昨日12月4日、厚生労働省の担当官と面会し、驚愕の事態が進行していることを知りました。
今日は、社会的養護関係者に、また最も弱い立場にある子ども達を救う特別養子縁組に関心がある全ての人たちにむけて、この危機的な状況について解説したいと思います。
【養子縁組あっせん法】
2週間に1人の赤ちゃんが遺棄等で殺されている現状。予期せぬ妊娠や貧困等の理由で、我が子を手にかけてしまう状況を解決すべく、妊娠前から相談に乗り、出産時に育ての親に託す「特別養子縁組」。
昨年12月、野田聖子議員・遠山清彦議員・木村弥生議員・田嶋要議員等、超党派の議員の皆さんを中心にして、この特別養子縁組に関する「養子縁組あっせん法」が議員立法で成立しました。
養子縁組あっせん法は主に2つの柱でできています。
1つは許可制。人身売買的な事業者をキックアウトするため。
2つめは補助。許可した適切な事業者を補助し、養子縁組というセーフティネットを広げていこう、と。
2つとも我々、特別養子縁組事業者が以前から望んでいたことだったので、基本的には前向きに評価していました。
特に2つ目の補助については重要です。これまでは特別養子縁組を支援する国からの補助は一切ありませんでした。
よって特別養子縁組を行う民間団体はボランティアに近く、実費のみ養親から手数料をもらっていました。しかしこれでは健全な団体運営はしていけず、規模も非常に小さいままで、救えるはずの多くの命を救えずにいました。
【少なすぎる概算要求額】
厚労省には、我々民間特別養子縁組団体の方から、団体運営にかかるコスト(1団体年間約3000万円)を提示し、それに基づいて補助制度の設計が行われるはずでした。
しかし、厚労省が財務省との折衝で提示した予算は、日本全国の20団体「総額で」年間2800万円と、桁違いに小さいものでした。
団体別に直すと年間140万円なので、必要額の5%弱程度です。
また、年間2800万円というと、小規模認可保育所に1年間に出される補助額よりも低いわけです。
毎年200人近くの赤ちゃんたちが、特別養子縁組のおかげで、虐待死を免れ、新しい家族のもとに託されます。
その200人の命の額に対し、保育園1個分にも満たない補助額しか出す必要はない、と考える厚労省家庭福祉課に、心底がっかりすることを通り越し、激しい怒りを感じました。
(個人的には、厚労省担当官が、「基本的には児童相談所にやらせるんで、民間は手数料でやってください」というようなことを言った瞬間、ブチ切れかけました。
「児童相談所が虐待対応で養子縁組まで手が回らないから、民間がやってんだよ、そうした現実は1ミリも理解しないで机の上だけで政策つくるなよ」と喉まで出かかった言葉を飲み込むのに、大変な苦労があったことを告白します)
【このままだとどうなるか】
許可制の実施によって、民間特別養子縁組団体は、新たに多くのペーパーワークが課され、これまでよりも人手が多くかかります。
それに対し、補助額が平均140万円/年程度になるので、事務員1人も雇えないことになります。
よって、多くのボランティアベースでやっている民間団体は窮地に追い込まれることになりますし、廃業の危険性もあるでしょう。
また、廃業を避けるためには手数料を引き上げることになりますが、ボランティアベースで1件あたり80万円、しっかりとした福祉人材を雇用してきちんとソーシャルワークもすると200万円程度になるマッチング費用を引き上げることは、養親の負担を高めるだけでなく、マッチングの件数そのものを減らす、つまりは救える赤ちゃんの数も減らすことになります。
さらには、結局は手数料頼みの経営になりますので、本来であれば実親が自身で育てられるように導いていくことが適切なケースでも、マッチングして手数料を稼ぐインセンティブが強まります。
そうすると、養子縁組の質が大きく損なわれることになってしまいます。
いずれの道を進むにせよ、日本の特別養子縁組は緩やかに息絶えていくでしょう。
【やるべきこと】
まず、社会的養護に関心のある国会議員の皆さんは、この状況に怒りを感じアクションに繋げてほしいです。
そしてメディアの方々は、こうしたお役所仕事が、多くの赤ちゃんたちの命を奪っていくことにつながることを、ぜひ世の中に発信していただけたらと思います。
心ある人々は、ぜひ国会にもこの現状が届くよう、この記事をシェアして頂けますと幸いです。
子ども達の命を助ける仕組みが、根こそぎダメになる前に。
(2017年12月5日Yahoo!個人より転載)