純白のドレス、巨大なウェディングケーキ、結婚指輪に立会人。
イタリア人のスポーツインストラクター、ローラ・メージさん(40)は、結婚式に必要なものをすべて取り揃えた。ただひとつ「新郎」を除いては。
9月21日にイタリア紙「ラ・レプッブリカ」が報じたところによると、メージさんはイタリアで"自分婚"を挙げた最初の女性だ。つまり、彼女は自分自身と結婚したのだ。
「すでに2年前から考えていたことでした」とメージさんは語る。当時彼女は、12年間続いた恋人と別れたばかりだった。「40歳までに生涯添い遂げたいと思えるような人に出会わなければ、私は自分自身と結婚すると、両親や友人に話しました」
そして彼女は約束を守った。メージさんは、やるからには徹底的だった。「1万ユーロ(約130万円)ちょっとかかった費用は、すべて自分のポケットマネーでまかないました」と説明する。その内訳は、ウェディングドレス、結婚指輪、ミラノに近い街ヴィメルカーテのレストランで開かれた結婚式の一連のセレモニー、出席した70人以上の食事代などだ。
ウェディングケーキのてっぺんにはメージさんの姿を模した小さなフィギュアがひとりで鎮座し、フルーツアートを施されたスイカには「独身の花嫁」という文字が浮かび上がっていた。
「私は生涯自分を愛することを誓いました」と、やるからには最後までやり遂げるのが信条の新婦は言う。「家族も嬉しそうでした。最初はこの考えに懐疑的だった兄でさえもです」。式終わりでメージさんは、エジプトのマルサー・アラムに新婚旅行にいく予定だ。もちろん、ひとりで。
この結婚式の裏には、メージさんの次のようなメッセージが隠されている。「私はひとりひとりが、まずは自分自身のことを好きにならなければいけないと強く信じています」メージさんはこう自分の考えを述べる。
「素敵な王子様がいなくても、おとぎ話のなかを生きることはできます。仮に明日、将来設計を一緒に考えられるような男性と出会えれば、私は嬉しいに違いありませんが、それでも私の幸福は彼にかかっているわけではないのです」
こうした考え方を持つのはメージさんだけではない。
アメリカの宗教専門誌「ファースト・シングス」によれば、"自分婚"の動きに最初の一石を投じたのはロサンゼルスの歯科助手、リンダ・ベイカーさんだ。「ロサンゼルス・タイムズ」も報じているように、1993年ベイカーさんは、友人や家族に見守られて自分自身との結婚を誓った。彼女も当時独身の40歳だった。
以来ベイカーさんのようなケースは増え続け、2003年に放送された『セックス・アンド・ザ・シティ』のあるエピソードが"自分婚"ブームの火付け役となった。
イギリスの著述家であるソフィ・ターナーさんも、米メディア「ヴァイス」で"自分婚"の経験を語っている。ターナーさんは"自分婚"はナルシシズムの所産ではないと主張する。「うぬぼれと、自分を愛する心のあいだには大きな違いがあります」
これはしばしば女性が対象となる「独身ハラスメント」をかわそうとする方策のひとつであるに違いないが、逆説的に「結婚」の価値を高めてしまっているようでもある。
とはいえ少なくともひとつだけ確かなことがある。「離婚率」は低下するに違いないということだ。
ハフポスト・フランス版より翻訳・加筆しました。