タックスヘイブン(租税回避地)が絡む経済活動に多くの著名人が関わっていることが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した「パラダイス文書」で明らかになった。
■パラダイスの由来は?
産経ニュースによるとタックスヘイブンは美しい島国に多いほか、フランス語などで「税の楽園」と表現することからICIJは「パラダイス文書」と名付けた。パナマ文書と同様に、ヨーロッパの有力紙「南ドイツ新聞」が入手し、ICIJと共有した。情報源を一切明らかにされていない。
文書数は1340万件で、データ量は1.4テラバイト。「史上最大のリーク」と呼ばれた2016年のパナマ文書と比べデータ量では少ない一方、資料数は190万件多いという。
朝日新聞デジタルによると、パラダイス文書の内訳は、バミューダ諸島などにある大手法律事務所アップルビーの内部文書683万件と、シンガポールの法人設立サービス会社「アジアシティ」の内部文書56万6000件、マルタなど19の国・地域の登記文書604万件だ。
パラダイス文書に掲載された各国の政治家・君主らの名前は、47カ国127人。カナダのトルドー首相やイギリスのエリザベス女王らが掲載されていた。芸能人では歌手マドンナさんや、ロックバンド「U2」のボノさんの名前もあった。
日本からも「ドラゴンボール」で知られる漫画家の鳥山明さんや、鳩山由紀夫元首相の名前が掲載されていた。各社の報道を元に情報を整理すると以下のようになった。
■鳥山明さん、アメリカの不動産に出資
共同通信によると鳥山明さんを含む日本人12人が2000年、アメリカに設立された不動産リースの投資事業組合に出資していた。
朝日新聞デジタルによると、この事業体が行った不動産リース事業をめぐっては、後に国税当局が税逃れと判断して出資者を追徴課税したことが2005年に報じられている。
鳥山さんは共同通信などに「日々多忙のため、税務面はおまかせにしていますのでお話しできることはありません」と書面で回答したという。
■鳩山元首相、バミューダ諸島に設立された資源会社の役員に
産経ニュースによると、鳩山由紀夫元首相はタックスヘイブンに設立された法人の役員に就任していた。
バミューダ諸島に設立され香港を拠点にする資源会社「ホイフー・エナジーグループ」の名誉会長を政界引退後の2013年から務めている。
鳩山元首相は「名前だけでも連ねてくれと要請された。名誉会長で実質何も意味はない」と経営への関与を否定した。
■「U2」のボノさん、マルタの会社に出資
英紙ガーディアンによると、ロックバンド「U2」でボーカルを務めるボノさんは、タックス・ヘイブンとして知られるマルタ共和国に拠点を置くヌード・エステートという会社に投資していた。この会社が、リトアニアのショッピングモールを580万ユーロ(約7億7000万円)で買収していた。
ボノさんの広報担当者は「ボノは主要な投資家ではなく、積極的に関わってない。2015年に解散するまで、会社は合法的に登記されていた」とコメントした。
■マドンナさん、ポール・アレンさんらの名前も
ICIJによると、マドンナさんはカリブ海のバミューダ諸島の医薬品関連会社の株を保有していた。
起業家も多く、ネット競売大手イーベイを設立したピエール・オミディア氏はケイマンの金融商品に投資。マイクロソフト共同創業者のポール・アレンさんは、豪華ヨットや潜水艇を租税回避地に登記していたという。