フランス人女優、カトリーヌ・ドヌーヴさんの発言が、日本でも物議を呼んでいる。
セクハラなどの性暴力を告発する「#MeToo」のムーブメントは行き過ぎで「全体主義の風潮を作り出している」と批判する書簡を1月9日、ル・モンド紙に寄稿したのドヌーヴさんらフランス人女性100人。
ハリウッドの大物プロデューサー、ワインスタイン氏へのセクハラ告発に端を発し、被害を受けた人たちが声をあげる「#MeToo」キャンペーンが2017年、世界中で大きなうねりを生み出した。フランスでは「#MeToo」に加えて、「#balancetonporc (豚野郎を密告)」という、さらに露骨なフランス語版告発用ハッシュタグもあり、フランス独自の盛り上がりも見せていた。
こうした動きを「魔女狩り」として、男性を"擁護"したドヌーヴさんらの書簡。「レイプは犯罪だが、口説くのは違う」と主張し「男性たちは制裁を受け、辞職を迫られている。彼らがやった悪事といえば、膝を触ったり、キスを迫ったり、仕事がらみの食事の場で性的関係を求めたり、好意を持っていない女性に性的なニュアンスのメッセージを送ったりといったことでしかない」と記した。
超有名女優の声明は、世界に衝撃を与えている。日本でもSNS上で、恋愛とセクハラは別であるといった意見や、日本の状況は全然違うなどといった声が相次いだ。
■恋愛と「セクハラ」は別物
まず、ドヌーヴさんが"容認"した膝を触ったりキスを迫ったりする男性の行為については、次のような反論が相次いだ。
「(キスや膝に手を置く行為は)『口説く』じゃなくて『セクハラ』です」
「相手が嫌悪を示しているのにしつこくしたり、無理に体を触ったり、圧力で屈させるのは性別関係なくアウトです」
「他人に軽々しく触らなくても、口説くことは可能」
また「美人女優だったドヌーブさんは過去、さぞいい男達から求愛されてきたでしょう」といった皮肉を交えて、自分にとって嫌な相手から不快な行為を受けることが問題であると改めて指摘する人もいた。
■日本とフランスは「常識」も「前提」も違う
確かに、フランスは恋愛大国であるというイメージは世界中で持たれており、女性を口説かない男性は男性ではないといった「ドン・ファン的文化」が根付いている。
それでも、「日本とフランスでは状況も違う」という考えが多数を占め、以下のような批判的な声が上がった。
「ドヌーブさんの言ってることはフランスとか欧米の話で、そういう文化を否定はしないけど、日本では難しい」
「恋愛に積極的なフランス・イタリアと日本ではキスやハグ・距離感も違う」
「世界共通の線を引くなんて無理。日本は日本の線引でやればいい」
■議論が広がるのは「健全」
一方で、ドヌーヴさんらが「#Metoo」の動きに対する反論を発表したことについて、意見の多様性を反映しているとして歓迎する声も。
「何事においてもその良し悪しとは別の次元で、様々な意見が出る方が健全だと私は信じてるので、カトリーヌドヌーブ氏の登場は建設的な議論にはプラスでしかない」
「いろんな議論があるって事はこの問題が注目されてるって事やから、リアルなセクハラ行為自体はやり難くなるやろう」
日本での#MeTooキャンペーンは、レイプ被害を実名で告白したジャーナリストの伊藤詩織さんや、ブロガーのはあちゅうさんらの告発があったものの、欧米に比べると大きな社会的ムーブメントには至っていない。
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恋愛とセクハラを混同してしまうことによるトラブルはあとをたたない。文化や文脈と密接に関係していることもあり、100%正しい解答を導くのが難しいといった背景もある。
#MeTooをめぐる議論は、2018年も世界中で続きそうだ。