場に居合わせたラビとイスラエル軍の予備役将校も、止めに入って刺されて重傷を負った。ハラビはその場でイスラエル警察によって銃殺された。イスラム聖戦は声明を出し、ハラビの行為を讃えた。
殺されたイスラエル人は入植地に住んでいた。被占領パレスチナ地域につくられたこれらの入植地は国際法に違反しており、アムネスティは長年にわたって批判し、その撤去を訴えてきた。しかし、国際法違反の入植地に住んでいたとしても、民間人である以上、敵対行為に直接参加しない限り、保護される立場にある。非番であった兵士もまた、民間人と見なされ、国際法上、民間人と同様に保護の対象となる。
■ イスラエル軍による過剰な武力行使と違法な殺害
その後もイスラエル市民を刃物で襲う事件が相次ぎ、またパレスチナ人による抗議行動が各地で起きた。石や火炎瓶を投げるパレスチナ人に対してイスラエル軍や警察は実弾や催涙弾、ゴム被覆金属弾などで応酬し、少なくとも2人のパレスチナ人を殺害した。殺傷される切迫した危険もないのに人びとに実弾を発射するのは国際法違反である。
10月4日、東エルサレムに住む19歳のファディ・アロウンがイスラエル警察によってエルサレム旧市街で射殺された。警察は、アロウンがイスラエル人の少年を刃物で刺そうとしていたと主張した。しかし、事件を録画していたビデオを見ると、アロウンは警察が到着する前にイスラエル人の集団に追いかけられていた。さらに警官はアロウンを逮捕しようとせず、いきなり数メートル先から上半身に向けて発砲していることが分かった。
パレスチナ赤新月社によると、10月2日から7日までの6日間だけで約1,300人のパレスチナ人を緊急治療したが、そのうち75人が実弾による負傷であった。
■ 救急車を攻撃するイスラエル軍
同じ期間、救急車やメディカル・チームは30回に渡って襲撃され、また、意図的に検問所の通過を妨害されたと、パレスチナ赤新月社は報告している。中には、イスラエル軍が2台の救急車めがけて実弾を発砲したケースもある。また、重傷患者を移送しているにも関わらず、催涙弾やゴム被覆金属弾を発砲した事件も少なくとも2件、報告されている。
紛争下や占領地域下において救急車や医師は特別に保護されるべき対象であり、直接攻撃することは、国際人道法違反と見なされる。むしろ、紛争当事者は、負傷者や病人を迅速に移送させるために、救急隊員をサポートしなければならないのだ。医療関係者を狙ったイスラエル軍の攻撃は、到底、正当化できない。
■ 家屋の破壊、移動制限
10月1日以来、イスラエル当局は東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区で、パレスチナ人の移動をさらに厳しく制限している。また、イスラエルの最高裁によって止められていたパレスチナ人の住居破壊を再開した。大量逮捕も行い、数百人のパレスチナ人が捕まっている。
10月6日、イスラエル軍は東エルサレム近郊の町で2世帯の住居を破壊した。その結果、7人の子どもを含む13人が住む家を失った。このほかにも何世帯もの住居が壊され、ネタニヤフ首相はこれからも継続すると公言している。破壊された家屋に住んでいたのは、過去にイスラエル人を襲ったり殺害したりしたパレスチナ人の家族である。しかし、家族に対するこのようなイスラエル当局の行為は集団的懲罰と見なされ、国際人道法に違反する行為である。
■ パレスチナ人を襲うイスラエル入植者たち
イスラエル入植者によるパレスチナ人襲撃事件も激増している。イスラエルの人権団体によると、入植者がパレスチナ人の車や家に投石する、パレスチナ人が住む村への道を封鎖するといったケースについて、数十件の申立てがあったという。少なくとも1件の放火未遂もあった。中にはパレスチナ人が入植者に襲撃されている現場にイスラエル軍が居合わせたが、止めようともしなかったという報告もある。
パレスチナの人権団体は9月28日から10月4日の間だけで、投石、暴行、農作物や車への放火、発砲など入植者によるパレスチナ人襲撃事件を29件も確認している。
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パレスチナ、イスラエルはともに、違法な殺害や過剰な武力行使などの国際法に反するあらゆる行為をやめるべきだ。民間人を意図的に標的にしたり、報復としてパレスチナ人に集団的に懲罰を与えることは、決して正当化できない。
そして国際社会は、今回の襲撃事件の背景にある、被占領パレスチナ地域における入植地建設プロジェクトに真剣に対処すべきた。パレスチナ人の土地と水を奪い、人びとを貧困に陥れ、無数の人権侵害の温床となっている入植は国際法違反だ。イスラエル政府は直ちに建設プロジェクトを停止し、撤去すべきである。
(アムネスティ・インターナショナル日本)
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