ネット上でマンガをタダ読みさせる「海賊版サイト」が大きな問題となっている。マンガ家でつくる公益社団法人・日本漫画家協会は2月13日、この問題への「見解」を公式サイトで発表した。見解は「海賊版サイトが、利益をむさぼっている現実がある」と指摘。「ちょっと考えてみてくれませんか」と、利用者に海賊版サイトの利用を自制するよう、呼びかけている。
鍵を握る読者
経済産業省がまとめた報告書(2014年)によると、日本のマンガの推定被害額は500億円とされる。
もちろん、出版社も「海賊版サイト」にただ手をこまねいているわけではない。しかし、海外サイトへの追及が難しいことや、身元を隠して海賊版をアップロードできる技術など、さまざまな壁に阻まれて対策は難航しているという。
海賊版マンガといっても、「それを見るだけ」なら現行法上、違法ではない。とはいえ、マンガ家や出版社に利益が回らなければ、マンガ界は結果的に衰退する。その意味では、この問題の大きな鍵を握っているのは、読者なのだ。
漫画家協会は「見解」を次のように締めくくっている。
「このままの状態が続けば、日本のいろいろな文化が体力を削られてしまい、ついには滅びてしまうことでしょう。そのことをとても心配しているのです」
「見解」の全文は次のとおり
海賊版サイトについての見解
パソコンや携帯電話など、デジタル技術が発達して、マンガの読まれ方はずいぶん変わりました。
そして以前よりもずっと気軽に、容易く作品を手にしてもらえるようになっています。
本当にすばらしいことだと思います。
私たちマンガ家に限らず、ものを創作する人間は、作品を読んだり、観たり、聴いたりしてくれる人たちに、まずは楽しんでもらいたい、と考えています。
そして、一生懸命作り上げた作品がきちんとみなさんの心に届き、感動として実を結んだときに、私たち作り手は充実感とか達成感を感じ、また次の創作に向けて頑張ることができるのです。
でもそれには、作り手と、作品を利用するみなさんが、きちんとした「輪」のなかでつながっていることが大事です。
残念ながら最近、私たち作り手がその「輪」の外に追いやられてしまうことが増えています。
その代わりに、全く創作の努力に加わっていない海賊版サイトなどが、利益をむさぼっている現実があります。
世の中には、マンガ以外にもたくさんの作品があふれています。
それらを観たり、読んだりするときに、その「輪」のなかに、創作した人たちがちゃんと一緒に入っているだろうか? と、ちょっと考えてみてくれませんか?
私たち作り手は、どんなに頑張っても、その「輪」の外側では作品を作り続けられないのです。
このままの状態が続けば、日本のいろいろな文化が体力を削られてしまい、ついには滅びてしまうことでしょう。
そのことをとても心配しているのです。
平成30年2月13日
公益社団法人日本漫画家協会