アメリカのトランプ大統領の長女、イバンカ大統領補佐官の基金に、安倍首相が57億円を供出することを表明したと11月3日に多くのメディアが報じた。
安倍首相は3日午前に、海外の女性指導者らを東京に招いて女性政策を議論する「国際女性会議WAW!」に出席。トランプ大統領にさきがけて2日に来日したイバンカさんと同席した。
共同通信は、この会議での安倍首相のあいさつについて「首相、57億円拠出を表明 女性起業家支援のイバンカ氏基金」の見出しで、以下のように報じていた。
あいさつでは、トランプ米大統領の長女イバンカ大統領補佐官が設立に関わった、女性起業家を支援する基金への5千万ドル(約57億円)拠出を表明した。
女性起業家への期待を示した上で「イバンカ氏が主導した基金を強く支持する」と述べた。
しかし、駒澤大学・非常勤講師の石川公彌子さんが「不正確な点がある」とTwitterで指摘。これを受けて、ネット上では報道を疑問視する声が広がった。詳しく調べてみたところ、意外なことが分かった。
■実は、世界銀行の基金
イバンカさんが基金の発案者であることは間違いないが、運営しているのは世界銀行だ。
正式名称は「女性起業家資金イニシアティブ」。発展途上国で、女性起業家や女性が運営する中小企業のサポートを目的として世界銀行内に7月8日、設立された。
アメリカ、イギリス、ドイツ、カナダ、中国、日本、韓国、サウジアラビアなど13カ国が参加。民間資金と合わせて10億ドル(1140億円)以上の融資をすることを目標としている。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、この基金を考案したのはイバンカさん。4月上旬に世界銀行のジム・ヨン・キム総裁にアイデアを伝えたところ、即座に同意を得たという。世界銀行の供出額はアメリカが世界一だが、アメリカ政府はしばしば運営に疑問を呈していた。この基金は、政府と世界銀行との橋渡しになったと同紙は報じている。
世界銀行は公式発表で「イバンカさんは運営管理や資金調達に関与しない」と、注意書きしている。
本ファシリティの構想に貢献し、女性の起業という課題を強く支持してきたイバンカ・トランプ米国大統領補佐官は、本ファシリティの運営管理または資金調達には関与しない。
■57億円供出、7月に発表済みだった
また、「日本政府の57億円供出」についても、今回初めて発表されたわけではなかった。
基金設立時の7月8日の外務省発表には、以下のように書かれている。
我が国 からは,本件イニシアティブに対し,5,000万ドルを拠出する予定です。
■「安倍さんが壮大なパパ活してるみたい」という声も
というわけで、間違いとまでは言い切れないもののの、誤解を与えるような報道であったことは間違いない。
今回の報道で共同通信は、安倍首相とイバンカさんの2ショットの写真とともに報じていた。
そのためネット上では「安倍さんが壮大なパパ活してるみたい」「パパ活大成功の写真にしか見えなかった」という声もあがった。
『安倍首相、イバンカ基金に57億円拠出』は嘘。本当はG20が設立発表したWe-Fiっていう女性起業家支援のための世界銀行基金で、元々7月に日本が5千万ドル拠出することは表明してた。
それを、あたかも安倍さんが壮大なパパ活してるみたいに報道してて笑う。毎度、偏向報道半端ないよな。
— Yamato Sueoka (@emng46) 2017年11月3日
このタイミングでイバンカに57億円拠出する意味は分かるんだけど、昨日の録画で見た「ねほりんぱほりん」のせいでパパ活大成功の写真にしか見えなかった。 pic.twitter.com/HXyxYr7gtE
— mau_metal (@mau_flute) 2017年11月3日
当初、イバンカさんはトランプ大統領が来日する5日以降も、日本に滞在する予定だったが、予定を切り上げ、4日に日本を離れる方向で調整が進んでいる。ホウドウキョクによると、トランプ大統領がイバンカさんに対して、税制改革推進の行事に参加してもらうため帰国を指示したという。