アメリカのドナルド・トランプ大統領は12月6日、ホワイトハウスで演説し、公式にエルサレムをイスラエルの首都と認め、国務省に対しテルアビブにあるアメリカ大使館をエルサレムに移転する手続きを始めるように指示したと正式に表明した。
「エルサレムをイスラエルの首都と認める時が来た。これは、現実を認めるということだ。そしてこれは正しい行動でもある」
トランプ氏はまた、イスラエルとパレスチナの「双方が受け入れられる和平交渉」を目指して努力することを表明し、もし双方が同意したら、二国間で問題を解決することを支持すると述べた。
世界各国の指導者からは、アメリカがこれまでの中東政策を逆行させ、パレスチナの和平交渉を阻害する恐れがあると懸念を強めている。
パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は5日、トランプ氏との電話会談で、大使館移転の説明を受けた。
アッバス氏はトランプ氏に、「今回の決定は和平プロセスや中東地域、そして世界の平和、安全、安定の危機をもたらすことになる」と警告した。
パレスチナ自治政府は電話会談後、声明を発表し、6日から3日間、抗議活動を行うよう呼びかけた。
英パレスチナ大使館のマニュエル・ハッサシアン大使は声明で、大使館の移転は、イスラエルとパレスチナの和平プロセスを崩壊させる「死の接吻になる」と批判した。ヨルダン国王のアブドゥラ2世やサウジアラビアのサルマン国王も同様の懸念を表明した。
トルコのタイイップ・エルドワン大統領は5日、「エルサレムはイスラム教徒にとって越えてはならない一線だ」と、強い懸念を表明し、トルコがイスラエルとの断交に踏み切る可能性も示唆した。
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は、大使館の移転は、アメリカが中東政策を行う「資格がないこと、そして失敗していることの象徴だ」と批判した。イランのハッサン・ロウハニ大統領も6日、「今回の決定は、新たな危機を呼び起こす傲慢で、シオニズム(ユダヤ人の民族国家をパレスチナに樹立することを目指した運動)的な行いだ」と述べた。
ドイツのシグマール・ガブリエル外相は、大使館の移転でさらなる衝突を生み出し、「極めて危機的な状況が加速するだろう」と語った。
イギリスのテリーザ・メイ首相は大使館移転問題について直接トランプ氏と協議すると述べ、ボリス・ジョンソン外相も「懸念を持ってニュースを見ている」と不安を表明した。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領はトランプ氏との電話会談で、「エルサレムの位置付けは和平交渉を通じて解決するべきだ」と伝えた。
ロシアのウラディミール・プーチン大統領も5日、アッバス議長との電話協議で「中東情勢の状況を複雑化させる」と懸念を示した。
ローマ法王フランシスコは6日、バチカンで演説し、「エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地がある随一の街だ。私はこの数日間の状況に強い懸念をもっている。エルサレムの現状を尊重すべきと、あらゆる人たちに呼びかけたい」と述べた。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。