米ノースカロライナ州ヒルズボロで11月4日、ある母親が万引きで逮捕された。地元のスーパーで36ドル(約4000円)分の食料を盗んだためだ。
しかし、地元警察は女性のために140ドル(約1万6000円)分の食料を買い与えた。理由は、貧困だ。地元警察はFacebookで事情を説明し、「欲から犯罪を起こしたわけではなかった」と、今回の措置に理解を求めた。
地元紙「ヘラルド・サン」によると、窃盗したのは44歳のテレサ・ウェストさん。スーパーでパンやパスタなどを盗んだが、店側が警察に通報。すぐに自宅に駆けつけた。
「連れていかれると分かっていました」「すごく怖かった。牢屋に入れられると思った」とウェストさん。警察が家に来た時、「家族が3日食べていない」と泣き叫んだ。冷蔵庫を開けると、中はほとんど空っぽで、チーズがひとつしか残っていなかった。
ウェストさんには養子を含む3人の子供を養わなければならなかったが、家に食べ物はなかった。ウェストさん自身に障害があり、働けない状態だったという。
「盗まなくてはならなかった。私のしたことについては申し訳ないと思いますが、必死でした。子供たちがお腹をすかしていたんです」
窃盗の罪でウェストさんを起訴したが、裁判所に事情を説明し、彼女は500ドル(約5万7000円)の保釈金なしで釈放となった。そして、自分たちのポケットマネーで140ドル分の食料を買い、ウェストさんに与えた。
裁判官によって、ウェストさんのための保護プログラムもつくられることになったという。
ウェストさんを逮捕したキース・ブラッドショー巡査部長は、「同じような状況になっている人たちを、どのように助ければ、同様のことが起こらないかを考えた」と語った。
地元警察はFacebookに、「警察の仕事は、時々、単純ではないことがある。私たちは警官である前に、まず人間なのだ」と投稿するとともに、寄付や支援を申し出たい人がいたら、社会福祉事務所などに連絡をしてほしいと呼びかけている。