働き方の多様化で、特定の会社に所属しないフリーランスの人々は1000万人を超えたと言われている。
その一方で、働くための社会保障制度は手薄だ。そんなフリーランスの人々が直面している障害の1つに、保育園の問題がある。
待機児童があふれる都市部で、子供を保育園に預けるのは一般の会社員でも難しい。さらに、フリーランスの働き方はこれまで十分に想定されておらず、自治体によっては認可保育所への入所選考で会社員との不公平が生じていた。
ハフポスト日本版でも「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」との共同でイベント「#フリーランスが保活に思うこと」を開催。フリーランスで働く人々が、子どもを預ける制度で抱えている問題を聞いた。
こうした声を受けて、厚生労働省・内閣府が近く、実際の業務を行う市区町村に対して対応策を通知することがわかった。
フリーランスと会社員の間にあった不公平を是正する取り組みとなる。
何が問題だったのか
フリーランスの人々にとって、これまで子供の保育園入所申請で障害になっていたのは、主に以下の2点だ。
・自宅で働くフリーランスワーカーが、保育所への入所で優先度が低くなる問題
保育園の申請で当落の鍵を握っているのは、保育が必要な度合いを比較する「指数(点数)」。
その点数は、ひとり親か、フルタイムかパートタイムかなどによって左右される。合計点が高い方がより「保育が必要な家庭」として、入所の優先順位が高くなるという仕組みだ。
フリーランスの中には、自宅で働いている人もいる。そうした人々を「育児をしながら仕事もできる」とみなし、点数を一律に低くしている自治体もある。
厚労省のまとめによると、一律で点数を低くしているのは、東京23区と政令市の43自治体のうち28自治体。この点数が低くなることで、ほとんどの自治体では入所がほぼ絶望的となってしまう。
⇨今回の通知では、「一律に優先度を決める点数に差をつけず、就労の実態(店頭に立っている、集中する必要があるなど)を把握した上で判断すること」とされた。
・会社員と比較し、提出書類などが格段に多くなったり、何が必要かわからなかったりする
多くの自治体で、働いている事実や勤務時間を証明する書類は主に「会社員」を前提に作成されている。フリーランスで働く人の場合、どこで、どの程度働いているのかを各自が証明しなくてはならないという難しさがあった。
東京23区内に住む、フリーランス協会代表理事の平田麻莉さんは、複数の会社と契約して勤務している。
2016年4月入所を目指した際の保活では、「自宅内ではなく外で勤務していること」「フルタイム並みの勤務時間」を証明する必要があった。
契約しているすべての会社から「外勤していること」の証明書を受領。また、会社員向けの申請書に加えて、勤務状況を記入したカレンダーを2カ月分出力して独自に提出するなど、試行錯誤して書類を作成したという。
⇨今回の通知では、「勤務実態を報告するために必要な書類について、所定の書式を整備すること。柔軟な対応を心がけること」とされた。
「保活の制度的問題、是正に期待」
働きかけを続けてきたフリーランス協会の平田さんは、今回の決定を受けて、ハフポスト日本版に「保活の制度的問題がおおむね是正されると期待します」とのコメントを寄せた。
ハフポスト日本版と共同開催したイベントをきっかけに、協会はずっと、雇用関係によらない働き方を選択する人と会社員の間の不公平を生んでしまっていた制度的問題の是正と、保育の多様化を訴えてきました。
厚労省や与野党の議員の皆さんがいずれも真摯に耳を傾けてくださり、フリーランスの働き方の実態をご存じなかっただけなのだと分かりました。
協会設立から一年を待たず、厚労省が対応してくださったことに驚きとともにとても感謝しています。 これで、預ける権利、つまり認可保育園の保活における制度的問題は概ね是正されると期待しています。
一方で、妊娠出産に伴い休む権利(産休育休制度)やその間のセーフティーネット(出産手当金、育児休業給付金、産休育休期間の社会保険料免除)は、今でも会社員だけの特権になっています。
「フリーランスが妊娠中に体調を崩しやすい」というのは定説で、母体保護の観点からも、雇用関係にかかわらず安心して子供を生み、育てられるような社会になると良いなと思っています。多くの方の声を集めて、引き続き、一人ひとりが自分らしく働ける社会の実現に向けて、情報発信を続けていきたいです。
フリーランス協会では、有志の女性経営者らとともにワーキンググループ「雇用関係によらない働き方と子育て研究会」を設立し現在、アンケート調査(回答期限は2017年12月31日まで)を行っている。