拘束または行方不明になった8人の弁護士(上段左から)王全璋、刘士辉、刘四新、李和平(下段左から)隋牧青、刘晓原、王宇、周世锋 @badiucao
7月に入ってから、中国で人権問題にかかわる弁護士や活動家の拘束等が急増している。今、中国で何が起きているのだろうか?
■□■ 「何者かが自宅に押し入ろうとしている!」 ■□■
王宇さんは、2004年に北京で開業した当初はビジネス弁護士として活動していた。その後人権問題に関わる事件に携わるようになり、多くの「敏感な事件」を扱うようになった。その中には、ウイグル人経済学者で「国家分離罪」で終身刑を科されたイルハム・トフティさんのケースや、当局から厳しい弾圧を受けている気功集団・法輪功の学習者のケースも含まれていた。王さんはその活動ぶりから、「中国で最も勇敢な女性弁護士」とも呼ばれていた。
王さんは、7月9日午前3時頃に「ネットと電気が切断された」というメールを、午前4時17分には「何者かが自宅に押し入ろうとしている」というメールを友人たちに送った。友人たちが、その後連絡がとれなくなった彼女の自宅を訪れると、彼女と夫の包龍軍さん(弁護士)、息子の包卓軒さん(16才)の姿は見当たらなかった。王さん夫妻はその後、警察の留置場で拘束されていることが確認されている。卓軒さんは翌日には叔母に引き渡されたものの、その後も取り調べのために繰り返し警察に呼び出されているという。
さらに、7月中旬には、王宇さんの釈放を求める請願書に署名した弁護士や活動家が拘束されており、アムネスティ・インターナショナルの調査では、その対象になっている人は、一時的なものも含め、既に200人を超えている。この背景には何があるのだろうか?
■□■ 急激な経済成長と「維権運動」 ■□■
13.5億人という世界一の人口を有する中国は、2010年にはGDP世界2位になるなど、すさまじい経済成長を遂げている。しかし他方で、その陰には政府の無理な政策の犠牲になる人たちがいる。現在の中国の人権問題については、以前にも取り上げたので、そちらをご覧いただきたい。
参考記事:「天安門の空~現在の中国の人権を考える~」(2015年5月31日)
現在の中国の人権問題としては、具体的には、宗教に対する弾圧、土地収用問題、深刻化する環境問題、農村戸籍問題、黒監獄問題、活動家への弾圧、少数民族の人権、インターネット検閲とアクセス制限等が挙げられる。いずれにおいても侵害されているのは、本来は生まれた国に関係なく、人が人として当然に与えられるべき権利である。
こうした問題が起きるたびに、中国の人びとは、デモやストライキ、座り込み等で抗議の声をあげてきた。中でも、中国の憲法や法に基づき権利主張をする活動は、「維権運動」と呼ばれ、2003年ごろから急速に広がってきた。その運動を法律の専門知識を用いて支えてきた弁護士や活動家がターゲットになっているのが、現在、進行している拘束事件なのである。
■□■ 増える拘束と広がるターゲット ■□■
これまでも中国では、人権派弁護士である浦志強さんが拘束の後、1年以上の取り調べを経て、騒動を引き起こした罪および民族の恨みを扇動した罪で5月に起訴されている。
参考記事:「天安門事件25年を前に拘束された弁護士 危険を覚悟で言論の自由のために奔走するその想いとは」(2014年5月29日)
また、弁護士や活動家だけでなく、著名なウイグル人経済学者であるイルハム・トフティさんが国家分離罪で無期刑となるなど、ターゲットは広範囲に及ぶ。そして、これら著名な弁護士や活動家の拘束の陰では、従来にも増して多くの一般市民が拘束されたり自由を奪われたりしているのである。
センセーショナルな報道の裏に、自由に生きられない中国のたくさんの人びとがいることを想像してほしい。その上で、なぜ弁護士や人権活動家が今日のような弾圧の対象になるのか、いま一度関心を寄せていただきたいと思う。
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アムネスティでは現在、拘束されている弁護士や活動家の身の安全を保障し、人権活動が理由で拘束されている場合は即時に釈放するよう、オンラインの署名活動を行っています。ぜひ、あなたの声を届けてください。
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(アムネスティ・インターナショナル日本)
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