違法残業をめぐって労働基準法違反罪に問われた広告大手「電通」の事件で、東京簡裁(菊地努裁判官)は10月6日、求刑通り罰金50万円の判決を言い渡した。
共同通信によると、判決は「尊い命が奪われる結果まで生じていることは看過できない」と指摘。「労働基準監督署から是正勧告を受けたのに、労働者の増員や業務量の削減などの抜本的対策を講じず、サービス残業も横行していた」と指摘した。
判決を受けて電通は、「当社はこの判決を厳粛に受け止め、関係者の方々に心よりお詫び申し上げます。また、社会の一員として、企業のあるべき責任を果たせなかったことを深く反省しております」と公式サイトで謝罪した。
■高橋まつりさんの母「世の中が変わる、そのときまで生きて欲しかった」
この事件は、新入社員の高橋まつりさん(当時24歳)が2015年過労自殺したことに端を発している。
今回の判決について高橋さんの母である幸美(ゆきみ)さんと、代理人の川人博弁護士は同日午後に厚労記者クラブで会見を開いた。
川人弁護士は「刑罰として会社が裁かれたという意味では、非常に意義が大きい」「ある意味で歴史的な判決」と評価した。一方で幸美さんは「世の中が変わる、そのときまで生きて欲しかった」として、以下のように無念さを滲ませた。
まつりの生き様が多くの人に注目され、共感を呼び、世の中を動かすことになりました。
世の中を変えたのが、どうしてまつりの死でなくてはいけなかったか。
世の中が変わる、そのときまでまつりに生きて欲しかったと考えています。
まつりのことを語るときに、まつりが生きてるのではないかとさえ思います。
本当にまつりに会えなくなってしまったとは思えない。
遺族が発言する機会が与えられることは少ないため、発言することは社会への問題提起になるに違いない。今日もそのことを強く思っています。
今日も激しい怒りを持って、自分の声でコメントを発することが私の使命ではないかと思います。
遺族が沈黙することは新たな犠牲者を生むことで、企業の犯罪は繰り返されるのではないかと思っています。