衆院が9月28日に解散され、総選挙は10月22日に投開票される。
安倍首相は9月25日の記者会見で「国難を突破するため国民の信を問う」と解散の意向を表明し、与党で過半数(233議席)獲得を目標に掲げた。一方、民進党は前原誠司代表は28日、同党が小池百合子氏率いる「希望の党」へ事実上合流し総選挙に臨むと表明した。
安倍首相の解散判断、希望の党と民進党の事実上の合流を海外の報道機関はどのように報じたか?一部を紹介する。
■「安倍氏は北朝鮮をうまく利用している」?
●米ニューヨーク・タイムズ「安倍は北朝鮮をうまく利用している」
ニューヨーク・タイムズは今回の解散総選挙について、「安倍氏は北朝鮮危機をうまく利用している」というアナリストの見方を報じた。
「自分の都合のいいタイミングで解散総選挙を実施するために、北朝鮮というカードを利用している」などとした。
また、「北朝鮮は、安倍氏が北朝鮮脅威に対応できる唯一の人物だという日本国民の感情を生む手助けをしている」という別の専門家の分析も報じている。
●米CNN「選挙の年に天皇退位が重なることを避けたかった?」
CNNは、安倍氏は森友・加計学園問題の追及を避けてこのタイミングで解散総選挙に踏み切ったという見方を示した。
「安倍氏は、スキャンダルによって追い込まれきた。国会が再開されてさらなる追及を受けることを恐れたのだろう」という専門家の分析を報じた。
また「選挙の年に天皇退位が重なることを避けたかったのでは」といった見方も報じている。
■小池氏「希望の党」の登場で状況はどう変わる...?
●英テレグラフ「今や、スポットライトは小池氏に当たっている」
テレグラフは、小池氏への注目度の高さを伝えた。
「今や、今回の総選挙のスポットライトは小池氏に当たっている。メディア慣れしていて、かつてニュースキャスターも務めた、自民党の元大臣である東京初の女性都知事だ」と報じた。
また、小池新党の出現により安倍自民の状況が変わっていることを、イギリスのメイ首相になぞらえて報じた。
「安倍氏は今や、彼の選挙ギャンブルが、6月の解散総選挙で大敗したメイ首相と同じ悲運を辿らないよう祈っているかもしれない」と報じた。
また、「あらゆる国の有権者は今、現状に失望しきって、たとえ深刻なリスクであったとしても、リスクをとって変化を起こそうとする機運が高まっている」という別の専門家の分析も報じた。
●英エコノミスト「日本メディアは『安倍VS小池』と報じている」
エコノミストは「日本のメディアはすでに、今回の選挙は『安倍氏VS小池氏』という風に報じているが、両者とも政策にほぼ違いがない」とした上で、「3.11以降閉鎖中の原発を再開させようとする安倍氏の動きに待ったをかける『希望の党』はその点で人気が出るだろう」と報じた。
●豪ABC「この何年もの間で最も興味深い事態になりうる」
オーストラリアの放送局ABCは、「希望の党」の公式動画を紹介しながら、民進党と希望の党の合流の動きに触れ、「日本の政治のこの何年かの動きの中で、最も興味深い事態になりうる」と報じた。
■小池新党の存在感に否定的な見方も
●韓国・聯合ニュース「小池氏の極右偏向の歴史認識がまな板に載せられる」
韓国の聯合ニュースは、小池氏が関東大震災の朝鮮人虐殺を認めない発言を繰り返していることを念頭に「小池氏の極右偏向の歴史認識がまな板に載せられる」と報じたという。
小泉内閣で環境相だった小池氏が靖国神社を参拝したことも紹介されている。
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■総選挙の争点は?
安倍晋三首相は25日の記者会見で、企業の設備投資や人材投資を促す「生産性革命」、幼稚園・保育園の費用無償化や低所得者の高等教育を無償化する「人づくり革命」を2大目標に掲げた。また、その財源として2019年10月に消費税率を10%引き上げ、その増収分を充てるとした。
また、核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮問題への対応についても「国民に問いたい」とし、解散は『国難突破解散』だ」とアピールした。
記者会見では言及しなかったが、自民党は憲法9条に自衛隊の存在を明記するなど、改憲についても公約に盛り込む方針で、重要な争点になる。
一方で野党側は今回の解散は学校法人「森友学園」「加計学園」の問題隠しだと反発してきた。希望の党の小池代表は「大義なき解散・総選挙」と批判し「消費税増税の凍結」「原発ゼロ」などの政策を掲げている。