「今まで生きてきて性的少数者を見たのは初めて」。
そんな言葉がたびたび交わされるほど、韓国の人々は性的少数者の存在について詳しくない。そんな環境で、性的少数者への理解を深めるための番組が放送された。韓国の教育テレビEBS『カチル・ナムニョ(小うるさい男女)』での特集だ。
なんでわざわざ他人の前で自分の性的指向の話をするの?
なんでそんな声なの?
あいつは男?それとも女?
同性愛者っていうけど、そのうち異性を好きになるかもしれないんじゃないの?
多くの人が抱く好奇心。2017年12月25日と1月1日の2回に分けて放送されたこの番組には、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)の4人が出演した。
12月25日の番組では、人気お笑いタレントのパク・ミソンは4人の話に熱心に耳を傾けた。パクは「(無知と偏見を解消するのに)とても有益な時間」だったと語り、上の世代としての自分の考えを述べた。
多様性を受け入れるために努力する彼女の率直な告白が、実にかっこいい。
「特に、私は上の世代じゃん?
だから本当に子どものころは... あなたたちと話をすると...正直に言うと...頭がとっても硬かったと思う。
自由じゃなくて、自分の考え方が真四角だったと思う。
それがすごくもどかしいと思った」
以下は、25日の番組で飛び出した名言の数々。
「人々は自分のあるがままの姿で堂々と生きられればと思う」
「なんでカムアウトをするの?」という質問に、ソウル大学総学生会キム・ボミ元会長(レズビアン)は、「誰かの存在が認められるには、まずその存在が認知されなけれなきゃ」などとと答えた。
「変わりうるのかという可能性とは関係なく、変えろというのはダメ」
トランスジェンダーのパク・ハニ弁護士は「(性的指向が)変わる可能性はないのか?」という質問に、「変わりうるのかという可能性とは関係なく、変えろというのはダメ」だと答えた。
「100%共感する必要はないが、(あるがままを)受け入れることが大切」バイセクシュアルの作家、ウン・ハソンさん
「ジェンダー・アイデンティティは私は誰かを問うこと、性的指向は自分は誰を見ているのかを問うこと」
韓国のレインボーパレード、クィア・カルチャー・フェスティバルの委員長を務めるカン・ミョンジンさんは、「ジェンダー・アイデンティティ」と「性的指向」の違いは何かという質問に「ジェンダー・アイデンティティは私は誰かを問うこと、性的指向は自分は誰を見ているのかを問うこと」と答えた。
「男性と女性だけが存在するのではなく、はるかに多様な性のあり方が存在する」
文化評論家のソン・ヒジョンさんは、この世には二分法的な男性、女性だけが存在するわけではないなどと話した。
番組に反発する声も
この番組に対して、キリスト教の保守プロテスタント系団体が激しく反発している。
前編放送前の12月25日午前、反同性愛キリスト市民連帯は声明を発表し、「公共放送であるEBSは、同性愛、LGBTを擁護する番組を即刻中止せよ」などと主張した。また、28日にはEBSの本社前で全国父兄教育市民団体連合がEBSを糾弾する記者会見を開いた。
一方、この番組の制作者は聯合ニュースとのインタビューで「波紋を呼ぶことは予想していたが、制作者個人の電話番号を暴いての人身攻撃が行われた」と、激しい攻撃にさらされていることを明かした上で、「社会の日陰に追いやられていた性的少数者を招待し、当事者の声に耳を傾けよう、腹を割って話をしようという趣旨だった」「複数回のモニタリングを経ており、放送内容に問題はなかった」などと強調した。
ハフポスト韓国版から翻訳・加筆・編集しました。(翻訳・編集 植田祐介)