安倍晋三首相は12月19日、内外情勢調査会で講演し、政権が最重要策として掲げている政策について「地方活性化の鍵はSNSにあります。インスタ映えするとも言われています」と語った。
安倍首相は地元・山口県の元乃隅稲成神社(もとのすみいなりじんじゃ)がまずCNNで紹介され、Instagramで紹介されたために外国人観光客が増え、近隣の青海島(おおみじま)も「SNS映え」で人気になったと紹介した。
12月に安倍首相は自らの公式Instagramアカウントを開設している。
「インスタ映え」の言葉は、2017年の新語・流行語大賞を獲得した。しかし、言葉が流行した背景がポジティブな意味だけで捉えられているわけではない。
「インスタ映え」の言葉に「中身はともかく見た目重視」あるいは「承認欲求を満たすため、本来の姿以上に飾り立てる」という風潮を見る声もある。同賞主催者のユーキャンも「「いいね!」を獲得するために、誰もがビジュアルを競い合う」とやや批判的に紹介している。
Twitter上などでは、そこで暮らす人々がいる地方を活性化することと、賛否のある「インスタ映え」という言葉を結び付けた安倍首相の発言に対して以下のような批判的な声があがっている。
・客を呼ぶ為に、インスタ映する街道風景を「作る」、寺でミュージカル、遺跡パワースポットでヨガ。よくこんな薄っぺらな発想を首相として公の場で得意気に喋れるものだ。
・それ観光だけやん。
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一方で、安倍首相は「旅行ニーズが爆買いから、体験型に変わりつつある」。また、SNSを起点にした「観光を柱にした村の活性化」といった事例も紹介している。実際にはどんな発言があったのだろうか?
講演での安倍首相がSNSについて言及した部分の発言は以下の通り。
(内外情勢調査会全国懇談会 安倍総理講演 12月19日)
地方活性化の鍵はSNSにあります。私の地元の元乃隅稲成神社(もとのすみいなりじんじゃ)がCNNに紹介されてから、どっと外国人観光客が増えたのでありますが、そこからSNS映えするということで近くの青海島(おおみじま)も撮影のスポットとなっているそうであります。
SNS映えするということはインスタ映えするとも言われているんですが、InstagramとかFacebookに投稿した写真が、多くの方々から称賛される、いいねを押されるということをもってSNS映えする、インスタ映えすると、こう言われているようであります。この言葉に反応する人は若い方々、何言ってるんだという人はちょっとそういう世界とは別の方だと思いますが、私もこの言葉は最近知ったわけでありますから、余り偉そうなことは言えないんですが。
自然の景色だけではありません。旅行ニーズが爆買いといった買物中心の旅から、その場所でしか経験できない体験型に変わりつつあります。これは皆さん、地方にとって大きなチャンスなんです。先ほど私が申し上げました元乃隅稲成神社というのは、私の地元長門市の油谷町という場所にあるんですが、ここはずっと海に向かって、赤い鳥居がずっと続いているんです。確かにすばらしい景色なんですが、地元の人もそんなに気にしない場所でありまして、1年間に数千人しか訪れる人がいなかったんですが、今は40~50万人。CNNで紹介され、たくさんの人がInstagramで撮って紹介し、今、人口2万人の町に40~50万人が1年間に訪れるという場所に一変したわけでありますから、どんな地方にもそういう宝は眠っていますから、それを世界に発信することでその地域が、がんと変わっていくんだろうと、私は期待しています。
今年のうれしいニュースに、カズオ・イシグロさんのノーベル賞受賞がありました。イシグロさんの故郷長崎では、いちご、メロン、すいかといったフルーツの形をしたバス停がSNSで人気を集めています。今から25年以上前、長崎旅博覧会をきっかけに、訪れる人を和ませるために、シンデレラのかぼちゃの馬車をヒントに町が整備したものであります。フルーツ狩りならぬ、バス停狩り。若い女性を中心にドライブやピクニックに観光客が増えているそうであります。
SNS映えする街道風景を増やしていきたいと思います。
来年6月から民泊制度がスタートします。徳島県三好市、祖谷(いや)渓谷。高齢者が半分を占める山間の集落に古民家での滞在を求めて世界中から人々がやってきます。急峻(きゅうしゅん)な斜面に佇(たたず)む集落は日本のマチュピチュとして、FacebookやInstagramで世界の人々が知るところになりました。
英語で挨拶したい。
地域の食材を使った料理のケータリングや散策ツアー。地域のお年寄りが主役となり英語を学び始めました。廃村寸前の村が息を吹き返しています。
村のプロデュースを仕掛けたのは、アレックス・カーさんです。
僕がいなくてもできるようになるために共同作業がいいと思っています。全国に広げていきたいですね。
地元の住民や大工さんを巻き込んで、古民家を軸とした村の再生の取り組みを広げています。
学習型の旅というのもあるそうです。今年話題となったチバニアン。地質年代の名称として採用されるかどうかは来年決まるそうですが、早くも親子連れなど観光客でにぎわっています。この地層はまだ文化財の指定などを受けていないそうでありますが、天然記念物や、遺跡、神社といった文化財は、これまで後世に保存していくことが使命だった。もっと身近にその魅力を感じてもらう。文化財保護法の改正案を次期通常国会に提出し、文化財を観光やまちづくりに活用できるようにします。
お寺でミュージカル、竪穴式住居でお茶会、遺跡のパワースポットでヨガ。アイデア次第で地域の文化や歴史が世界から観光客を集めるキラーコンテンツに生まれ変わります。