電気ポットの形をしたパソコンを、富山県立砺波(となみ)工業高(富山県砺波市)に勤務する実習助手、江口友也さん(24)が自作し、Twitterで話題になっている。「持ち運ぶのに便利なパソコンが欲しかった」。江口さんは製作の動機をそう明かす。
「うちの学校の先生が作った自作PCが面白すぎるwwwwwww」。同校の生徒がTwitterにそう投稿したのは2月5日。江口さんが作った電気ポット型のパソコンの写真が添付され、瞬く間に「拡散」した。
江口さんによると、パソコンのOSはWindows10で、CPUはインテルのCorei3。メモリは4Gが2つで、記憶装置として120GのSSDを搭載している。ポットとパソコンのパーツ、OSも含めて総額約5万5000円という。
江口さんがこのパソコンを製作したのは約2年前。その動機について次のように話す。
「自宅と職場に1台ずつパソコンがあるのですが、自宅のパソコンは古いノート型で画面もデスクトップ型に比べると小さいんです。もう1台持ち運びができて、大きな画面で使えるデスクトップ型のパソコンが欲しいと思ったのがきっかけです」
持ち運びしやすさという視点から、江口さんが直感的に思いついたのが電気ポットだったという。「取っ手があってちょうどいいと思ったんです」
製作は困難を極めた。秋葉原などでパーツを買ってきたが、そのまま組み立ててもポットの円筒形の中には収まらない。江口さんはまず「設計図」を描き、形状に合うようパーツを削るなどした。
単にパーツをポット内に入れただけでなく、随所に江口さんのこだわりが光る。ポット本来のメーンスイッチ(給湯ボタン)を押すと、パソコンが起動するようにした。起動中は「保温」のボタンが光り、SSDの点滅ランプは「わかす 沸とう」ボタンだ。ロックボタンもしっかり機能するという。
ポットの電源供給口だったマグネット式コンセントもそのままパソコンの電源に転用。「外れやすく、突然パソコンの電源が落ちることもあります」と江口さんは苦笑する。
ポットに向かって右側にUSBの差込口(4つ)やディスプレイとをつなぐHDMIの差込口があるが、「職員室に置いておいたら、だれもパソコンだなんて気づきません。しかるべきところにあれば、本物のポットだと勘違いして給湯してしまうのではないでしょうか」と江口さん。
3年生が最近、授業の中でパソコンを使って作業をすることがあり、調子の悪いノートパソコンの代わりにこのポットパソコンを使わせたところ、生徒らは爆笑。うち1人が写真をTwitterに投稿して広く知られるようになった。
「大雪で休校になったときに投稿されたみたいで、休み明けに学校に行ってみると、普段話したこともない生徒から『あのパソコンすごいですね。見せてください』って大騒ぎになっていて。変な夢でも見てるのかなって思いました」と江口さんは笑う。
課題もある。ポットゆえに保温性能が高すぎるのか、夏場に使っていると熱のため動作がおかしくなることもあるという。
「通気性を改良した次回作をすでに考えています」。江口さんの頭にはすでに次のユニークパソコンが浮かんでいるようだ。