過激派組織「IS(イスラム国)」によって占拠されているシリア北部の都市ラッカが、アメリカ軍などの支援を受ける「シリア民主軍」によって奪還される見通しが出てきた。ロイター通信などが10月14日、伝えた。一方、シリア東部でもロシアの支援を受けるシリア政府軍が別のISの拠点を奪還しており、ISの勢力が急速に衰えている。
ISは2014年、ラッカを支配下に置き、「首都」と宣言。これに対し、2017年6月ごろから、アメリカを中心とする有志連合の支援を受けるシリア民主軍が奪還作戦を開始させていた。
ロイター通信によると、シリア民主軍の中核をなすクルド人武装組織の担当者が10月14日、「ISは今にもラッカを失おうとしている。一両日中に街からジハーディスト(テロリスト)たちは一掃されるだろう」と見通しを語った。
また、アメリカのABCニュースも14日、ラッカで約100人のIS戦闘員が降伏し、24時間以内に街を離れると報じた。一度に降伏した規模としては大きく、ラッカの奪還に近づいた兆候だとしている。現在、ラッカの85%をシリア民主軍やアメリカ軍などが制圧しているという。
ただ、ラッカには依然、300~400人のIS戦闘員が残っているとされており、アメリカ軍の広報担当者は「ここ数日は困難な戦闘に直面するだろう。ISがラッカを完全に放棄するのがいつかはわからない」と話した。
残りの戦闘員が降伏した場合、その扱いについてシリア民主軍や有志連合との間で協議が続いているとみられる。ロイター通信によると、戦闘員らは女性や子どもら約400人を人質にしているが、シリア人の戦闘員については、降伏すればラッカからの脱出を認める方針。
だが、外国人戦闘員については、アメリカ軍の広報担当者は「テロリストについては、正義の裁きを受けることなく、ラッカから逃すという、大目に見るようなことはしない」と語った。これに対し、ラッカの市民代表らは外国人戦闘員についても身の安全が保証された形でラッカから出られるとしており、交渉はなお曲折が予想される。
一方、シリア東部でも、ISが新たな拠点にしていたマヤディーンが、ロシア軍の支援を受けるシリア政府軍によって陥落した。ロシア国営のノーボスチ通信が伝えた。同通信の取材に応じたロシア国防省幹部は、「マヤディーンにはここ数日、イラクからIS戦闘員が結集していた。その意味で、ここを攻略したことで、シリア軍の戦術的な成功は高まることになるだろう」と語った。
シリアとイラクにまたがって支配地域を拡大してきたISをめぐっては、2017年7月にはイラクの重要拠点モスルが陥落。シリアでもアメリカなどの有志連合やロシアが介入して掃討作戦が進み、ISの勢力は急速に衰退している。
ただ、アメリカが支援する勢力の中には、元々アサド政権に対しては反発するグループもある。ISへの作戦が収束すれば、そうした反体制派と政権側との対立が国の立て直しをめぐって再燃する可能性があり、アメリカやロシアの出方とともに注目される。